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2話 生徒会執務室にて

 放課後。

 王立桜ノ原学園高等部東校舎3階・生徒会執務室。私は生徒会長の二宮さんがいつも座る執務席の前に立つ。

 何かと忙しい二宮さんは書類を書いたりハンコを押しながら話し出す。


「さて、今朝の騒ぎの件だが。

身内が騒ぎの原因と知ってそばで見ていながら、止めに入らないとは。少しは責任というものはないのかい……希望」


 微笑みながら時折こちらを見てくるが、目の奥は怒り(マジ)である。この人の何を考えているかわからない笑みが怖い。だから昔から苦手だ。


「いや、止めに入ろうとしたところに二宮さんが来てくれたので」

「まるで俺が来たせいで止められなかったとも聞こえるけどね」

「いや、その……止められず、申し訳ありませんでした」


 この人に言い訳は無理だ。

 謝罪するとふっ、と鼻で笑われた。


「しっかりしてください。君は生徒会副会長、次期生徒会長候補でもあるんですよ。そんなんじゃ、他の生徒に示しがつかない」

「おっしゃる通りです」

「それに、ただでさえ俺たち5大名家は存在だけで目立つんだ。特に弟君。あれは良くも悪くも問題を引き起こす」


 ほとんど正論で何も言い返せない、悔しい。

 特に勇希に至ってはそうだ。傘島の決闘を何度も受けるし、そのせいで私も何度、二宮さんに色々言われてきたか。

 それ以外にも、勇希は何かと問題を拾っては周りを巻き込むクセがある。こればかりは誰に似たのかと私も頭を抱える。


「今後も気を引き締めていくように。君の弟にも伝えたが、君からも再度忠告をしておいてくれ」

「はい……」


 今日は自分の仕事もないから藍華と一緒に帰る予定だったのに。勇希の失態でこんなことになろうとは。あいつ帰ったら覚えておけよ。

 だが、意外と早く済んだ説教に心の中で安堵をする。さっさと帰ろうと一礼してさを向けた時、「あ、そうだ」と二宮さんが思い出したかのように言い放った。


「この後予定は?」

「いえ。藍華の店に立ち寄ろうとは考えてましたが」

「ちょうどいい、俺も行く」


 二宮さんは書類を引き出しに仕舞って鞄に荷物をまとめていく。


「俺も、ってなんで二宮さんまで」

「土曜日に青葉殿下の誕生祭あるだろう。今まで使ってた交流会用の服の丈感が合わなくなってしまったんだ。

藤城屋は布地も良いから長持ちする。洋装も和装もどちらも仕立ててくれるからな」


 国1番の呉服店【藤城屋】。昔は和装の仕立てをメインにしていた小さなお店だったらしい。藍華のお父上の代で一気に大きなお店にして、現在は洋装の仕立ても扱っている。

 多くの名家の御用達店だけでなく、前王・遥女王は藤城屋の布地をとても気に入っていたという話から、現在王家の服は藤城屋がほとんど手掛けているとか。

 今度の土曜日は青葉殿下の誕生祭という名の名家同士にとって交流会があったのを思い出す。父にも新しい服が欲しければ早めに報告と言われていたが、去年の高等部進級と同時に藤城屋で仕立ててくれた服があるからそれで行こう。


「お待たせしました。行きましょうか」

「はい」


 二宮さんの後を追い生徒会室を出た。

 しかし、これからの行動が今朝よりも騒がし事態にもなるとは思ってもいなかった。


ーーー


 平桜京王国中央区・一条邸。

 一条家当主子息の勇希は廊下を歩いていた。

 客室前の部屋に差し掛かった時、襖越しから聞こえてくる言葉に驚いて足を止めた。


「そろそろ婚姻の話しはどうかと」

(……婚姻!?)


 彼が聞いた話もまた、今朝以上の騒ぎを起こす原因の一つになるとは誰も予想していなかったであろう。

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