欲しがり義妹メアリー
「メアリー様、是非、当家の食事会に来て下さい!」
ストリートで串焼きをほおばっていたら貴族の使者が来た。
こいつ、金貨を投げて渡した奴だ。
「今、食事しているからいいの~」
としか言えないな。
顔がガーンとなっている。
でも、仕方ない。
聞けば。
「貴方は爵位あるの~?、貴族の子弟なの~?」
「平民でございます・・」
平民らしい。そうか、貴族に近い平民の使用人が威を借りて威張り散らしているのか?
本物の貴族は平民などどうでも良いだろう。生産の手段としか見ないと思う。
ハンス馬車工房に行かなければならない。新商品の子供向けの馬車は注文が来ない。
困ったものだ。
と馬車で向かっていると。
馬車の前をふさぐ女の子がいる。令嬢だ。
「ちょっと、あなた、メアリーね!」
仁王立ちだ。後ろに使用人達を大勢引き連れている。10歳くらいか?
赤毛で、紺のドレス、勝ち気なお顔だ。
ヨサブロウさんを制して馬車から降りた。
「ちょっと、あなた。私はカールハインツの姉のヘレネーゼ・ベレッケよ」
カールハインツ?カール君のことか?
「初めましてなの~、メアリー・ダンなの~」
「フン、男爵家ね。カールが会いたいと言っているのだから会いに来なさいよね!」
どうやら侯爵家のようだ。そくざに家門から爵位を言い当てるなんて、貴族を全て暗記しているのか?
「ダン家って、援助と引き換えに養子を受けるわ。でも、奇跡の建て直しをしたっていうの。運が良かったわね。もう少し遅かったら男爵令嬢になれなくってよ」
それにしても、この子・・・
「まあ、噂通りの変な馬車ね。見せなさい」
「中以外はいいの~」
「入れなさいよ!」
反抗したくなるお年頃だ。意図したいことと反対の事を言えば良いのだ。
「まあ、中は意外としっかりしているわね・・・走らせなさい」
「はいなの~」
「まあ、揺れないのね。乗り心地最高じゃない」
「メアリーは、これから馬車工房に行くの~、だからお別れなの~」
「連れて行きなさいよ!」
とこのまま連れて行き。ハンスさんに引き合わせた。
「お好きな馬車にカスタマイズできますよ」
「お城の形できるかしら」
「ええ、もちろん」
何か商談になっている。
「金貨600枚になりますが・・」
「まあ、お小遣いでなんとかなるわ。御者はメイがやりなさい」
「え、さすがに屋敷の敷地内にしましょう・・ねえ。お嬢様」
「まあ、恥ずかしいって言うの!」
顧客にしたい。砂場遊び仲間にすることにした。誘う。
「まあ、砂場遊びになんて子供っぽいわ。私はもう10歳よ」
「メアリーは7歳なの~」
「って、何よ。それ、お城を作っているの?」
「そうなの。ヘレネーザ様、お城が好きだからなの~」
砂遊び用のスコップ、バケツも作ってもらった。
「し、仕方ないわね~」
と言いながら、砂場遊び用の服も買って本格的だ。
そして、屋敷にお誘いを受けた。
「ちょっと、メアリー、屋敷内に砂場を作るから意見を聞きたいわ。来なさい!」
「行くの~」
とカール君の屋敷に行くことになった。カール君は部屋のベッドで療養していた
「お嬢様!ゴホ、ゴホ、会いたかったです」
「ちょっと、寝てなさいよね」
「お久しぶりなの~」
薄らと細めで見ると、やはり膨大な魔力に体がさいなまれているようだ。
針治療で魔力を外に放出できるように出来れば・・・
でも、いきなり鍼は怖いだろう。今できるのは、お呪いだ。額に手を当てて。
「病魔よ病魔よ飛んでいけ~」
とやったらカール君は真っ赤になった。
「メアリー!接触は厳禁よ」
「はいなの~」
「メリー、おやつ持って来なさい」
お部屋で楽しくお話をしていたら。
「お嬢様は留守です! ダネルハインケン様」
「え~、いつも居留守つかうじゃん」
わざとらしいメイドの大声が聞こえる。
先触れもなしに来たらしい。
ドタドタと駆け足が聞こえる。
ノックも無しにドアが開いた。
「やあ、いたじゃん。ヘレネーゼ、会いに来たよ」
何だ。12,3歳くらいの子だ。金髪碧眼だ。顔にニキビがあるな。
ヘレネーゼは、固まっている。恐縮している。
相当な高位貴族か?
