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実の子が見つかったからと邪険にされたので、屋敷を出た養女の話  作者: 山田 勝


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メアリービーム

「遅くなって申訳ないヨー、飛龍で飛んでいたら、河で溺れている子供を見つけて救助したヨー」


「ロン先生、ご足労有難うございますネ」



 商業都市連合のチィナ街の重鎮、ロン先生に来て頂いた。トーマスさんの恩師でチィナ街の教育係らしい。飛龍に乗って文字通り飛んできてくれた。騎士団に呪いの人形疑惑を解いてもらったのだ。

 私はトーマスさんの隣で挨拶をする。



「足下の悪い・・・ハニャ、気流が荒れているところ来て頂いて有難うなの~」

「アハハ、可愛い童女ヨ」





 ロン先生は山羊のようにヒゲのあるご老人だ。

 チィナ人、善い人と悪い人、両極端に別れる人種らしい。

 ロン先生は善人か?


「こんな可愛い子に呼ばれたら駆けつけるヨ-」


 頭をナデナデされた。


 ロン先生の後ろには先生のガードマンにワアク人がいる。異世界インチキ日本人だ。

 一目で分かった。浅黄色の着物に大きな刀にポニーテールのように髪を後ろで束ねている。年齢は30歳か?


 私は目をそらし続けた。


「ところで、物騒な噂あるヨー、チィナ人の呪術師が王国に雇われたヨ-」

「何と、物騒ですネ」

「ハニャ」


「巻き込まれないように気をつけるヨ-」


 ロン先生をもてなして、工房や串焼きストリートを案内して名残欲しいがお見送りをした。


「では帰るヨー、そうそう、お嬢ちゃんには巫女の素質があるから加護を授けるヨー」


 額に手を当てられて軽く押された。何か、ピカッと光った。


「呪いが見える加護よ。呪いに近づかないようにするためヨ、ヨサブロウも置いて置くヨー、家臣にするヨー」


 え、ガードマンを譲ってくれたのか?メアリーちゃん護衛騎士付のお嬢様になったのか?


 ヨサブロウと言うらしい。

 無言でペコッと頭を下げた。


「・・・・・・・・・・」


 ヨサブロウさんは私の専属ガードマンになった。


 背は小さいが骨格がガッシリしている感じだ。


 情報を聞きたい。ボツリボツリと話し出した。


「ワアク国の元首は誰なの~」

「天子様の元、日本幕府と諸候の合議会があるでそうろう


 日本幕府・・・まるで徳川慶喜の時代に作られた幕府の新日本の案みたいな世界か。


 さすがにヨサブロウさんの過去は聞けない。そんな人達はごまんといるだろう。




 ある日、串焼きストリートを見回りしていたら、


 何かが空を飛んでいた。人型の紙人形なような物が数体飛んでいる。

 紙には黒いモヤがかかっている。王城の方に向かっているな。


「メアリービームなの~」

「メアリー様?」

「・・・・・うむ。殺気を感じるで候」


 悪い物だ。そんな物が串焼きストリートの上空を飛んでいたらたまらない。

 両手を掲げて聖魔法で浄化した。


 マリーさんには見えないみたいだ。ヨサブロウさんは薄らと感じている程度のようだ。


 それからも何回か飛んできた。


「メアリービームなの~!」


 と浄化し続けた。


 また、王城近くの角に黒い靄が立ち上がっている箇所があった。

 何だ。標識にお札がはり付けてある。周りに商業広告がはり付けてあって目立たないようになっているが崩した漢字からモヤが発している。


「メアリービームなの~」


「まあ、メアリー様、可愛らしいけども・・・何をされているのですか?」

「ハニャ、おまじないなの~」


 別にメアリービームと言わなくても良いが、言わなくてはいけない気がする。

 そんなこんなを続けていたら・・・・

 夜、ヨサブロウが呼びに来た。



「姫、姫、危のうござる。敵襲にそうろう・・女中殿を起して下され、拙者が行くと夜這いと思われるで候」


 現在、一軒家を借りて住んでいる。

 マリーさんも住み込みだ。


「何故、分かるの~」

「拙者、芸能、中番でござる。式神で結界を張っていたで候」


 スキルが芸能?中番は要人警護か?

