【こちらのお弁当、どちらにねじ込みますか?】
ユフィーリア:親父
ユフィーリア:ちょっといいか?
オルトレイ:何だ、我が娘よ
オルトレイ:今ちょうど昼休憩中だからいいぞ
ユフィーリア:じゃあ親父さんやアッシュの旦那もいるのか?
オルトレイ:もしかしなくてもその通りだ
オルトレイ:何だ、どちらかに用事か?
オルトレイ:アッシュはともかく、キクガとは連絡先を交換しているだろうに
ユフィーリア:いや、出来れば2人をここに呼んでもらいたい
ユフィーリア:大人の力を借りたい
オルトレイ:ふむ、何かよく知らんが面白そうな気配しかない
オルトレイ:呼ぼう
――オルトレイがキクガを招待しました。
――オルトレイがアッシュを招待しました。
――キクガが参加しました。
――アッシュが参加しました。
キクガ:目の前で食事をしているのにわざわざメッセージに招待したと思えば
アッシュ:オルトんとこの倅じゃねえか
ユフィーリア:揃ったか?
ユフィーリア:実は今日、深夜の弁当屋でバイトしてて
ユフィーリア:何か深夜帯で働く奴がバックれたんだと
ユフィーリア:じゃあエドとやるかって話になってさ
オルトレイ:ほう、深夜の弁当屋
オルトレイ:そんな時間まで営業するか、普通?
ユフィーリア:24時間営業で、深夜に飯を買いにくる奴もいるんだよ
ユフィーリア:時給が23500ルイゼだった
キクガ:法外
キクガ:騙されてはいないか、それ
ユフィーリア:ちゃんと店長さんと確認したし、契約魔法も交わした
アッシュ:そんな高額で深夜にバイトを雇うって何か裏があるだろ
キクガ:まさか幽霊かね?
ユフィーリア:いや、単に暇だから連絡しただけ
ユフィーリア:店内清掃も終わったし
ユフィーリア:床なんかピッカピカだわ
ユフィーリア:何だったらエドが舐めてもいいぐらいに
【床でうつ伏せになって寝転がる巨漢の写真】
アッシュ:何してんだ、ウチの長男
ユフィーリア:深夜テンションテンション
ユフィーリア:とりまあげてこ↑↑
キクガ:深夜テンションになると、いつも常識的なユフィーリア君まで壊れるのか
キクガ:おそろしや
オルトレイ:何を言っている
オルトレイ:我が娘が正気だったことなんて今までで一度でもあったか?
オルトレイ:ねえよ
ユフィーリア:何だとこの野郎
ユフィーリア:アタシほど常識的な娘はいねえぞ
オルトレイ:寝言は寝て言え
オルトレイ:ていうか働け
ユフィーリア:ちょうど客が来たから接客してくるわ
ユフィーリア:面白い客だ
ユフィーリア:こいつァやべえ
オルトレイ:詳細
キクガ:お化けだろうか
アッシュ:そうなったら泣き叫ぶんじゃねえの
アッシュ:苦手なんだろ、幽霊
ユフィーリア:何とびっくり、首がないんスよ
ユフィーリア:それで深夜営業の弁当屋くるとか正気かな?
オルトレイ:どうやって食うんだろうな
アッシュ:ていうかどんな弁当を買うのか分からねえな
キクガ:どんな弁当を購入したのかね?
ユフィーリア:唐揚げ弁当
オルトレイ:首がないのに唐揚げ弁当を購入するとか阿呆か?
アッシュ:食いたかったんだろ、唐揚げ
オルトレイ:奇しくもオレと同じだし
オルトレイ:真似してんじゃねえ、幽霊如きが
ユフィーリア:手ェ叩いて笑ってる
キクガ:弁当はどうしたのかね?
キクガ:本当にお会計を済ませたのかね?
ユフィーリア:な訳なくない?
ユフィーリア:幽霊が金を払ってきたら、明日から幽霊を相手にカツアゲするわ
アッシュ:やるなよ、カツアゲなんて
ユフィーリア:首のないお客様が唐揚げ弁当をお会計しにきてですね
ユフィーリア:「あっためてください」なんて言うんだよ
ユフィーリア:お前、首ないのに温めた弁当を食うつもりか?
キクガ:まずは金を払いたまえ
キクガ:話はそれからな訳だが
オルトレイ:それはそう
ユフィーリア:接客中のエドが困惑を極めた
ユフィーリア:エド「あ、たため……?」
オルトレイ:人間の心を知った怪物みたいな反応やめれ
オルトレイ:笑うしかない
アッシュ:他人の息子を怪物扱いやめろや
アッシュ:実際そうだけども
オルトレイ:認めちゃうのは草なんだ
ユフィーリア:とりあえず弁当の中身を首のところに捩じ込んでおいた
ユフィーリア:バタバタしてるな
キクガ:出来立ては熱いから
ユフィーリア:魔法で温めたし、熱いはず
ユフィーリア:お帰りくださいませ〜
オルトレイ:それで帰ったのか
オルトレイ:飯を捩じ込まれて帰るか?