「ご挨拶を申し上げます。ダネルハインケン・グルジア様・・・」
「ダネでいいよ。婚約者になるのだし。僕は赤毛でも気にしないよ」
・・・何だ。これは。カール君の方を見る。口をへの字にしている。
「カール、僕が当主になったら、南国の暖かい地で療養してもらうよ。さあ、ヘレネ、お茶会をしよう」
渋々、ヘレネーゼは連れ去られた。
カール君から事情を聞いた。
カール君は病弱だ。だから、当主はヘレネーゼ様が継ぐ話も出ているが問題は婿だ。
グルジア大公家が名乗りを出た。
断れないそうだ。婚約の契約日を何とか引き延ばしている。現在、ダネルがヘレネーゼにもうアタック中だと?
「ヘレネーゼ様はニキビ男はお嫌いなの~」
「ええ、性格に難ありです。それに義姉になるミレーヌ様は何か怖いです」
そうか、カール君が元気になれば良いのだな。
鍼は・・・・あるか。
「カール君、メアリーを信頼して欲しいの~」
「何をいまさら・・・お嬢様、私を助けてくれたじゃないですか?喉に詰まったニンニクを取ってくれました」
鍼を刺す。徐々に魔力を放出する回路を作る。まるで星座のようだな。
「カール君は、ベレッケ家を継ぐの~」
「自信ありません。でも、ダネルハインケン様が婿になって姉上が泣くのは嫌です」
「分かったの~」
それから、何回も通った。
ニキビ男は毎日来ているな。
だから、お茶会に乱入することにした。
「ヘレネーゼ様はズルいの~、いつも、イケメンと楽しくしているの~、メアリーも仲間に入れて欲しいの~」
何だか、欲しがり義妹みたいになった。
「ズルいの~、ズルいの~」
「君・・・まあ、いいか。そこのメイド、席を用意してあげなさい」
「メアリー・・・」
それから、メアリーは、東方諸国ワアク国の巫女の服を来てヘレネーゼ様が来る前に乱入した。
「メアリーのドレスなの~、見て欲しいの~」
ニキビ男はハッとしている。
「メアリー嬢は・・・ベレッケ家の親戚かな・・・」
「そんな感じなの~」
「金髪碧眼・・・むしろ貴族に相応しい。メアリーをヘレネの代わりにするように侯爵殿に・・・言えば・・・」
何だか、取らぬ火トカゲの皮算用をしている。
泣くか?
「グスン、グスン、メアリーはヘレネ様の代わりなんて無理なの~」
無理なの~と言ったら、ますます食いついて来た。本当に法的にも無理だ。嘘は言っていない。
「そんなことはない。貴族は血だ。血は髪と目に出てくる。貴族の色と言うものがあるのだ」
それから、ヘレネーゼを袖にし続けるようになった。2人だけのお茶会になった。
奴は勝手に目論見を話し出した。
「大丈夫だ。契約の日に結ばないと宣言を出せば成立しない。メアリーを指名するよ。父上と母上、姉上も反対しない。出来ないのだ」
「無理なの~、グスン、グスン」
そして、婚約を結ぶ契約の日に・・・
「僕はヘレネーゼ嬢と婚約を結びません。そこのメアリーと婚約を結びます!理由はヘレネーゼ嬢は貴族のちが薄いからです」
と両家のご家族の前で宣言を出した。
すると、カール君も部屋に入ってきた。
「失礼、私は大丈夫です。父上、母上、姉上の好きな相手と婚約を結んでもらうべきです」
「カール・・・」
「もう、いいの?」
「はい、すっかり病気が治りました。当主教育を受けれます」
カール君も元気になっていた。
これには大公家も目論見が外れて驚いている。
あ、私、メアリーちゃんは。
「グスン、グスン、ウワ~ン、メアリーはダン男爵令嬢なの~、独立した家門なの~、無理なの~、馬車の商談で来ただけなの~」
と泣いて誤魔化した。
「な・・・メアリー、どうした。親戚ではないのか?」
「知らないの~、だから無理と言ったの~」
「ダネル、行くわよ。帰ったら・・・分かっているわよね」
「ミレーヌお姉様・・・」
大公家の方々は去った。
カール君が元気なのを見て目論見が外れて諦めたようだ。
それから、私は・・・
「ヘレネーゼ様、馬車できたの~、お届けに来たの~」
「メアリー、様はいらないわ。ヘレネお姉様と呼んで良いのだからね」
「メアリー様、私はカールと呼んで下さい」
姉弟に引っ張り凧だ。




