【二礼二拍一拳】
キクガ:この前、現世で有名な神社に行った訳だが
キクガ:家内安全で有名なところで、ショウとユフィーリア君との幸せを願っておいた
キクガ:ついでにお守りも購入した訳だが
キクガ:次の週末、用務員室にお邪魔してもいいかね?
キクガ:何か用事があればまたの機会にしよう
ショウ:問題ない
ショウ:ありがとう、父さん
ショウ:実は今、ユフィーリアとハルさんでマフィンを焼いていたんだ
ショウ:上手に焼けたから、冷凍しておく
ショウ:用務員室に来た時はぜひ食べてほしいな(*´∀`*)
キクガ:そうなのかね、それは楽しみだ
キクガ:神社の話をしたら、オルトとアッシュも興味を持ってくれてな
キクガ:今日、また件の神社を参拝した訳だが
ショウ:嫌な予感する
【茜色の空の下にあるボロボロの社の写真】
【苔むした鳥居の写真】
【明らかに人の手が入っていないことが分かるボロボロの神社の写真】
キクガ:5日で廃神社になっていた話をしてもいいかね?
ショウ:父さん、オルトさんとアッシュさんを呼んでくれるか?
キクガ:ふむ、分かった
キクガ:何をするのか分からないが、呼べばいいのかね?
――キクガがオルトレイを招待しました。
――キクガがアッシュを招待しました。
――オルトレイが参加しました。
――アッシュが参加しました。
オルトレイ:休憩中だぞ
オルトレイ:何の用だ
アッシュ:親子で楽しく話してたんじゃねえのか?
アッシュ:水を差すようだろ
ショウ:何してくれてるんですか?
ショウ:巨頭オの次は何で廃神社なんですか?
ショウ:父さんから神社での話を聞こうと思ったら今度は5日で廃神社?
ショウ:デジャヴなんですよ、やり取りが
ショウ:誰か止めてくださいよ
オルトレイ:凄え怒涛の勢いで送ってくるではないか
オルトレイ:怖
アッシュ:ぐうの音も出ねえ
アッシュ:ぐうって音が聞こえたと思ったら俺の腹だし
アッシュ:つーか神社に閉じ込められて出られねえんだよな
キクガ:ショウ、こちらもお願いをして申し訳ないのだが
キクガ:ユフィーリア君を呼んでくれないかね?
オルトレイ:オレも頑張ってはいるのだがなぁ
オルトレイ:魔法が使えない脳筋の阿呆とインテリヤクザの2人組を抱えた状態では、さすがの魔法の秀才でも堪えるものがある
キクガ:誰が脳筋かね
アッシュ:誰がインテリヤクザだ
オルトレイ:逆だよ馬鹿野郎
オルトレイ:キクガの脳味噌まで筋肉が詰まっていたら冥府総督府は壊滅するし、アッシュがインテリヤクザだったら同族に命を刈り取られるような真似はないだろうに
オルトレイ:脳筋のキクガだったら単純に、倅から尊敬されなくなるぞ
キクガ:命拾いしたのか
アッシュ:まあ、キクガが暑苦しいところなんて見たくねえしな
――ショウがユフィーリアを招待しました。
――ユフィーリアが参加しました。
ユフィーリア:親子水入らずの会話じゃねえの?
ユフィーリア:アタシが入ってもいい感じ?
ショウ:父さんたちが廃神社に閉じ込められてしまったんだ
ショウ:ユフィーリア、父さんたちを助ける為にも協力してくれ
ユフィーリア:なあ親父
オルトレイ:何だ?
オルトレイ:この社の封印を解くのに忙しいんだ
ユフィーリア:そのボロボロの社から誰か覗いてねえか?
ショウ:写真を見たらそうなってるな
ショウ:扉がほんの少しだけ開いている
キクガ:そんなのはいないのだが
キクガ:振り返って確認してみたがやはりいない
アッシュ:建物の中に入ってみるか?
オルトレイ:オレは忙しいからお前たちだけで頼む
オルトレイ:何かあったら知らせてくれ
ユフィーリア:何で送り出すんだよ
ユフィーリア:引き止めろや
ショウ:ユフィーリア、このおじさん3人が集まるとツッコミが追いつかないんだ
ユフィーリア:え? アタシってツッコミ要員として呼ばれた感じ?
ユフィーリア:抜けていい?
ショウ:やだ
ショウ:逃がさないぞ、ユフィーリア
ユフィーリア:呪われた!!
オルトレイ:なかなか解けんのよな
【苔むした鳥居の足元の写真】
ユフィーリア:結界の類じゃねえ
ユフィーリア:親父、足元に子供がまとわりついてる
オルトレイ:戯け、嘘を吐くな
オルトレイ:子供などおらんではないか
ショウ:混ざり込んだ子供の虚な目がいるんですよね
ショウ:どこを向いても目が合う不思議
オルトレイ:止めろ怖いこと言うの
オルトレイ:大の大人がギャン泣きする姿を拝みたいか?
ユフィーリア:脅すな
キクガ:何か落ちていた訳だが
【社の中に落ちている古びたガラガラの写真】
ユフィーリア:ショウ坊の言わんとすることを分かった気がする
ユフィーリア:親父さん、3人でいると随分と自由人になるんだな?
ショウ:子供がやはりいるようだな
ショウ:古びたガラガラを握っている
キクガ:見たところ、ただ落ちているだけに過ぎないな
アッシュ:こんなもんが何でこんなところにあるんだろうな
アッシュ:ここって御神体とかが収められてる場所だろ?
キクガ:そのはずな訳だが
キクガ:まさかこのガラガラが御神体……!?
オルトレイ:ハッ
アッシュ:はッ
ユフィーリア:は?