オルトレイ:怒れよ
キクガ:あとで冥府天縛で迎えに行く
ユフィーリア:こっちが怒っちゃった
ユフィーリア:あ、次の客だ
オルトレイ:深夜に意外と客は来るものだな
ユフィーリア:おう
ユフィーリア:今度は首だけの客がご来店だよ
オルトレイ:さっきの客の忘れ物ではないか
ユフィーリア:オムライスの温めをご希望ですな
ユフィーリア:もう冷たい身体なのに温めをご希望とか舐めてんの?
アッシュ:納得しちゃう自分がいる
アッシュ:悔しい
キクガ:そいつも回収に向かおう
キクガ:オルト、虫取り網を用意してほしい訳だが
ユフィーリア:生首を虫取り網で捕獲するの?
ユフィーリア:強くねえか?
オルトレイ:その生首どうした?
ユフィーリア:エドが顔面にアッツアツのオムライスを叩きつけてお帰り願った
ユフィーリア:エド「二度と来るんじゃねえぞバーロー!!」
アッシュ:逞しくなったな
オルトレイ:現実逃避してやがる
オルトレイ:見たかったな、その光景
ユフィーリア:お、ご希望ですか?
【筋骨隆々の巨漢が痩せこけた生首にオムライスを叩きつけた写真】
【オムライスをこびりつけたまま逃げていく生首に中指を立てる巨漢の写真】
オルトレイ:唐揚げが犠牲になりました
キクガ:吐くな、汚い
ユフィーリア:おじいちゃん、よく噛まなきゃダメでしょ
オルトレイ:お爺ちゃん扱いされるのは甚だ不本意
オルトレイ:せめてキクガの倅と子供をこさえてからジジイ扱いしろ
ユフィーリア:孫が出来たらジジイ扱いしていいとか何?
ユフィーリア:また客が来たな
オルトレイ:今度はどこだ?
ユフィーリア:足だけ
ユフィーリア:しかも泥だらけだよ
ユフィーリア:せっかく掃除したのに
オルトレイ:ウケる
キクガ:これで3体目か
キクガ:最近の魂魄回収係は怠慢だな
キクガ:ここいらでちゃんと調教をしなければ
アッシュ:調教ぐらいなら俺も出来るぞ
アッシュ:手伝う
キクガ:助かる訳だが
ユフィーリア:冥府の裏事情を見た
ユフィーリア:足だけの奴が買いに来たの、焼肉弁当なんだけど
ユフィーリア:エドが涎垂らしまくってる
オルトレイ:似たもの親子だなぁ
アッシュ:喧しい
オルトレイ:で、その焼肉弁当はどうするんだ?
ユフィーリア:エドが食いたそうにしていたから横流しした
ユフィーリア:足だけの奴がその場で足を踏み鳴らしている
ユフィーリア:怒りを表現してんのかな、これ
オルトレイ:器用な奴だな〜
オルトレイ:ざまあみろ
オルトレイ:足だけの奴が焼肉などという豪勢なものを食えると思うなよ
オルトレイ:あれか、踏みつけるつもりか?
アッシュ:食べ物を無駄にしてんじゃねえ
キクガ:ちゃんと回収しなければ……
ユフィーリア:まさか24時間営業してるのって、夜中は幽霊が弁当を買いに来んのか?
ユフィーリア:こぞって?
ユフィーリア:資源の無駄じゃねえか
キクガ:寄ってくる連中は全員回収しよう
キクガ:アッシュとオルトも手伝ってほしい
アッシュ:あいよ
オルトレイ:うむ、よかろう
ユフィーリア:もういいわ、店じまいしよ
オルトレイ:む?
キクガ:店じまい?
ユフィーリア:弁当が無駄になるだけだから、エドに全部食わせた
ユフィーリア:なくなるのもあっという間でしたね
ユフィーリア:店長から給料だけふんだくって帰ろう
オルトレイ:さすが我が娘だな
オルトレイ:飯食ったら回収に行くか
キクガ:ああ
キクガ:裏どりも取れた訳だが
アッシュ:テメェらが夜中まで起きてる訳ねえんだよな
アッシュ:偽物がよ
ユフィーリア?:バレたか
――???が退出しました。
オルトレイ:逃がすか、娘に化けやがった不届きものが
アッシュ:ウチの息子にも化けやがってこの野郎
キクガ:逃がす訳がない
《登場人物》
【オルトレイ】冥府総督府呵責開発課の課長。魔法の秀才を自称するほど魔法の才能があるのだが、中年ながら高い身体能力も併せ持つ文武両道を地でいくユフィーリアの実父。昼食はよく「その日のおすすめ」と銘打たれたものを注文する。
【キクガ】冥府総督府、冥王第一補佐官。魔法の才能はないが知識だけは一級品。魔法以外の知識と毒舌は他の追随を許さないが仕事を抜かせば天然が入るショウの実父。昼食はよく麺類を注文する。この日は汁なし坦々麺。
【アッシュ】冥府総督府、獄卒課課長。魔法の才能の代わりに筋力・身体能力に特化した獣人。多くの部下を束ねるカリスマ的存在であるエドワードの実父。昼食は肉料理をよく食べる。
【ユフィーリア】酒盛りをしている、第七席の仕事をしている以外は超健康優良児。この日もちゃんと深夜前には寝ていたので幽霊騒動を知らない。メッセージに掲載された写真も何か見れなかった。




