メアリーが出た後のゼークト伯爵家➁
「ゼークト伯爵殿、メアリーは返さないネ!」
「うるさい。メアリーを使って金儲けしているくせに」
「それは面目ないネ、でも、貴方には返さないネ」
裏組織風情がワシに反抗する。
もう、何回目だ。
妻は毎日窓を見てメアリーの帰りを待っている。
屋敷に戻る。執事長が書類を抱えてやってきた。
「旦那様、書類の決裁が貯まっております」
「うるさい!今やる!」
「領地経営か・・・・しばらく手をつけていなかったな。何だ。書類が乱雑だな。今までは整理をされていたが・・」
「それはメアリー様がやっておりました。分類をしていました」
「なら、お前がやれ」
「それが、分かりません」
「何だと!」
そう言えば、いつからか・・・・思考の順に書類がまとまり始めた。
「メアリー様が屋敷内を歩き回り。・・・私が疲労しているのを慮って・・」
『関連付けて整理するの~、図書館方式なの~、重要書類は付箋付なの~、メアリーがやるの~』
「・・・・今までで良い。日付通りに整理せよ」
しかし、それだけではなかった。
メイド長が訪ねて来た。
「メイド達に鬱憤がたまっています・・喧嘩が発生しています」
「何故だ。それを何とかするのがお前の役割だろう?」
「それが・・・」
「今まではメアリーの遊び相手や用事を言いつかって気晴らしをしていただと?!」
「はい、メアリー様は、屋敷内に閉じ込められていました」
「閉じ込めていない!外は危険だからだ!」
「ヒィ、ですから・・・」
メアリー様は絶妙に采配していました。奥様がお病気でしたから・・・
『ミリーしゃん。お花、買ってきて欲し~の!ゆっくりで良いの~』
『アルテしゃん。一緒にお昼寝ごっこをするの~』
・・・・・・・・
「何だと!妻の能力が低いとでも言うのか!」
「ヒィ、滅相もございません」
騒ぎを聞きつけて妻がやってきた。
「あなた・・・私、最近調子が良いから、頑張るわ。フラワ、教えてね」
「はい、奥様・・」
そんな時、商人がやってきた。確かあいつは、ギミーだ。
「旦那様、お久しぶりでございます」
「うむ。久しいな」
ギミーはいつも満面の笑みをたたえている男だ。
だが。メアリーは嫌っていた。
『グスン、グスン、あのおじちゃん怖いの~』
『ほお、そうか、ギミー、すまないが帰ってくれ』
だから、遠ざけていた。
『そうですか。お嬢様、怖がらせて申訳けありません』
子供の我が儘に嫌な顔をせずに従ってくれた善人だ。
「噂を聞きました。メアリー様が家を出たと、今もいらっしゃらないのですか?」
「そうだ・・・」
「とっても、良い話がございます。東方貿易です。今、大人気です。旦那様、箱99箱買いませんか?」
「物は何か?」
「それが封印されていて、分からないのです。しかし、東方諸国の物なら何でも大人気です」
「うむ。買おう・・・しかし、中途半端な数だな」
「さあ、東方人ですから、習慣が違います」
結局、一箱、金貨10枚で買った。金貨990枚、我が家でも厳しいが、何、すぐに、これが倍以上になるのだ。
荷の引き渡しの日、ギミーは来なかった。冒険者達だった。
箱を開けて驚いた。
「何だと!何だ。この不気味な人形は!」
のっぺりとした女の人形が一箱、10体入っている・・・気味が悪い。
「・・・まさか、呪いの人形か・・・大変だ。王国騎士団に知られたら・・」
呪いは国家禁制の術式だ。
人形を処分しようにもどのような仕掛けがあるか分からない・・・
しまった。冒険者たちに見られたか?
「お代をもらっているので失礼ます」
「物は何ですか?」
「いや、早く帰り給え」
大丈夫のようだ。しかし、その日にうちに、騎士団が来た。
「ゼークト伯爵、告白があった。呪いの準備をしていると」
「さては王妃殿下を呪う一派か!」
「ヒィ」
「あなた!」
赤い騎士服、近衛騎士団だ。
「旦那様!だからお止めしたのに、私は正義の心で告発しました!」
「ギミー、お前!」
私は取り調べを受けることになった・・・・
家のことは?妻は、心配が絶えない。もしかして、メアリーはこうなると分かっていたのか?
