メアリーが出た後のゼークト伯爵家
私はマリアロッテ・ゼークト、伯爵夫人・・・喜びで震えている。
いなくなったメアリーが庭にいるからだ。
あの子はこの庭を好んだ。帰って来たのね。
『メアリー、帰って来たのね。もう、お母様と離れてはいけないわ』
『はいなの~、今、説明するの~』
『グスン、メアリー、まあ、花を抱えて』
『感謝なの~、お義母様のお部屋に飾るの~、庭師のヨハンさんにもらったの~』
『メアリー、何て良い子。ご褒美何が良いかしら』
『メアリーはお義母様にお別れを言いに来たの~、このまま帰るの~』
『ダメよ。外はとっても怖いのよ。家出して分かったでしょう?アップルパイ焼いてもらうわ。ゴホン、ゴホ、ゴホ』
『お義母様、お部屋に戻るの~、メアリーが病魔を飛んでいけやってあげるの~』
『フフフ、メアリー、有難う』
『病魔よ。病魔よ。お義母様から飛んでいけ~なの~』
『ありがとう。本当に楽になったわ・・・あら、メアリー!』
メアリー、何て可愛い子・・・あら、メアリーが薄くなっていく・・・
『お義母様、お別れなの~』
【メアリー、メアリー!】
抱きかかえるが足下から消えて行くわ。
私は必死に叫ぶことしか出来なかった。
・・・・・・・・
「はあ、はあ、はあ、はあ」
「奥様!うなされていたので心配していました」
ベッドの上にいた。偽のメアリーの夢を見た。本当の子かどうか区別つかない。重ね合わせていたのね。
「あの奥様」
「何?スージ」
「旦那様がメアリー・・・いえ、偽のメアリーを連れてくるそうです」
「そう・・・」
「全く、ヒドいですね。奥様が具合を悪くしているのに、出て行かれました」
心の中に引っかかる。私は何か重大な見落としをしていないかしら・・・・
「ねえ、スージ、メアリーを見てきてくれないかしら」
「どちらのですか?」
「偽・・・の方よ。元気かどうかだけでも知りたいわ」
☆☆☆王都繁華街
「毎度、大銅貨一枚になります」
「はい」
人力車という物に乗りメアリーがいるという繁華街に来た。
私、スージはレディスメイド、今はただの奥様付だわ。
奥様はすっかり伏せるようになった。
生まれつき魔力の流れに体が耐えられない・・・・
少し探すとメアリーはいた。
のんきに散策しているわ・・・いえ、その後ろにメイドがいる。
そこは私の場所だわ。イラッときた。
「お嬢様!そこにいたのですか?すぐにお屋敷にお戻り下さい」
様子見のはずが声をかけてしまったわ。
「ハニャ、スージしゃん?」
「ええ、貴方が黙っていなくなって大変なのよ」
「・・・本物の子が帰ってきたら悪いの~」
「そ、それは・・・」
言っていて結構ヒドいことに気がついた。
もし、本物のメアリー様がいたら気にもとめないだろう。
「メアリー様、昔のメイドですね。私の背にお隠れ下さい」
「マリーしゃん。メアリーのために争わないでなの~」
「メアリー様、言い方はあれですが・・・・争いますわ」
キィとマリーとかいうメイドに威嚇をされた。
私は帰るしかなかった。
屋敷に戻ると大変なことになっていた。
奥様の意識が不明だ。
「マリアロッテ!」
お医者様の話では長くないそうだ。
「奇跡です。今まで生きてこられたのが奇跡です・・・もう、お覚悟を・・・」
「藪医者が!」
「もう、聖女様しか無理です。王国に聖女はいません。貴族ならメアリースチュアート様が行方不明なのはご存じでしょう。今存命ならば7歳になられます」
伯爵家のコネを使い様々な医者や魔道師を呼ぶが皆、首を振るだけだ。
なら、せめてダイア侯爵家のメアリー様を呼ぼうとしたが・・・
奥様の子なので発病したようだ。
「ハハハ、我らを見限ったからだ!」
「メアリ・・・」
「マリア!」
「奥様!」
奥様が一言メアリーと言った。よほど会いたいのだろう。
あのメアリーは冷たい。こんな時に外で遊んでいるなんて・・・
私は不寝番で奥様を見守る当番だ。
奥様はお水も飲まれなくなった。
ついウトウトしてしまった。
ヒュー!
風を感じて目が覚めたらメアリーがいた。窓が開いている。外から入ったのね・・・
「ハニャ。スージ、寝ているの?お疲れ様なの~」
「ヒィ、メアリー!・・・様」
どうして入って来たの?今更戻って来ても遅いわ。奥様が亡くなるのに・・・
「ヨハンさんにこっそり入れてもらったの」
メアリーは奥様の額に手を当てて。
「病魔よ、病魔よ。飛んでいけなの~」
いつもの戯れをした。
しかし、光った。
ピカッ!
奥様の体が青い光に包まれたわ。奇跡?私は見ている事しかできなかった。
それからメアリー様はバックから何かを取り出した。針だ。危険、まさか刺すの?奥様を恨んでいた?
「メアリー様、何を?それは針?お止め下さい」
「針は針でも鍼灸なの~、お外で見つけたの~」
「奥様の・・・肘に・・・」
「メアリーは魔力が見えるの~、ここを刺すと過剰な魔力は外に逃げるの~」
メアリー様の話では奥様のお体は弱く。魔力に耐えられなかった・・・だから魔力を外に逃がす回路を作った・・・
メアリー様は処置が終わると、そのまま窓から外に出た。
「スージとメアリーの秘密なの~、お義母様は私に助けられると嫌うの~今からゼークト伯爵夫人なの~」
「そ、そんなことはありませんわ。奥様が起きるまで・・・」
屋敷を出た時のイメージがあるのね。奥様はあんなにメアリー様に恋い焦がれていたのに・・・説得が出来ない。信じてもらえない。それほどヒドい事をしたのだ。
幼女の心に刻まれたのね。
私はそのまま見送るしかなかった・・・・
翌朝。奥様は起きられた。旦那様は大喜びだ。
「奇跡だ!」
「あなた・・・昨晩夢を見ました・・」
「スージよ。何か見たか?まさか寝ていたのではないか?」
「旦那様・・・・」
私は。
「光が降臨しました。女神様の奇跡でございましょう」
嘘をついた。それがメアリー様に出来る唯一の償いだと感じたからだ。




