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実の子が見つかったからと邪険にされたので、屋敷を出た養女の話  作者: 山田 勝


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男爵令嬢メアリー

 

「今度は絶対に大丈夫です。私は親友を信じます!」


 と力説するのは、ダン男爵だ。私の一応の養親である。

 今日、挨拶にいった。

 服はボロボロだが、丁寧につぎはぎをされている。辛うじて品位を保っているようだ。


 この親父、保証人になって借金の山を築いている。


「昔から困った人を見過ごせなくて」


 全然善い人ではない。隣に座っている奥様のドレスは色あせている。うつむいて何も話さない。


 養親が破産しても嫌なので財務状況を見たいが、男爵は大丈夫だと胸を張る。

 つまり、危機的状況である。


「お茶をどうぞ」

「ありがとうなの~」


 私の義姉にあたる方がお茶を持って来てくれたが、これまたつぎはぎだらけのドレス。


「水なの~」

「ごめんさない。当家ではそれがお茶と言いますわ・・・グスン、お貧乏でごめんなさい」


 そうか、英国貴族は貴族の象徴である海亀のスープを無理してでも飲む。たとえ危険な偽物でも、と聞いた事がある。


 男爵は誇らしげに言う。


「友人の連帯保証になりました。普通、危ないと思うでしょう?」

「危ないの~」


「でも、友人は絶対に迷惑をかけないと契約書を作ってくれました。貴族院に届け済みです」


「どれどれなの~」


 書類を読んだが、ダメだ・・・・要するに・・・


「友人と男爵の契約なの~、この契約書は債権者が入っていないの~」

「えっ」


 つまりだ。保証契約は、債権者と保証人が結ぶ。債権者にとっては保証人と債務者の間の契約など知ったことではないのだ。


 案の上、すぐに債権者がやってきた。


「男爵殿、ご友人のサミー殿は逃亡しました。支払いをお願いします」

「ヒィ、そんな。サミーとはこのような契約になっていまして・・・」

「それ、当方に関係ございませんな。裁判をしても良いでしょうが時間の無駄です」


 とこうなる。

 これは王都の大手オスカー商会の番頭か?茶髪をオールバックにしている。使用人たちも真面目そうだが威圧感がある。

 私は間に入った。


「契約書を見せるの~」

「ほお、また、新しい養女ですかね・・・」

「ふむ、ふむなの~」


「お嬢様、どうみても当方に理がございます。領地の差し押さえを検討しています」


「なの~?これ、船の積み荷の保証契約なの~、男爵が代位するのなら、船の積み荷は男爵の物になるの~」


「・・・ほお、あながち馬鹿ではないようで・・・」

「船の積み荷に保険かけてないの~、それも男爵に代位するの~」


「一部欠損で、全額は支払われておりません」

「なるほどなの~、その差額を計算し直すの~」


「貴方は?」

「メアリー・ダンなの~」

「どこの組織のお嬢様ですか?」

「そちらから名乗るの~」


「クククッ、それは失礼、私はオスカー商会、オスカーでございます」

「メアリーは、トーマス商会所属なの~」


 オスカー本人か?目が光った。まるで野獣の目だ。


「なるほど、あのメアリーか・・・なら、仕方ない」



 オスカーさんは船の積み荷を引き渡すことを約束してくれた。


 男爵の友人が東方の貿易船一隻分の積み荷を買い取る契約をした。それを保障したのが男爵だ。


 船は嵐に遭い品物は破損して売り物にならない。

 一応、積み荷を引き渡してもらったが。


「なんなの~、これは~」


 壺だ。割れている陶器が沢山ある・・・保険を差し引いて改めて計算をし直したら、払える額だ。

 でも、これは人力車事業の収益十ヶ月分か。メアリーの裁量を超えている。


 だが、私は気がついた。これは売り物になる。


「マリーしゃん。早急にトーマスしゃんに連絡なの~、お手紙を届けて欲し~の」

「はい、メアリー様」


「男爵しゃん。儲けの半分はトーマス商会がもらうの~」

「それで良いが・・・売り物になるのかね?」

「貴方の物なの~、他人事じゃないの~」


 どうも、この男爵はおかしい。




 ☆数週間後


「これは・・・何だ。何だ!」

「スゲー!」


 壺の中に割れないように紙が入っていた。その紙は地球で言えば、浮世絵だ。

 そのシワを取り。シマ内のモーリス商店で展示した。


 まるで漫画のような表現だ。この王国では写実性が好まれていたから新鮮なのだろう。


 それよりも、画家さんたちが目の色を変えているのは・・


「何だ。この青は・・・」

「この顔料はどこにある!店主、何か知らないか?」


「ヒヒヒ、当店で扱っていますよ。少々お高くなりますが・・・」

「いくらでも出す!」


 顔料も仕入れた。浮世絵の青が広重ブルーとして西洋に衝撃を与えたが、実際はオランダだから仕入れた顔料を使っていたのだ。

 西洋では陶器の絵付けに使われていた。衝撃は逆輸入されたのだ。


 この世界でも錬金術師が作った顔料と一致した。


 更に割れた陶器は、金で補修した。某国民的グルメ漫画であったな。金継ぎ。それをヒントにした。


 これはほどほど売れた。


 男爵家は貧乏貴族から一躍金持ちになった。


「フウ、メアリー、有難う。おかげで立ち直れたよ」

「どうもなの~、これで奥様とお嬢様にドレスを新調するの~」

「うむ。そうしよう」

「それと、この書類に決裁をお願いしたいの~」

「ほお、これは」

「領地経営が上手くなるの~」


 だが、メアリーちゃんは鬼だ。鬼になった。あのしょぼくれた奥様とお嬢様の顔は何とかしたい・・・・




 ☆☆☆その後



「旦那様、お止め下さい。また、保証人になるなんて・・・」

「うむ。金はある。これも付き合いだ」

「お父様・・・折角メアリーちゃんが何とかしてくれたのに・・・」


「うるさい!当主は私だ!」


 後に聞く話では男爵はパワハラ気質があったようだ。

 奥様とお嬢様の反対を押し切り保証契約を結ぼうとしたが・・・



 ☆貴族院


「これは・・・無効ですな」

「な、何だと!何故?」


「だって、ご自身で出されたのではないですか?財産管理人付と・・・」


 日本で言えば、被保佐人だ。重要な取引をする際に、保佐人の同意が必要になる。

 簡単に借金の保証人になる人も被保佐人になる典型例だ。


「管理人は誰だ!私は友人のため・・」

「オスカー商会財務部門ですね・・・そちらにお問い合わせ下さい」

「な、何だと・・・」


 財産管理人は報酬が支払われる。これで実質保証人になることが出来なくなった。

 オスカー商会にも華を持たせた気遣いの出来る幼女か?


 だが、奥様とお嬢様のドレスは新しくなった。


「「メアリーちゃん。有難う」」

「どういたしましてなの~」


 今も時々お茶会に招待されるようになった。










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