4話 魔王様はトラウマを乗り越えられる?
勇者へのリベンジに燃えるボクはいつもの平原にやってきていた。
ボクの気配を察知したのか、少し遅れて勇者も平原に現れる。
「ふはっはっはっ! 待っていたぞ! 勇者エクセリア! この前はよくもボクの働いて貰ったお金を取ってくれたな! 今日こそボクがお前を倒してやる!」
「あー、はいはい。それで? またなの? 今日はなにをするわけ?」
「ふん! 聞いておどろけ! えっと、ちょっと待ってて……」
ボクは地面に両手を突いた。
地面に手を当てて持ってきた本を開いて、それを見ながら魔法の呪文を唱える。
「えっと……我は求む。汝が我を助け、目の前の敵を蹂躙し、我が厄災を取り払わん。我は汝の力を欲す……我の魔力を使いて顕現せよ……出でよ! 我が忠実なる下僕!」
ボクが呪文を唱えると、地面に大きな魔法陣が現れた。
魔法陣から現れたのは三つの頭の魔界の番犬ケルベロスだ。
「ひぃ……あ、あれは……」
「へぇ~、なかなか強そうなの召喚したじゃない!」
怯えるボクとは対照的にエクセリアは余裕を見せていた。
前世の記憶ではケルベロスに食べられて死んだソアラ。その記憶が鮮明に呼び起こされ、ボクはその場にぺたんと座り込むと股からじんわりと濡れて地面に水溜りが広がっていく。
トラウマが蘇って完全に戦意を喪失しているボクにケルベロスは視線を向けた。その視線にボクは恐怖し体を小刻みに震わせている。
ケルベロスの鋭い視線が、失禁して地面に座り込んでいたボクを捉える。
ガルルル……ガオオオオオオオオオオオッ!!
座り込んでいたボクにケルベロスが襲い掛かった。
ケルベロスが飛び掛かった瞬間に、地面に座り込んでいるボクをエクセリアは脇に抱えると、素早くケルベロスから距離を取った。
「なにやってるのよ! あんたが呼び出した眷属じゃないの!?」
「うぅ……で、でも……こ、こわいぃ……」
プルプルと震えながら泣きじゃくるボクを、後ろに庇いながらエクセリアは腰の鞘から剣を引き抜く。
「さぁ、来い! 私が相手だ! でっかいワンコ!!」
敵と認識したのかエクセリアにケルベロスは襲いかかった。
「ガルル……ガウッ!!」
「なっ! はやっ……くっ……くそっ!」
エクセリアはケルベロスの爪をギリギリで避けるが、かわしきれずにケルベロスの爪が左腕をかすめた。
「ぐうっ! この……召喚したソアラは激弱なのに、こいつは普通に強いじゃない!」
エクセリアは左腕に付けられた傷の痛みに堪えながら、右手一本で剣を振ってケルベロスを切りつけるが、ケルベロスの強靭な肉体に切りつけたエクセリアの剣を全く通さない。




