表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

10 拷問イベント3

「信用できない、かぁ。それじゃあ一つずつ誤解を解いていこうか。ねぇ、エリザベスは俺に嘘をついたよね。ちゃんと謝れるかな?」

「嘘……?」


 どれが嘘なのだろうか。

 嘘と考えると、私もたくさんの嘘を吐いてきた。

 それは私が生き残るための術で……。


「黙ってたら、自白剤をいれるよ」

「しゃ、喋るっ……! 喋るからっ……!」


 廃人になんてなりたくない!


 嘘といえばたくさんある。

 まず、あぁ……あれだ。


「乙女じゃないって……嘘を吐いたわ。私は……異性と触れ合うどころか話せてもいなかったわ……」


 つい張ってしまった虚言。

 彼を怒らせてしまったのは、この発言かもしれない。


「そうだね。それはさっき確認させてもらったよ。じゃあ、ごめんなさいって言おうか」

――『確認させてもらった?』


 背筋がぞぞぞっと凍りついた。

 え? どうやって?


「ど、どうやって確認したの?」

「あぁ、大丈夫だよ。エリザベスの身体は今も純潔のままだ」

「そうじゃなくっ! どうやって確認したのよ!」

「そんなことよりも、()()()()()()()?」


 冷たくて細いものが首筋に当てられる。

 もしかして、追加の自白剤!?


「ご、ごめんなさい! 嘘をついてごめんなさいっ!」

「よく言えました。えらいえらい」

 頭を撫でられる。

 どうやら追加投与は避けられたらしい。


「……どうやって確認したの?」

「そういう魔具があるんだ。乙女じゃないと反応しない魔具が。今はもう廃れたけど、魔女裁判っていうのがあってね、そこでよく使われたものなんだけど……」

「……っ!」


 よかった。魔具か。

――って良くない!


「安心した?」


 ……心の奥を見透かされて、私は唇を噛んだ。

 この野郎。私の反応を見て遊んでやがる。


「じゃあ次、なんでエリザベスは俺と婚約解消したがるのかな?」

「それは……」


 そんなのわかりきっていることじゃないか。


『……私、本当は……本当は……エリザベス様には申し訳ないのですが、貴方をお慕いしております。好きなんです。優しい笑みも、甘い声も、すべてが好きです』


『……俺も貴方を好ましく思っております。花のように美しいアリア。――禁断の想いだとはわかっております。エリザベスには申し訳ないけれど……俺は貴方を愛しています』


 アリアの求愛に、リチャードが答えたから。


「貴方と……」

「リチャード」

「……え?」

「ちゃんと名前で呼んで? ()()()()()

「り、リチャード……?」

「そう。よく言えました」


 その瞬間、首筋にチクリと何かが刺さった。


――嘘っ!? 自白剤を追加してきた!?

 なんで? 彼の言うとおりにしたのにっ……。


 冷たい液体が私の身体に入ってくる。


「う……そ……」

「ご褒美だよ」


 リチャードが優しく言った。

 眼の前を塞がれているけれど、彼はきっといつものように笑みを浮かべているのだろう。

 あぁ……。


 もう、やだ。

 もう駄目だ。

 もう廃人になっちゃう。


「おねがいっ! おねがいっ……もう離してよっ……! もうやだっ……やだぁっ……お兄様、アリア、お母様、お父様っ……っ! 誰か、誰か助けてっ……」


 涙が溢れて止まらなかった。

 どうしてこんな仕打ちをされるの?

 私は心だけじゃなくて身体まで壊されてしまうの?


