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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

魔女っ子メメロメの受難 --血税水晶と解釈禁止の国--

作者: 滝翔
掲載日:2026/05/01


ーー特殊鉱物で造られた建物の中にある煌びやかな書庫

国立の図書館で司書として働く私の名前はメメロメです

見た目は幼い少女ですが 今年で齢は67 敢えて言うことではないがババァじゃない

魔導師の血筋はこれくらいでまだまだ子供時代だ


「バデュカン地区は今年も課税免除だな…… 大きな戦の影響で仕方ないが……」


帳簿を仕舞うメメロメは図書館に鍵をして外へ

ここは魔法帝国【クィーラアメン】

全てが魔法で回る従来技法の魔法の世界の中核である


「パンパカパーン!!」


頭上より菓子パンを出現させるメメロメは 口一杯に頬張りながら帰宅する

夜空を見上げれば星なのか箒に乗った人なのか それくらいの人数がランタンを飾っていた


ーー因みに心の中で私が話し掛けているのはアナタ パソコンで読んでいる君

この魔法は有り得ない事メタフィクションと私が名付けたの 悪ノリが効いてるでしょ?

こちらからは音声で話し掛けてるつもりだけど…… どうやらそっちはテキストのようね

だから付け加えて情報提供スキャナーも施しておいたわ

そちらで反映されてるのは…… これもテキスト表示ね 地の文になってちゃってる……


トンガリ頭の住宅が並ぶ一軒家に彼女は帰宅 妹が料理を準備して待っていた


「お帰りお姉ちゃん……」


「ただーいま」


ーー元気が無いのが通常運転のハイメ

滅多に家に帰らない両親なので 唯一の家族みたいなものです


「今日の菓子パンはメロンパンだった」


「何でランダムな術式を組んだの……?」


「仕事に明け暮れると食欲無くてさ…… その時の気分に頼ると絶食の答えが出るのよね……」


「……お疲れ様だね 私もあと20年で魔法大学を終業するから」


「いつでも卒業出来るのに…… 何をそんなに研究する事があるのやら……」


ーー私は税務省に務めています

そちらの世界は紙幣で世界が回っているようですが

この国は魔法が全て 故に国を治める魔法帝が人民から徴収するは〝魔税〟

魔力がそちらで言う税金だから魔税 分かり易いでしょ?


「お姉ちゃん黙ってるけど…… 誰かと交信してるの……?」


「いいや一方的 別世界に干渉を試みるのが最近の嗜みだから」


「変わってるねぇ……」


ーー続きだけど徴収した魔力は勿論この国で一番安全な国庫に保管してあるの

明日中に入る用事があるから紹介して上げるわ




そして翌日 権力者が座す城塞

門を潜ると同時に職員承認センサーが作動して何事もなく入城

場内には似たような物が複数作動していて 監視の兵も多い


ーー本当は兵士なんていらないけど…… 魔法は無限じゃないのが玉に瑕なのよね

じゃぁ働く者への給料は何かって? 魔力はあげてないよ 暴動の火種を抱えるから

勲章ね 欲しい物は個人で好きに出せるし この国は名誉主義になっているわ

地位を得れば住む場所と見えて来る景色が変わってくる それに尽きるわね


頑丈な鉄製の扉の前に立てば 手動のレバーを曲げて中へ入る


ーーそこは魔法じゃないんかいというツッコミが届きました

この扉は魔法を反射する役割を担っているからね カラクリ式なんだ


中には美しく赤い石が輝いていた


「……やっぱり弱まってる」


ーーこれは国中の民の魔税が集まった石 〝賢者の石〟と呼ばれる私達の全財産

これ一つで万人の持つ魔力総量の倍以上 想像の遙か上を凌ぐ

故にこの賢者の石を狙う輩も多いので 守りは厳重にしなければならない


「しかしあの噂は本当なのか?」


ーー実は徴収の回転率がここ最近落ちているの……

賢者の石への魔力の吸収は契約による自動支払いの筈なのだが

最近は昔に比べて魔力の集まり方が酷く少ない


「国への永住権を得る見返りに魔力を捧げる……

そういう契約なのに契約違反の知らせが来ないのはこれ如何に……」


ーーこれが今この国が抱える不可思議な問題だ

魔力が減れば既得権益を持つ有権者への分配が減ってしまうの

分配が減れば国全体の発展が滞ってしまうわ


賢者の石を見つめながら考え事をしているメメロメに

一人の同僚が慌てて駆け寄ってくる


「メメロメさん!! 原因が分かりました!!」


「ご苦労…… 要因は?」


「それなんですが…… 妹さんも関わっていまして……」


「ハイメが…… 何をしでかしたんです?」


「ハイメさんが密かに所属している団体が 個人個人の魔税の流れを見直してるんです!!」


「……魔税の見直し?」


「結論を言えば必要以上の魔力が徴収されていないか勝手に確認され

抑えられる術式を身体に組まれているらしいです」


「そんなの国家反逆罪でしょ?!」


「魔力欠乏症が昨年大きな話題になりましたよね?

