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一人百物語

木の中のひと

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/19


子供の頃、木の中に住んでいる人がいると思っていた。

たいがいの木の枝葉の中に、いつも“同じ人”がおさまっているのが見えていたので。

普通の人間と、姿形も大きさも変わらない人たちだった。

大きな椿の木の中には、不思議な形に髪を結いあげた綺麗なおねえさんがいて、にこにこ微笑んでいた。何の木かわからない大きな木の中には、茶色い肌のいかつい顔をしたおじさんがいた。柳の木の中には長い黒髪の、白い浴衣の様なものを着た、色の白いおにいさんがいた。

他にも色々見かけた。

今でも思い出す事が出来る。

子供ながらにそんなところにどうやって住んでいるんだろうと思っていた。

雨が降ったらどうするんだろう。でも枝や葉が沢山あるから濡れないのかな。

雨の日に、友達に言ってみた。

「雨、木の人はどうするのかな」

だが友達は妙な顔をしただけだった。

友達と別れ、自宅近くの柳の木のおにいさんに聞いてみた。

「雨、どうするの?濡れないの?傘は?」

しかし柳のおにいさんは困った様に薄く微笑むばかりで、何も応えなかった。


小学校に上がってしばらくすると、いつの間にかあまりわからなくなっていた。そしてそれは他の人には見えていないらしい事もわかった。


今でも時々、見える時がある。



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