大幹部幼女メアリー
「串焼き屋なんて簡単だぜ!」
旦那のロビンが商会をやめて商売を始めたいと言い出したわ。子供もいるのに・・
「絶対大丈夫だぜ!何故なら立地が最高だ!」
「あなた、やめて、貯金は坊やを商業学校に入れる資金よ。せめて卒業してから・・」
「今日から商会長だ。お前は商会長夫人だ」
旦那は一端決めたら言う事は聞かないわ。
サミー商会という所から説明を受けたそうだ。
サミーさんはこう言う。
「大丈夫です。もしダメだったらキッチン荷車を売値で買い取ります!」
金貨30枚でキッチンに荷車を購入して簡単な講習を受けた。更に営業保証金として金貨30枚を預けた。
その他の費用も払ったら金貨80枚は超えたわ。これで貯金は底をついた。
研修も簡単だわ。
「ただ、肉を串に刺して焼くだけ!立地は最高ですよ。奥様安心して」
場所は貴族学園の真ん前だわ。
場所代が・・・高い。一月金貨10枚だわ。
旦那と2人で串焼きを売る。
大繁盛だわ。
「まあ、これが庶民の食べるお串焼き?」
「はい、そうです。お嬢様、お一つ如何ですか?」
「そうね。頂くわ」
貴族のお嬢様だ。彼女らは値段を聞かない。使用人に払わせる。
「中銅貨一枚になります!」
普通の串焼きの10倍、激安串焼きの20倍以上の値段だわ・・・場所代も含めたらそうなるわ。
レストランの方が良いのではなかったのかしら。
それでも飛ぶように売れたわ。
場所代は気にもならなくなった。
「なあ、ナタリー、大丈夫だったろ?」
「ええ・・でも、ロビン、どうしてこんな良い立地が残っていたのかしら」
「それはサミーさんが俺を見込んで任せくれたからだ」
そうかしら・・・
「これから人を雇う。お前は事務でもしてくれ」
「はい・・・」
でも、売り上げが順調に上がったのは最初の2月ぐらい・・・
それから徐々に落ち始めた。お客様の不満の声が聞こえる。
「何て言うのかしら、味に感動がありませんわ」
「そうですわね。お兄様が言っていたわ。串焼きストリートは美味しいですって」
「まあ、行きましょう」
場所代も気になり始めた頃・・・
決定的な事態に陥ったわ。
「な、何だと、夏休みだと!」
客が1人も来ない。
損覚悟で慌てて串焼きを通常の値段に戻したが・・・通行人は店に近寄りもしない。
「あれ、お貴族様価格だろう?」
「今更、俺ら庶民に合せてもな」
学園に面している地は本屋、古書店、文房具などの商会などだ。
彼らは注文制なので、夏休の間に新学期の教材を受注しているそうだ。
学生がいないと一挙に人は少なくなった。
客0が続く。
二ヶ月しのげれば・・・
サミー商会に相談しても場所代は下げてもらえない。
金貨10枚はやはり痛い。人件費もかかるわ。
更に、夏休みの他に冬休み。春休み・・・・連休があると気がついた。
地獄が待っている。
ある日、旦那は逃げ出した。
客が来ない屋台、私は何とか従業員に最後のお給金を払いやめてもらい。廃業を決意した。
キッチン荷車の買い取りと保証金を返してもらおうとしたら・・・サミーさんは逃亡していた。
投資で失敗し夜逃げして商会は他人の手に渡ったそうだ。
「え、ここはサミー商会ではないのですか?」
「ええ、サミーさんはいなくなりましたね。連絡取れません」
「ではキッチンカーの買取りと保証金は・・・」
「経営者は別人だからね。関係ありません。それよりも今度はうちと契約結びませんか?絶対に大丈夫です」
・・・絶対に大丈夫。不吉な言葉だと感じるようになった。
「結構ですわ」
私はさまよい何とかキッチン荷車を高く買い取ってもらおうと商会を回ったら・・・変な商会に行き着いた。
幹部が幼女だわ。
☆☆☆トーマス商会
「何なの~!またキッチン中古荷車の買取りの持ち込みなの~」
幼女がいた・・・。うちの子よりも年下の子。
ヒラヒラのドレスに、ペロペロキャンディーを持っている。可愛い子だけど、言っている事は大人だわ。
「今は供給過多なの~、廃業が多く出ているの~」
「そうですか・・・」
去ろうとしたら呼び止められた。
「奥しゃま。ちょっと待つの~」
「はい?」
幼女からトンデモない提案を受けた。
「金貨5枚で、独立開業までサポートするの~、資財付なの~、人出不足なの~、事業拡大なの~」
金貨5枚、これだけはいざというときに使えと父から嫁入りの時に渡された資金だわ・・・それを渡したら、もう、節約しても数ヶ月で路頭に迷う。
幼女をみる。
後ろにはメイド、隣には大勢のごろつき?商会員を従えている。
私の勘だと、詐欺にしては少額すぎるし、幼女を串焼き屋の広告塔にするとは思えない。
それに・・・
「申し遅れたの~、メアリーなの~、トーマス商会筆頭幹部兼渉外兼ハンス馬車工房支配人兼モーリス商会相談役兼串焼きストリートの責任者なの~」
「ナタリーですわ・・・」
串焼きストリート?客のお嬢様が言っていたわ。記憶に串焼きストリートを褒めていた客の言葉が浮かぶ。
本当かしら。
しかし、次の言葉で決めた。
「研修を受けてもらうの~、大変なの~、サポートするけど開業しても失敗するリスクはあるの~、串焼きストリートは激戦区なの~、それで良かったら契約書にサインするの~」
キャンディーをペロペロしながら厳しい事を言い放ったわ。
「よろしくお願いします!」
「ナタリーしゃんはこれからトーマス一家の一員なの~」
私は頭を下げた。妙な安心感に包まれたわ。