国民を病気にさせてまで税を取るのか…… だけど帝政の圧力によって鎮火した話でしたが」


「……何を考えてるんだ妹は 多少身体が弱っても安心して暮らせる場所なのよこの国は!!」


ーー私の言ってること正しいよね?




高層マンションのそこそこ上層の一室

一人暮らしには持て余す広いリビングで 大きなテレビの前に座る一人の男性

音声認証で真っ暗な空間に灯る画面を消す男は ドリンクサーバーからコーラを口に含む


「何だこのゲームは……」


手軽なサングラス型VR機器を外して天井を仰ぐ男性は スマホでレビューを確認していた


「〝傍白してくる主人公に毎度悩まされるノベルゲーム

恋愛シュミレーションでもなければ何故アニメでなくゲームなのか〟

……そりゃぁ安値で売られる訳だ」


猫に餌やりを済まして仕事を片付けようとするがこの男

買ったゲームは最後まで片付けないと気が済まない質だった


「税金を肯定するゲームか…… 所得に苦しむ中途半端な俺を嘲笑ってる様で嫌だなぁ

……取り敢えずハイメに注目してみるか 画面を点けてくれ」


再びソファーに座る男性はプレイを再開する




メメロメの妹のハイメは魔法大学にいた

彼女が所属するサークル名は【税制見直しクラブ】

そこでは彼女達を求めてくる人でごった返している


「うちの息子が先の大戦で死に…… その保険を掛けていた魔力を受け取る筈だったんですが……」


「確か所得税と住民税が課されてますが 他と比べて少量な筈ですけどどうされましたか?」


「私は数年前に白魔病を患ってまして 体内の魔力が他より生成されにくいのです

息子の魔力は私の魔力が吸い取られてから受け取るのが手順と役所に言われまして」


「そうでしたか…… なら抜け道を教えます 縁者に魔力を贈与するんです」


「ですがそれこそ贈与税が追い打ちを?」


「クィーラアメンの法律では魔力量110以下は免除されます

息子さんの魔力は書類に書かれている5400 これを貴方の配偶者や親しい者達に均等に

110より下回るよう分配して下さい 信頼が試されますが分配した魔力を後々回収し

尚且つ貴方が魔力を徴収されなくする唯一の道だと思います」


「あぁありがとうございます!! このご恩は必ず……」


弱き者をまた一人救ったハイメはコーヒーを飲んで微笑んでいた

そこに数十人の役人と兵を引き連れて 強引に押しかけるメメロメ


「随分と毛を逆撫でされることをするじゃないハイメ?」


「お姉ちゃん……!!」


その場の全員が怯える表情を彼女に向ける

兵達は速やかに行動を始め 相談に来た客人とクラブの関係者に縄をくれてやった


「国家反逆罪よハイメ 馬鹿なマネをしたわね」


「皆苦しんでるよお姉ちゃん……」


「国民の魔力で国内の安寧は保たれてるのよ?

生活・国防・発展 魔導師の家系で育った貴女が知らないとは言わせないわ」


「だからって国の為に死ねって言うの? そんなの間違ってない?」


「無防備で敵国に襲われたどうするの? 残された人々に食料を提供する魔力が無くなったら?」


「そこに生じるのもまた消費税…… 国民は魔税に苦しんでるよ?」


「全滅するよりはマシでしょ?

私達官僚だって国が貧しくならないように頑張ってるのは見てるでしょ?」


ーー我が妹がここまで馬鹿だとは思わなかった 元手が無ければ何も成せない 常識だと言うのに


「だからって友好関係を築く為に魔力を独占するのは間違ってるよ……!!

占領した小国への援助はまだ分かるけど

上流階級の魔道士や政治家に意味もなく分配してるのはどうして??」


「……勘違いしないでよ 分け与えられた分の仕事は彼等だってしてる」


「……じゃぁゴシップに出てた毎月開かれる大宴会は何の意味があるの?

中には敵国の要人も招待されてるなんて噂も訊いたよ?」


「……必要経費よ それに敵国と仲良くして何が悪いの?

