落ち込んでた日に、BBQで“家族みたいな仲間”が来た
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただければ幸いです。
—— 静かな午後、揺らぐ影**
その日の空気は、どこか胸の奥をくすぐるように甘く、そして少しだけ不穏だった。
レイジと又三郎の家の庭では、小さなバーベキューグリルが赤く呼吸し、
ユウとリョウコが氷入りのグラスを並べていた。
そこへ、ジェイク・ジェンキンス、チャールズ・ダン、そしてドノヴァン・オドネルが現れた。
三人の笑顔は柔らかく、どこか懐かしい。
食事が始まってしばらくすると、
ジェンキンスとダンはたびたび席を立った。
「氷を取ってくるよ」
「ちょっと手を洗ってくる」
「家の中を見てもいいかな?」
言葉は自然なのに、
家の中を歩き回る足音は、妙に長く、妙に静かだった。
レイジは少しだけ首をかしげたが、
又三郎は「気にしすぎだよ」と笑って肩を叩いた。
その間、庭ではオドネルが二人の横に腰を下ろし、
肉の焼ける匂いをかき消すほどの穏やかな眼差しで言った。
「お前たち、今日は少し元気がないな。
……何かあったのか?」
レイジと又三郎は視線を交わした。
彼らにとって、オドネルはいつだって
兄のような存在だった。
嬉しい時も、苦しい時も、
気づくと近くで笑ってくれた人。
その安心感に背中を押されるように、
二人はぽつり、ぽつりと語り始めた。
――コーチェラのフェスで、
ユウさんとリョウコさんに気持ちを伝えようとしたこと。
――だが、夜空に花火が咲いた瞬間、
彼女たちが亡き夫を思い出し、泣き出しそうになったこと。
――そして、言えなかったこと。
「……僕たちじゃ、あの人たちを幸せにできないのかなって」
レイジは静かに言った。
又三郎も同じ痛みを抱えていた。
オドネルはしばらく黙っていた。
沈黙は優しかったが、どこか鋭くもあった。
やがて、彼はゆっくりと口を開いた。
「記憶は、人を強くもする。
だけど……人を傷つけもするんだ」
その声音には、温度の読めない静けさが宿っていた。
「望むから苦しい。思い出すから胸が痛む。
――それが“考える”ということだ」
その言葉は夕陽よりも淡く、
二人の胸に長い影を落とした。
日が暮れ、バーベキューが終わる頃、
ジェンキンスとダンがオドネルにそっと合図を送った。
「そろそろ行こうか。」
「ええ、時間だ。」
三人は自然な笑顔のまま玄関へ向かう。
靴を履きながら、オドネルは振り返り、
レイジと又三郎を見つめた。
「今度は――お前たちが俺の家に来い。
紹介したい人がいるんだ。」
重くも軽くもないその言葉は、
二人の心に奇妙な余韻を残した。
そして三人の影が夕闇に溶けていくと、
庭には静寂だけが取り残された。
――何も知らぬまま、
世界はゆっくりと音を失い始めていた。
このエピソードを楽しんでいただければ幸いです。次のエピソードはすぐにアップロードします。