ショウ:はあ?
キクガ:義娘と息子からの「はあ?」は心に堪えるな
ユフィーリア:何ならエドに至っては「あ゛?」だからな
ショウ:どすの利いた声でしたよ
ショウ:本気で説教されますからね
ショウ:用務員室の鬼ですから
ユフィーリア:何で自覚がないんだよ、こいつら
キクガ:ガラガラが御神体ではないと
キクガ:なるほど……予想は外れてしまったようだ……
ユフィーリア:むしろ外れてくれて正解まである
ユフィーリア:ふざけないでほしい
オルトレイ:やっぱり結界が張られていて出られんな
オルトレイ:仕方あるまい
オルトレイ:ここで野宿するか
ユフィーリア:お馬鹿?
ショウ:すまない、ユフィーリア
ショウ:貴女のお父様は頭の螺子をどこかになくされてしまったのか?
ユフィーリア:魔法の実験をしすぎたせいだな
ユフィーリア:憐んでやれ
ショウ:おいたわしや
キクガ:憐れまれているぞ
オルトレイ:だって出られないなら野宿するしかなくないか?
オルトレイ:お前たちの言う子供も見えんし
アッシュ:帰れなくなったから嫁さんに怒られる
ユフィーリア:むしろ普段から怒られろ
アッシュ:神社で世話になるなら挨拶の1つでもしておいた方がいいんじゃねえか?
キクガ:それはいい案だ
オルトレイ:賽銭箱は横倒しになっているから、まあ最低限の作法だけでいいだろう
オルトレイ:神々もそこまでの器量はあるだろうよ
ユフィーリア:何で野宿を受け入れてるんだよ
ユフィーリア:ここで泊まるな
ショウ:ユフィーリア、もうだめだ
ショウ:父さんはこうなったら話を聞いてくれない
ユフィーリア:天然が極まると話を聞かなくなるの?
キクガ:二礼二拍で最低限の礼節をしたら子供が顔を覗き込んでいた
キクガ:とりあえず殴ってしまった訳だが
ユフィーリア:二礼二拍一拳ってか
ユフィーリア:洒落なんて言ってる場合じゃねえんだけどな
ショウ:何で幽霊を殴っちゃうんだ、父さん
キクガ:この世に霊魂としてしがみついているからだが
キクガ:とっとと成仏しろ
オルトレイ:オレも見えたな
オルトレイ:ぶん殴られた頬を押さえて、子供が女の子座りをしているわ
【長身痩躯の神父を見上げて、腫れた頬を押さえる子供の写真】
アッシュ:鬼かな
アッシュ:鬼だったわ
オルトレイ:よくて鬼神だろう
ショウ:人の父親を鬼だなんて
オルトレイ:幽霊相手に説教を垂れるかな、普通
オルトレイ:鬼の形相でまだ現世に留まっていたことを叱りつけている
アッシュ:「もっと早く冥府に来ていれば、生まれ変わりも容易かったものを」とか何とか
アッシュ:子供を思っての説教だろうな
ユフィーリア:いい人なんだろうけど、二礼二拍一拳をしたインテリヤクザなのは忘れてねえからな
ショウ:確かにインテリヤクザっぽくあるけども
ユフィーリア:お前も大概そうだからな、ショウ坊
ユフィーリア:一部の生徒から実際に言われてるし
キクガ:子供を殴ったら普通に神社から出れた
キクガ:帰ろうか、今日は日帰りだし
オルトレイ:そうだな
アッシュ:おう
ユフィーリア:親父さん、次の週末に用務員室へ来るんだって?
ユフィーリア:じゃあその時に親父とアッシュの旦那も連れてきてくれ
オルトレイ:何だ、我が娘よ
オルトレイ:久々に会いたくなったか?
ユフィーリア:説教だよ、馬鹿野郎
ユフィーリア:自由に動くな、あんな危ない場所で
ユフィーリア:来なかったら冥府総督府で暴れてやるからな
ユフィーリア:頭のいい戦闘狂と呼ばれてるのを忘れんなよ
ショウ:父さん、俺も説教に参加するからな
ショウ:エドさんも参加する予定だ
キクガ:死んだ
オルトレイ:墓を用意してくれ
アッシュ:誰か殺せ
ユフィーリア:もう死んでる連中が揃いも揃って何を言ってんだ
《登場人物》
【キクガ】神社を参拝したはずが、参拝した神社がまさかの5日で廃神社に転身を遂げていたことに驚き。オルトレイ、アッシュと一緒にいると自由奔放になるインテリヤクザ。子供の幽霊相手でも説教に手は抜かないが、このあと息子から「好き勝手に動きすぎだ」と怒られることになる。
【オルトレイ】キクガから話を聞いて神社を参拝したのだが、まさかの廃神社に連れてこられて驚き。態度は傲岸不遜で偉そうだが、実際は文武両道を地でいく良家のお坊ちゃん。このあと娘から「あんな場所で好きに動くな」と説教されるが、特大ブーメランが突き刺さっていることを指摘したら取っ組み合いの喧嘩になった。
【アッシュ】今回も今回で巻き込まれたが、3人でいると割とタガは外れやすい傾向にある。苦労性のはずだがノリは意外といい。このあと息子から無言でアイアンクローを喰らう羽目になる。
【ショウ】尊敬している人物は迷わず父親と答えるほど尊敬はしているのだが、自由奔放に動く傾向がある父のツッコミ役が出来るほどには精神的にも成長したと思う。
【ユフィーリア】父親は盟友であり魔法の師匠なので気軽に話しかけることが出来る間柄。友達みたいな距離感だが、互いに身体能力が高いので取っ組み合いの喧嘩はまずやばい。