「泣いて喚いても、誰も助けにこないよ。残念だったね」

「いや、いやよ……もういや……全部いや……っ!」


 身体をじたばた動かしたい。でもそれすら出来ない。

 こんな人間以下の扱いを受けるなんて最悪だ。


「それじゃあ、エリザベス。ちゃんと答えてくれるかな? どうして婚約を解消したがるの?」

「そんなのリチャードが嫌だからに決まってるじゃないっ! こんな仕打ちをされて、なんで好きでいられると思ってるの!?」

「……本当に?」


 足がすくむ。

 彼にはすべて見透かされているような気がした。


「最初は……リチャードとアリアがお似合いだと思ったから……身をひこうと思ったの」

 すらすらと言葉が出てくる。


 自白剤のせいだろうか。

 もう、何もかもどうでもいい。


 好きだったことも。

 愛していたことも。

 幸せになりたかっただけなことも。


「アリアには本当は他の人を選んでもらいたかった。リチャードじゃなくて、お兄様を選んでもらいたかった。……でも、彼女は貴方……リチャードを選んで、リチャードもアリアの好意を受け取ってる……その言葉を聞いて、潔く身をひこうと思ったのよ」


 色々とやれることはやった。

 アリアに対して距離を縮めない兄に叱咤をした。

 リチャードとアリアを引き剥がそうともした。

 でも邪魔をすればするほど、吊り橋効果のように二人は引き合ってしまうんじゃないかって……。

 だから『やめて」と口を出すこともできなかった。


「ということは……あぁ、あの時の会話を聞いていたのか。じゃあ、なんでそんな誤解をするんだい?」

「え……?」


 誤解? 誤解ってどういうことよ。


「エリザベスには申し訳ないけど、俺は貴方を愛していますって話してたじゃない……」

「あぁ、あの嘘か」

「嘘……?」


 どこからが嘘なんだろう。

 彼はたくさんの嘘をついていて……なにがホンモノの言葉なのかわからない。


「あのあと、アリアに『貴方は聖女ですか?』って確認をしただろう? まぁ、アリアからは、はっきりとした返答は返ってこなかったけど」

「そこまで……聞いてない……」

 私はリチャードの返答を聞いて、すぐその場から立ち去った。

 だからその後の会話は聞いていない。


「あれは……確認のための嘘だったの?」

「そうだよって言ったら、信じてくれる?」

「……わかんない」


 いま私の前にいる人の吐く言葉がわからない。

 本心が見えない。

 いつだってそうだ。


 だから私はゲームのシナリオを思い出して、身を引いたのに。


「……アリアのことを探っていただけなの?」

「そうだよ」

「信じて、いいの?」

「疑い深いなぁ……。エリザベスはもっと素直だと思ってたんだけど……」


 リチャードはアリアを好きになっていない。

 私は全部ゲームのシナリオ通りに進むと思っていた。

 けれど、兄が聖女との結婚を考えたり、リチャードが私のことを付け回したりと、イレギュラーなことが沢山あった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()


「……私のことを……愛してくれるの……?」


 つい、言葉に出てしまった。

 今まで口に出せなかった言葉を。


 恋も愛も沼だ。

 落ちたら這い上がれない。


 だから私は避け続けた。あの日、アリアとリチャードがくっついたと勘違いした時に始まった、自分の本当の気持ちから。


 でも、ちゃんと彼と向き合おう。


――私はリチャードのことが好きだ。


「………………」


 リチャードは黙り込んでいる。

 目の前が見えないから、彼の表情が読めない。

「り、リチャード……?」


 かちゃかちゃ、と何か金属の鳴る音がする。

 ……え? なに……?


()()()()()()全部教えてあげるよ。エリザベス、君には散々疑われたからね。まぁでも密偵だったこともハニートラップを仕掛けていたことも本当だけど」

「最後って……なんの最後……?」


 その時、口元に布が引っ掛けられた。

――目だけじゃなく、口元まで!?

 これじゃ、まともに話しが出来ない。


「……ゲームだよ。エリザベス。君の想いを全部語ってくれるまで、俺は君を離さない」


 こ、この状態でどう喋れば良いのよっ!!!

リチャードの本心はもう少し先までお預けで……まだ続きます。拷問イベント……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