国際貿易幼女メアリー
「ミレーヌ様、弟君のダネルハインケン様は見られなくなりましたわ」
「クスッ、如何したのかしら」
人は至高を貶めるのが大好きだわ。だから私は正直に言う。
「ダネルは平民への投石で自宅謹慎状態ですの」
すると呆気にとられた顔をするわね。
「「まあ」」
「オホホホ、大変ですわね」
退屈なお茶会を早々に切り上げ屋敷に戻り策を練る。
私が王妃になる策よ。
そう、私はこの令嬢達よりももっと至高を貶める事が出来るわ。
あの平民好きのローズマリーを王妃の座から引き釣り落とすわ。
「お父様、策が出来ましたわ」
平民を一万人殺せば私が王妃になれる策だわ。
「滅多な事をいうでない!」
お父様は優柔不断だわね・・・反対されたわ。なら次善の策よ。
「では、これならどうでしょう。ローズマリー様が平民救済で始めた事業を潰すのですわ」
「うむ・・・良かろう」
早速、私は視察を申し出た。
☆☆☆王都近郊の都市リオル
ここにはお針子から織物職人が集まる都市。何よりも絹産業を中心に栄えている。
蚕という虫から糸を出すのね。
数百年前に西域国家から持ち込まれ細々と行われていたがローズマリーの政策で一極集中、今は西方国家で一番の絹輸出国にまでなりつつあるわ。
「ミレーヌ様、王妃殿下のおかげで皆お金持ちになりました」
「素晴らしいわ。蚕はこの葉をたべるのね」
「ええ、そうです」
「美味しそうに食べるのね」
「はい、葉が大事です」
【大変だ!火事だ!】
あらかじめボヤ騒ぎを仕込んでいた。
この隙に病気の精霊の元をばらまくわ。
「大変です。ミレーヌ様、見てきます」
フフフ、この虫を殺せば私は王妃になれるわ。
「・・・ミレーヌ様、ボヤ騒ぎでした」
「そう、大変ね。帰るわ。私がいたら仕事に支障が出るでしょう」
およそ一月ぐらいで発症するから、私にまで疑いが来ないわ。
みるみる内にリオルの惨状の噂が上がって来た。・・・クスッ。
王宮でお父様が奏上をする。
「陛下、やはり虫などに頼ってはいけなかったのです。病気のリスクがございます。元々間違いでしたのです」
「・・・うむ・・蚕は全滅か。チィナや、ワアク国から援助は期待出来ないか?」
「陛下、チィナは海禁政策、ワアク国は鎖国政策です・・」
フフフフフ、いい気味だわ。私が王妃になる。貴族で周りをがっちり固めるわ。
「良い。誰でも良いからこの問題を何とかせよ。諸外国に援助を申し立てよう」
「西域国家では女神信仰圏国家を閉鎖しております・・無理です」
「諦めてはいけない。リオルの都市は30万人規模だ。住民は一気に職を失うぞ。暴動が起きるかもしれない」
陛下は焦っているようだわ。
市井にも立て札が立てられた。この問題を解決せよとの事だ。
そこで私は父上と一緒に奏上をした。
陛下の隣にはあの女、ローズマリーがいる。
あら、私の後ろに人がいるわ。男爵?ダン家ね。最近、ウキヨエ関係で聞く名だわ。
「グルジア家。ミレーヌでございます。弟の罪を償わせて下さいませ。まず一つ、一極集中は間違いでした。今回のような問題がございます。グルジア家の領地でも養蚕を行うべきでございますわ」
「うむ。それは良い。しかし、今の急場だ。蚕はどうする?」
「次に二つ。策はございます。いささか、チィナとは縁がございます。向こうにも裏組織はございます。使者を派遣し裏組織と接触し。内陸奥地まで旅行者として侵入し賄賂で蚕を手に入れますわ」
これはイース王国が茶葉を手に入れた方法だわ。
しかし、ローズマリーが難色を示す。
「陛下、ミレーヌ嬢の策はいささか信義を損なうと思います。チィナ皇帝にお願いをしては如何でしょうか?」
また、綺麗事だ。
「王妃殿下、チィナの皇帝は傲慢にして我国の事など眼中にないでしょう。しかも、養蚕は国家機密でございますわ。それしか方法はございません。3年もあれば蚕を手に入れるでしょう」
「ミレーヌの言う事はもっともである。しかし、ダン男爵の策を聞いて判断しよう」
えっ、このしょぼくれたおっさんが策を言うの?
「・・・はい!メアリー、いや、私の策でしたら・・・あ、落とした」
紙を落としたわね。
「行きに・・三ヶ月、帰りに三ヶ月、予備を考えて1年以内には蚕様を・・・お迎えできるの~、ではなく、蚕をお迎え出来ます!」
「本当なら褒美は思いのままだ」
「はい!しかし、知己のトーマス商会を使います!貿易でかかった費用と、利権は後で相談しましょうとのことです・・・」
馬鹿らしい。
結局、私の策とダン男爵の策は同時並行になった・・・
私は準備をした。イース王国の商人と接触し。蚕を盗む算段をしている最中。
あの謁見から数ヶ月後。我が王国の港に船が入って来た・・・
「陛下!ワアク国から多量の蚕卵紙を積んだ船が参りました!商業都市連合経由です。国書もございます」
「何!手柄だ。どうやって交渉をしたのだ。まさか、盗んだのではないのか?」
「それが・・・トーマス商会が馬と交換したそうです。馬はこらから船に乗せて運びます」
な、何ですって。あの頑なワアク国をどうやって落としたのよ。
「キィ!誰よ。あの男爵がやったとは到底思わないわ」
☆☆☆
港にはメアリーがいた。
男爵の裏でメアリーが動いて作戦を立てていたのだ。
「お馬さんたち。ワアク国では大事にしてもらって下さいなの~」
「ヒィン、ヒヒヒ~~ン?」(草美味いのか?)
「ヒヒヒ~ン」(軍馬になるってよ。でも戦のない世界だってよ)
・・・フウ、上手く行ったぜ。
立て札を見て応募をした。
幕末、幕府とフランスは交流があった。
フランスの蚕が全滅をして日本に救援要請をした。
当時の14代将軍徳川家茂は応じた。
その後、フランスからアラビア馬を寄贈されたそうだ。
欧州に日本の蚕が広がっていくきっかけになった。
そして、ヨサブロウさんから聞いたが、今の将軍は・・・
『織田家康様でござる』
思わず。
『おい!』
と言ってしまった。まるでナポレオン・ブルボンではないか?
『姫・・?』
『何でもないの~』
商業都市連合はワアク国に商館を持っている。
ちょうど、魔道通信機を日本幕府に寄贈したばかりだそうだ。
魔石を多量に使い連絡したぜ。
そしたら、簡単にOKをもらった。
ヨサブロウさんの正式な名前は・・・
『拙者、平与三郎義家でござる』
『もう、いいの~』
もう、ツッコムのはやめた。
『将軍閣下の護衛をしていたでござる』
『お願いしてみるの~』
通信したら、べらんめえ調で返信が来た。
『おい、べらんめえ、こんちくしょう!帰ってこんかい!』
『上様!』
何か分からなかった。日本語だが、なまりがキツすぎたぜ。
そして、全ての準備を終えてからダン男爵に上奏をお願いした。
ちょうど商業都市連合の船が出るので乗せてもらったぜ。
グへへへ、大もうけだ。いや、これで皆が助かればいいな。がいたいけな幼女の正しい考えだ。
国際貿易をしてしまったキャリア幼女になったぜ!




