刺し違えた才能
ある日届いた1通の手紙。
菅原 星那は自殺じゃない。殺されたんだ。
親友のあんたなら、わかるはずだ。
「続いてのニュースです。小説家の菅原 星那さんが、自宅で死亡しているのが見つかりました。自殺とみられています」
菅原 星那。彼女は大人気小説家。新作を出せばベストセラーは当たり前。実写化すればこれまた大好評。低迷していた紙の書籍の売り上げも奇跡の大復活。彼女の更なる活躍に注目が集まっていた。そんなときに起きたこの事態。出版業界に激震が走り、日本中、世界中が悲しみに暮れた。
私もその一人だ。私の名前は原日 菊乃。星那とは、お互いの母親が仲が良く、物心ついたときからずっと親友だった。学生時代もどこに行くにも一緒だった。星那は幼い頃から絵本や物語に興味を示す子だった。オリジナルの物語や架空の昔話を作っては同級生に披露するほど、本や童話が大好き。将来は小説家か本に携わる人になるのかなと思っていたら案の定、小説家になった。しかも超が付く程の売れっ子作家だなんて⋯⋯⋯⋯。
なんで.。どうして...
一体何があったのだろう。
私は現実を受け止められず彼女の死に目を背けていた。
そんなときに届いた一通の手紙。星那が殺された?殺人?いやいや、そんなわけない。星那はこういうのに巻き込まれる性格じゃないと思う。本当に殺人だとしたら犯人は誰?
私は、警察に手紙が届いたことを話し、事情聴取を受けた。
星那は一人暮らし。最近は仕事漬けで、外出はあまりしていないと言っていた。家族仲もすごくいい。
本当に星那は非の打ちどころがない、素敵な人だと思う。
手紙が届いた次の日、司法解剖の結果が公表された。死因は胸を刺されたことによる失血死。自殺で片付けられていたが、この報道を受けて、いろいろな憶測が飛び交った。「菅原さんの悪質なファンがやったのでは?」「他に恨みを買った人がいるのでは?」毎日報道番組は星那の話で持ちきりだ。
死因が発表されて一週間。私は星那の部屋へ向かった。何かわかるかもしれないと思ったからだ。
中に入って、手がかりを探していると一冊の小説が目に留まった。菅原 星那✕ 都ノ咲 大樹と書かれた小説。星那のデビュー作だ。この共作がきっかけで二人は知名度を得た。しかし、都ノ咲はそれ以降、売り上げが低迷していた。
私は小説を見つけた瞬間、重大なことを思い出した。都ノ咲と星那が付き合っていたことを。私はすぐ警察に連絡し、都ノ咲に任意の事情聴取が行われた。
「都ノ咲さん、菅原 星那さんとはどのような関係ですか?」
「仕事仲間です。俺が菅原さんを殺したって言いたいんですか?違いますよ?」
都ノ咲は聴取開始から明らかに動揺していたが関与は否定した。
「菅原さんと交際していたのではないですか?デビューしてから」
この言葉を口にしたときから、都ノ咲の態度が一変した。
「はぁ?どこから手に入れたんだよ?その情報。まぁ、そうだけど?」
「都ノ咲さん。菅原さんに恨みを持っていたのではないですか?自分と一緒にデビューしたのに、星那さんだけが売れて……」
その瞬間、都ノ咲が机をバンッ!と叩いた。
「もう終わった……星那のせいで俺の人生、終わったんだよ!」
この話をきっかけに、都ノ咲は犯行を認め、逮捕された。
星那、よかったね。私に届いた手紙は未だに誰が入れたのかわからない。でも私は、星那が私にくれた最初で最後の手紙だと思っている。