 マリーさんを起して物置に入るように言われた。


「拙者、討ち取るで候!この納屋から決して出てはいけないで候」


 刀を抜いている。暗闇で刀身が光るから分かった。

 ヤバい・・・


「メアリー様!」

「マリーしゃんはそこにいるの~」


 私はすぐにヨサブロウさんの後を追った。

 あれは武士だ。ヤバい。


 江戸時代の武士の実態はよく分かっていない。

 武士のお給料は年一回で、それを家族で分けた。お婆ちゃんは何両、奥様は何両と予算を振り分けたらしい。なんてことは、畳奉行の日記で分かったぐらいだ。


 そして、武芸だが、幕末、簡単に水戸浪士に討ち取られた井伊直弼の事件もあるが・・・


 イギリス公使館を襲撃した天狗党を幕府の警備員が撃退した事例もある。


 あのときは・・・・

 合戦中、首を持って、若い目付の所まで来て手柄の記録を願い出たそうだ・・・

 若い目付は腰を抜かした逸話がある。


 江戸時代、長男以外は家を継げない。次男以下は無聊を慰めるために、剣術に没頭した人もいる。

 ヨサブロウがそんな立場だったら、簡単に首を斬るだろう。


 暗闇で敵は見えない。しかし、庭では斬り合いが始まっているのは分かった。

 だから、私は・・・


「殺してはいけないの~」


 と叫んだ。


 暗闇でも分かる。ヨサブロウさんはチラッとこっちを見て頷いたようだ。


 その後、何回か斬撃の音が聞こえて終わった。


「姫、敵の剣を壊したでござる。敵は忍びで候・・・」

 見たら、ヨサブロウさんの刀は折れ曲がっていた。

 刀は武士の命だ・・私の命令を聞いて体への斬撃は控えたそうだ。


 ヨサブロウは立ったまま頭を下げた。

 だから私は。


「あっぱれなの~、手柄なの~、武勲なの~、誉れなの~」

「ハハーッ」


 賞賛して、金貨を50枚ほど差し上げた。


「拙者、しばらくお暇を頂きたいで候・・」

「許可するの~」


 次の日、ヨサブロウさんはどこかへ旅だった。

 刀が壊れたことがよほどショックだったのだろう。




 日本刀、ワアク国から輸入するか・・・そしてプレゼントしよう。そしたら帰って来てくれるのかな

 と思ったら、


 数週間後、ヨサブロウさんは刀を腰に下げて戻って来た。

 文字通り、少し暇ももらっただけのようだ。

 わたしゃ、どこかに旅だったと思って本気で心配したのに。


「ハニャ、刀、直したの~」

「新しく作ってもらったでござる。ミスリム製の日本刀でござる!」


 何でも、チィナ国、この女神圏大陸でも作れるものらしい。


「折り返し鍛造をしてくれる工房を探したでござる」


 日本刀の鍛錬の仕方は主流ではないが作れないというほどではないらしい。


「刀は魂ではないの~」

「刀は大事な道具でござる」



「心配したの~」


 ポコポコと胸を鉄槌で叩いた。


「これからも仕えるの~」

「はい、姫」


 話を聞いたら、沖合で釣りをしていたらながされてチィナ船に拾われたらしい・・・

 その時の話を笑顔で話す。まっとうな人だったのだ。




 ☆☆☆商業都市連合チィナ街


 一方、チィナ街では粛清が行われていた。



 ・・・ワシはあの人形を見てすぐに分かったよ。

 ワザワザ医者用の鍼灸人形を多量に輸入する馬鹿はいないよ。


 呪いをするために女神教徒ギミーとやらを使って呪い騒動を出ってあげて目くらましにしようとした。数体程度じゃ話題にもならないが、1000体もあれば目立つ。


 しかし、

 たまたま漢字を読める童女がいて目論見が外れ。

 更に、その童女は呪いを打ち破る力があった。そして、童女を殺そうと襲撃までしたがヨサブロウに阻まれた。


 なあにワシはほんの手助けをしたまでよ。


「何で掟を破ったネ、呪いは悪人にしか使ってはいけないヨ、立身出世の道具にしてはいけないヨ」



「ヒィ、ロン・・師・・・」


「フウ、王国の事情には関わらないことね。ハグレ者は堅気よりもルールが厳しいヨー」


「しかし、老師ノース王国に足場を作るチャンスです!」

「「「そうです!」」」


「貴方たち、死ぬヨ。だけど慈悲をあげるヨ、本土の方に顔を向けるヨ、魂は郷に帰れるヨ、楽に殺してあげるヨ。ワシの点穴術は楽に死ねるヨ」


「「「ウワー!」」」」


「逃げたヨ、殺すヨ。剣でザクザク切り刻むヨ」

「「「はい、老師!」」」



 フウ、ワシはロン書文、善人だけでは渡ってはいけない。

 しかし、あの童女ならそれが可能かもしれないね。

 彼女のやりたい事が即善行ね。


「老師、全員誅殺しました」

「ウム、あの童女のいる国の方向に向かって逃げたネ、あの童女に魂を浄化してもらおうと良いヨ」


 ワシは見守るだけだ。


 我、遠くにあってメアリーを想う。



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