伯爵の誤算
本物のメアリーは妻とはぐれ市場を彷徨っていたところダイア侯爵夫妻に引き取られたそうだ。
今日、侯爵家に妻と訪れた。
我が屋敷よりも数倍デカい邸宅だ。
応接間に通されすぐに面会になった。侯爵夫妻に連れられて来た子、一目で分かった。我が子だ。妻似の蜂蜜色の金髪の可愛い子だ。
「グスン、メアリー!!」
「おお、侯爵様、有難うございます。さあ、メアリー一緒に帰ろう」
だが、様子がおかしい。飛び込んで来ない。
「・・・・お父様?お母様?」
「さあ、お母様に抱擁させて」
だが、プルプル震えて侯爵夫人の後ろに隠れた。
「「メアリー!」」
「ゴホン。メアリーは既にうちの子だが?」
「そうよ。メアリーはダイア侯爵令嬢よ」
「そんな。話が違う!お礼なら用意した!」
「そうよ。侯爵閣下は子沢山だわ。1人くらい・・」
「ゴホン、1人くらい?皆、大事な子だが?」
「「「メアリー」」」
「メアリーは僕の妹だ。連れて行かないで」
「私の妹よ」
侯爵の子達が部屋に入りメアリーに寄り添う。
「月に一回、私達の監視の下に会うことだけは許す」
ひどい。その一点張りだ。
結局帰るしかなかった。
妻はまた伏せるようになった。
やっと生まれた子だった。
妻は自分を責めている。
一挙にまた暗い日々に戻った。
「そうだ。メアリーは?こんな時に妻の側に侍るのが仕事だ」
「旦那様、偽のメアリー様は屋敷を出ました」
「何だと!何故知らせなかった。家長の許可無しに」
「置き手紙をお見せしましたが、旦那様は机の引き出しに入れました」
「それを注意するのが使用人の仕事だ!」
全く、まあ、良い。
孤児院からまた連れてくれば良いだろう。
7歳の孤児院の中では可愛い女の子を連れて来た。薄いが金髪だ。
「今日から名前はメアリーだ」
「うん。分かった」
だが、おかしい。
「キャアー、今日からお姫様だわ!」
暴れ回る。
使用人達も辟易している。
「お嬢様!カトラリーをお使い下さい」
「モグモグモグ!」
無心で手で食べていやがる・・・食べ物を散らして汚い食べ方だ。
叱った。
「メアリーの役目は妻を慰めることだ」
「分かった。おばさんのところに行けば良いのね」
やっと、妻の寝室に行ったが・・・
「母ちゃん?ねえ。ドレス欲しい!」
「ヒィ、こんなのメアリーではないわ」
欲深い。
「もっと、子供らしく可愛くできないか?」
「ウンチ!」
そして下品だ。
たまらず領地の孤児院に返品した。
老齢の孤児院長に苦情を言う。
「寄付をしているのに何だ!もっとマシな子を寄越せ」
「伯爵様・・・子供は商品ではございません」
「教育をしっかりしろ」
「予算を削られたのは伯爵様では?私一人では限界がございます」
「何だと!それを何とかするのがシスターの仕事だろう」
話にならない。
「寄付を打ち切るぞ!」
「ええ、どうぞ・・・」
「良いのか?」
「当孤児院出身のメアリー様が基金を作ってくれた・・・これから人を雇える予定です」
「待て!そのメアリーは偽のメアリーか?様?」
「さて、私は仕事がありますから」
気になる。様付けだ。違う貴族令嬢だろう。全く紛らわしい。
探した。あのメアリーは孤児院に戻ったのではないことだけは分かった。
安くない金を使い情報ギルドに依頼した。
「新興のトーマス商会に滞在しているようで・・・」
「ヨシ、そこに行く」
私は向かった。今日中に連れ帰る!




