愛にとって完璧な日
これはこの物語の最新エピソードです。皆さんに楽しんでいただけたら嬉しいです。
翌朝――。
レイジとマタサブロウは、互いに昨晩交わした約束を胸に刻みながら、通学路を歩いていた。
「お互い支え合って、母さんたちに想いを告げよう」
その決意が、まだ心の奥で熱を帯びていた。
家の前を出てすぐ、二人は隣人に出会った。
最初に声をかけてきたのは、ジェイク・ジェンキンスだった。
三十五歳、身長は六フィート。缶詰食品の会社に勤めている。
彼はいつものように穏やかな笑みを浮かべ、手を振った。
「おはよう、レイジ、マタサブロウ。今日も学校か。若いってのはいいもんだな」
続いて現れたのは、筋骨たくましいチャールズ・ダン。
三十歳前後で、地元の肉屋に勤めている。
豪快な声で笑いながら、二人に挨拶する。
「よぉ! 今度のバーベキューは俺が肉を持っていくからな!」
そして最後に姿を見せたのは、二十歳の青年ドノヴァン・オドネルだった。
建設現場で働く彼は、まだ少年の面影を残しながらも、屈託のない笑顔を見せる。
「おはよう! 今日も頑張ってな!」
――ジェイク、チャールズ、ドノヴァン。
彼らは、レイジとマタサブロウ、そして母たちと共に、少なくとも月に一度は庭でバーベキューを楽しむ仲だった。
笑い声、肉の焼ける匂い、夕暮れの空。その思い出は二人にとって大切な日常の一部だった。
やがて学校――サウス・トンプソン高校に到着する。
廊下の奥から現れたのは、七フィートを超える大男、ジョナ・リチャーズ教師だった。
無表情で厳格な雰囲気をまとい、生徒たちから一目置かれる存在だ。
彼は哲学と歴史を担当し、さらに進路指導も担っている。
低く響く声で、生徒たちに告げた。
「今学期の期末課題は……それぞれの父親の生涯を、史実に基づき正確に叙述することだ。
これは個人の研究だ。他者の助けを借りず、自らの力で仕上げよ」
生徒たちはざわめいたが、ジョナは一切表情を崩さなかった。
授業が終わり、校門を出たレイジとマタサブロウは、歩きながら未来の計画を語り合った。
「なぁ、どうやって母さんたちに想いを伝えればいいんだろうな」
「うーん……普通の日じゃダメだよな。特別な場じゃないと……」
二人はしばし考え込み――やがて同時に顔を上げた。
「……コーチェラ!」
そう、コーチェラ・バレー・ミュージック&アーツ・フェスティバル。
世界中のアーティストと観客が集まる祭典の場こそ、特別な告白の舞台にふさわしい。
夕暮れに染まる街を歩きながら、二人は胸の奥に小さな高鳴りを抱き、決意を新たにした。
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