信頼値が増えればそれだけ後の戦争は避けられるんだよ?!」


「そんなので国民は納得出来ないよ 自分達の魔力が敵の栄養になるなんて有り得ない……」


「有り得ないから何だっていうの勉強しなさいよ……!! 呆れたわまさかここまでとは……」


「……国民はお姉ちゃん達の奴隷じゃない!!!!」


ハイメの久しく響いた怒号が放たれた瞬間 その場は一瞬の爆風で覆われる

激しい耳鳴りと身体の痛み 黒い煙で自分の身体がどうなっているのか分からない

意識がはっきりするメメロメは軽症で立ち上がれた 一方で瓦礫に埋もれているハイメ


「ハイメ!!」


「うぅっ……!!」


「ハァハァ…… まさか……!!」


爆発によって空が露わになる室内

頭上の先には話題に挙がっていた敵国が一斉爆撃を行っていた


「おのれ…… ハイメは待ってて……!! 咎めは後日にするから!!」


「お姉ちゃん……!!」


ーー言わんこっちゃない

確かに敵国の要人を 権力者の一部が招いてパーティーをやっていたのは事実

だがそれはあくまで予防策の一つに過ぎなかった そう単純じゃないのが外交というもの

だからこれをやれば万事解決なんて 正解は一つもないからこその増税の筈なのに……


メメロメは賢者の石がある国庫へ

そこには既に この国の魔導帝と呼ばれる最高権力者が入室されていた


「お婆ちゃん!!」


「来たかいメメロメ…… しかし近年稀に見る魔力の弱まり方だな……」


「っ…… 私の責任です」


「事は既に見通している ハイメが国民の在り方に見立てを覚えていることもな」


「……容認するんですか?」


「多様性だの人権だの何だの…… ハハ…… 魔力は魔力ではないか

国に住まわせて貰って反論意見とは愚の骨頂 火急を要するこの状況で障壁になる考え方よ」


魔導帝は両手で持つほどの杖を振り翳し 上空から見下ろせば分かる魔法陣の紋様となる城壁が光り

無数の迎撃用魔弾が無数に打ち上がって空を飛ぶ魔空挺を次々と撃墜していく


強制徴収フォースレヴィ!!!!」


さらには国全体の地面に描かれていた魔法陣が光り出し 有無を言わせず国民から魔力を吸収

何も知らない民達は身体にダルさを覚え 魔力量が少ない者は一瞬にして死んでしまう


「……まだこれだけの魔力が」


「慈悲を無碍にしおって愚か者共が……」


魔導帝の冷酷な決断にメメロメは尊敬の眼差しを向けていた


「国あっての人だよねお婆ちゃん?」


「当たり前だ」


ーー墜落した魔空挺には生き残りの兵隊がいて その残党狩りに駆り出される自国の兵達

特別扱いされている上級魔道士や政財界の人間には出番は無く

余裕の戦果で場を収められた光景を見て私は この国の一員であることに誇りを持てました


先程ハイメがいた場所に戻ると まだ意識が残っていた


「お姉ちゃん…… 今回は何人死んだの?」


「現段階では大勢としか言いようがないわね…… でも安心なさい

階級の低い順から魔力が搾取されるよう魔法陣にプログラムされてるから

ハイメの知り合いは死なないわ!! ……だから貴女は留置所で頭を冷やして来なさい」


「……さっき来てた白魔病を患ってた人 つい最近傘下国になった国民なんだけど?」


「そう…… それは残念だったわね」


「っ……」


ーーハイメは私の胸ぐらを掴んで来た やれやれ…… どこまで罪を重ねるのか


「お姉ちゃん……!! 人の血税を何だと思ってるの……?!!!」


弱々しい手は最後には自分の服から離れ ハイネはそのまま動かなくなってしまった


「ハイメ…… うぅっ……」


ーー最後は喧嘩して別れてしまった 貴方はこの姉妹の喧嘩が平和的に解決出来たと思いますか?

こんな妹でも私の唯一の姉妹なの 出来れば唯一無二の姉妹からは一生愛されたいじゃない?

被災地復興の後になってしまったけどハイメの墓を建てた

そして頭の良い私は賢者の石の前でとんでもないことを考え始めていた


「死者を生き返らせる魔法があるとお婆ちゃんに聞いたことがある……

ハイメを生き返らせるには賢者の石の全魔力を使っても 成功するかどうかの禁忌魔法

……ハハ もっと国民から税を搾り取らなきゃ」


ーーさすがに今は正気じゃない非人道的な行為だってのは理解出来る

失った命は基本的に肉体に還らないのがこの世の摂理なんだから

まぁ私もたまには馬鹿な考えに至る者……

貴方はどうですか? 愛する者が死んだら犠牲を払ってでも生き返らせたいですか?




黒い画面には大きく〝完〟と書かれた文字だけが映っていた

サングラスを外して風呂に入り 歯を磨いて床に就く彼は天井を見上げ

スマホにアラーム設定して寝ようとする間際 無意識にボヤく



「いや…… 主人公の設定 もっと他に考えようなかった?」



男性はついでにスマホを触った際

ゲームタイトルのレビュー画面に星1.5を付けた



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