☆メアリー視点
前世、人事部だった。そこで資料を見た。本能に弱い笑顔の人の写真。
別にそれが悪いと言うことはない。しかし、過ぎれば犯罪者になりやすい。
強いて言えば、マルチの集会にいる人の笑顔。ギミーの笑顔はそれを連想させた。
「この世は悪人だらけなの~、でも、悪人の世界でも馬鹿はいてはいけないの~!」
「ヒィ、メアリー!ヒドい扱いを受けて屋敷を出たと聞いたぞ!義理はないはずだ!」
今、わたしゃ。ギミーを捕まえた。ゴロツキを従えギミーの港の事務室にいる。海猫の声が聞こえるぜ。どこか猫ちゃんの声なのか分からない。
糖分が足りねえ。ペロペロキャンディーを舐めている。
「今、メアリーは東方貿易ギルド、相談役の仕事をしているの~」
ギミーは東方貿易で100箱買った。しかし、陶磁製の人形を買い求めたが、不気味な裸の女性のお人形だった。
一箱開けて、呪いの人形だと思って慌ててゼークト家に売ったそうだ。
貿易先はチィナ、地球だと中国に相当するだろう。
中に説明書があった。
「漢字か・・・フムフムなの~!」
漢字は読める。元々漢字は貿易するために生み出されたという説があるくらいだ。
最初の確認されている王朝は殷、別名商だったな。関係あるのか?
「これは呪いの人形ではないの~!お前は王国騎士団に詐欺容疑で引き渡すの~」
「ヒィ!そんな。これは呪いの人形です!」
私はダン男爵夫人にお願いした。
「当家の名を使わせて欲しいの~」
「あら、メアリーちゃんおかしなことを言うのね。うちの子よ」
「ありがとうなの~」
そして、私は王国騎士団に行って説明をした。貴族令嬢の告発だ。無碍には出来ない。
この説明書は図解入りだ。
「・・・ということで、これは医療用のお人形なの~!」
「何だと、用法は?」
この人形は・・・・
女神信仰圏では分からないが、東方では、医者の前とはいえ。女性が肌を晒す行為はばかられる。ほとんどが男の医者だ。
だから、この人形を使って具合の悪い所を指して教える。
医者はこれから薬を調合したりするのだ。
「しかし、顔が不気味だぞ」
「これは女性に対する配慮なの~」
平均的な顔と体型だ。美人に作ると、それほどな女性は嫌だろう。かと言ってあまりにもブーだと、馬鹿にされているとも思える。
平均的で無表情の顔だ。
「説得力があるが・・・・だが、断定は出来ない」
「今、商業都市からチィナ人を呼んでいるの~」
この伝手はトーマスさんだ。彼はチィナ人三世、この地の血が混じっている。幼いころにチィナ街で育ったそうだ。
結局、ギミーは虚偽の告発で牢獄行き。
私は役目を果たしたのだ。
人形は売れないだろうな。王国の法だと、一端、買い受けたら解除は理由が必要だ。
ゼークト伯爵は裁判するだろう。財産差し押さえか。それはメアリーちゃんの考えることではない。
☆☆☆
「ゼークト伯釈放だ」
「ダン男爵嬢メアリー様が犯人を捕まえた。犯人はギミーだった。卿には賠償を求める権利がある」
「メ、メアリーが?」
そうか、帰って来てくれるのか。
ワシは、喜び勇んでメアリーの元に向かった。
だが、大勢に囲まれている。チューリップの馬車・・・に乗っているのか?そうか御者をつけよう。スージーで良いか。
「メアリー、ワシだ、ゼークトだ。帰って来てくれ」
「話は聞かないの~!」
無視をされた。そんな馬鹿な・・・ワシはいったいどこで間違えたのだ・・・・。
まさか、メアリーは助けたのではなくて・・ワシのことなどどうでも良いのか?
「憎んでくれ、それでも、つながりを・・・持ちたい」
聞こえない独り言をつぶやいた。




