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【改修工事】

「あれ?」



 通信魔法専用端末『魔フォーン』を眺め、ユフィーリアは首を傾げる。


 つい最近になって、魔フォーンにメッセージ機能が実装されたのだ。それを使って色々とメッセージのやり取りをしていた。

 通信魔法を飛ばすよりも魔力消費量が少なく済むので、メッセージ機能はかなり活用していた。今回もちょうど購買部に出かけたエドワードとアイゼルネに、ついでに注文していた魔導書を引き取ってきてもらおうかと思ったのだが出来なくなってしまった。


 原因はメッセージ機能が『改修工事中』と表示されているのだ。その為、指先で触れても反応しなくなってしまっている。



「仕方ねえな」



 ユフィーリアは仕方なしにエドワードの魔フォーンへ通信魔法を飛ばす。



「おう、エド。悪いな」


『どうしたのぉ?』


「魔導書を注文してたの忘れてたんだ、購買部に行くなら引き取ってきてくれ」


『何冊あるのぉ?』


「2冊。黒猫店長に『1週間前に魔導書の注文をした』って言えば通じる」



 エドワードは魔フォーン越しに『はいよぉ』と応じ、



『でもぉ、そのことならメッセージを飛ばしてくればいいじゃんねぇ』


「メッセージ機能が改修工事だとかで使えねえんだよ」


『ええ?』


「副学院長に聞いてみるけどな。魔導書の件、頼んだぞ」



 それだけ伝えて、ユフィーリアは通信魔法を切断する。


 魔フォーンを組み上げたのも、そしてメッセージ機能を開発したのも副学院長であるスカイ・エルクラシスだ。だからメッセージ機能を生かすのも殺すのも彼次第という訳になる。

 まだ試作の段階だから、本格的な開発をしようと改修工事をしているのだろうか。そうだとすれば少しの間だけ不便になるが、また使えるかもしれない。このメッセージ機能は非常に便利なのだから。


 ユフィーリアは次にスカイの魔フォーンへ通信魔法を飛ばす。



『あいー』


「副学院長、メッセージ機能が使えなくなってんだけど」


『あー、改修工事ッスね。機能を改善しようってのと、あと』



 スカイは『これ言っていいのかな』と呟き、



『あのメッセージ機能に厄介なものが取り憑いてたみたいで』


「厄介なもの?」


『他人に成りすまして会話しようとするんスよ。実際に何人か通報があったし』



 その話を聞いて、ユフィーリアは「へえ」と答える。


 実はその場面に遭遇したことがあるのだ。ユフィーリアではないのだが、エドワードがハルアとショウに成りすました誰かと会話していたのだ。本人は魔フォーンに触れておらず、膝の上でその成り行きを見守っていた訳である。

 それからキクガからも「メッセージ機能には何かあるかもしれない訳だが」と言っていた。どうやらユフィーリアとエドワードに成りすました別人がキクガや父親であるオルトレイと会話していたらしい。ユフィーリアはその場面に遭遇したことはないのだが、話を聞く限りでは本人のようらしいのだ。


 スカイは『それでッスねぇ』と言い、



『その厄介なものを消すのに、新しいものを作ろうと思うんスよ。今度は寄りつかないように結界も貼っておかないと』


「出来るのか?」


『所詮は魔法兵器(エクスマキナ)なんで。ボクに出来ないことはないッスよ』



 スカイは『じゃ、メッセージ機能の改修工事があるんで』と言い残して、通信魔法が切れる。


 副学院長はメッセージ機能を改善する仕事に忙しそうだ。彼の腕前のことを考えればすぐにメッセージ機能も新しいものが使えることになりそうである。

 ユフィーリアは魔フォーンを机の上に投げ出す。それから欠伸をするとピコンという音を聞いた。


 どうやら魔フォーンがメッセージを受信した様子である。メッセージ機能は使えないはずなのに。





 ???:あーあ、残念


 ???:でもまた次のにも取り憑くよ





 させると思うのか。



絶死(ゼッシ)――魔眼起動」



 魔眼の能力を発動させ、魔フォーンから伸びる糸を限定していく。

 赤色、青色、緑色――その奥に潜む黒色の糸を掴む。指先で触れると、頭の中に得体の知れない何かが流れ込んできた。おそらく、これがメッセージ機能に取り憑いた厄介なものなのだろう。


 羨み、妬み、嫉み、恨みつらみ、そのドス黒い感情に銀製の鋏を添える。



「あばよ」



 ――シャキン、と。


 恨みつらみさえこの世に残すことなく、黒い糸が消滅する。

 これで邪魔する奴はいない。あとは副学院長が新しく開発するメッセージ機能を待つだけだ。


 ユフィーリアは眠気を払うように欠伸をし、



「昼寝しよ……」



 魔フォーンはもう鳴らない。

《登場人物》


【ユフィーリア】メッセージ機能を活用していた魔女。使えなくなってしょんぼりしていたが、そういや得体の知れない何かがいたようなことを思い出した。どうせならこの世から終焉させてしまえば問題はない。

【???】ショウ曰く「何たら童みたいなものだと思う。悪戯好きなのだろう」とのこと。存在が面倒なのでこの世から消し飛ばされた。


【スカイ】せっかく組み上げたメッセージ機能に何かが取り憑いて作り直す羽目になった。面倒だがそれが1番最適。


※メッセージ事件の本編はこれにて終わりですが、おまけが3話ほど続きます。最後までお楽しみください。

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