【不思議、種明かし、何でもなし】
ハルア:エド、聞いて!!
ハルア:ヴァラール魔法学院の七不思議だって!!
ハルア:リタから聞いたんだ!!
ショウ:リタさんも先輩から聞いたみたいですが、代々受け継がれている怖い話のようです
エドワード:そんなのあるんだ
エドワード:俺ちゃん、創立当初からいるけど聞いたことないな
エドワード:どんなの?
ハルア:まず1個目、教室に浮かぶ鬼火!!
ショウ:深夜に忘れ物を取りに行った生徒が、教室で鬼火が浮かんでいるのを目撃したらしい
ショウ:噂では魔法の授業で命を落としてしまった生徒の怨念がいるとか
ハルア:2個目、魔法工学室で動き回る人形
ショウ:魔法工学室では夜な夜な人形が奇声を発しながら歩き回っているようだ
ショウ:実際に歩き回っている姿を見たという生徒もいる
ハルア:3個目、誰もいないのに動く魔導書
ショウ:魔導書図書館では誰もいない時間帯になると、魔導書が勝手に本棚から飛び出したり動き回ったりするらしい
ショウ:人がいる時には起きることはないようだ
ハルア:4個目、墓を掘り返す死神
ショウ:死者蘇生魔法の授業で使う墓地を掘り返す、髑髏の仮面をつけた長身の男がいるようだ
ショウ:目を合わせると命を取られるとか
ハルア:5個目、桜の守護者
ショウ:植物園にある雪桜を白い狐が守っているらしい
ショウ:誰も雪桜に近づかないように威嚇してくるようだ
ハルア:6個目、保健室のすすり泣き
ショウ:保健室で夜な夜なすすり泣く声が聞こえてくるらしい
ショウ:どうやら保健室で亡くなってしまった生徒が、自分の病気を嘆いているとか何とか
ハルア:7個目、校舎のシザーマン
ショウ:深夜、校舎内を巨大な鋏を持った男が徘徊しているらしい
ショウ:見つかったら最後、首を切られてしまうようだ
ハルア:ね、怖いでしょ!!
ハルア:オレ、これ本当か確かめたい!!
ショウ:エドさんも一緒にどうですか?
ショウ:一緒にヴァラール魔法学院の七不思議を解き明かしましょう
エドワード:あー、うん
エドワード:ごめん、無理
ハルア:え!?
ショウ:何でですか!?
エドワード:だって七不思議の正体が分かっちゃったからね
エドワード:楽しめないよ
エドワード:どこが怖いの、こんなの
ショウ:エドさん分かっちゃったんですか!?
ハルア:まさか天才!?
エドワード:むしろこんなの信じる純粋無垢なお前さんたちが心配だよ
エドワード:じゃあ1個目から説明していくね
ショウ:よろしくお願いします
ハルア:オナシャス!!
エドワード:まずは1個目の教室の鬼火なんだけど
エドワード:多分これ学院長だね
ショウ:学院長なんですか?
エドワード:ウチの学校って、夜9時以降になると校舎内の明かりが強制的に消えちゃうんだよね
エドワード:つけることも出来なくなっちゃう
エドワード:消費魔力が無駄だからそうやって設計したみたい
ハルア:じゃあ何で学院長なの?
エドワード:夜遅くまで仕事してるんだろうね
エドワード:明かりが消えちゃうから炎の魔法か、あるいは光源魔法でも使ってんじゃない?
エドワード:それが鬼火に見えるんでしょ
ショウ:何だ、学院長が原因か
ハルア:何かガッカリ
エドワード:じゃあ2個目ね
エドワード:魔法工学室って言ってるから、これ絶対に副学院長だね
ショウ:そうなんですか!?
エドワード:むしろそれ以外になくない?
ハルア:本当にいるかもしれないでしょ!!
ハルア:西洋人形とか
エドワード:少なくとも生徒が授業をするような場所でそんなもんを見かけたことはないよ
エドワード:動き回ってるのはあれだね、副学院長が組んだ警備用魔法兵器
エドワード:奇声ってことは威嚇されてるよ、それ
ハルア:威嚇
ショウ:威嚇……
エドワード:はい次、3個目
エドワード:これルージュ先生がものぐさなだけ
エドワード:魔法で読みたい本を取ってきてるだけだよ
ショウ:本当に動くかもしれないではないですか
エドワード:本当に動くんだったら上級の魔導書だから、少なくとも魔導書図書館の見えるところには転がってないね
ハルア:確かにそうだね
ショウ:ユフィーリア、いつも言ってますもんね
ショウ:危ないものは見えないところにしまってあるって
エドワード:どんどんいくよ、4個目
エドワード:仕事中のキクガさんです
ショウ:父さん何しているんだ
ハルア:何でショウちゃんパパは墓荒らしみたいな真似をするの?
エドワード:弔い方がなっていないんだってさ
エドワード:そのせいで死者蘇生魔法が上手く発動されないから、自分でやり直してるんだって
エドワード:「最近は雑な弔い方で溢れてきた」って嘆いているね
ショウ:父さん、紛らわしいことを……
ショウ:でも仕事だから仕方がないのか……
ハルア:どんまい、ショウちゃん
エドワード:5個目ね
エドワード:これは八雲のお爺ちゃんだね
エドワード:酒盛りでもしてるんでしょ
ハルア:雪桜を守ってないの!?
エドワード:守ってるよ、多分
エドワード:あれは八雲のお爺ちゃんがわざわざ極東から接木してきたぐらいだしね
エドワード:よほど大切なんでしょ
エドワード:でも全裸で守ってるのはよくない、完全に野生に帰ってる
ハルア:あれ野生に帰ってんだ
ハルア:脱ぐまで飲んだんだ
ショウ:救えない大人だ
ショウ:あれって大人と呼んでもいいのか?
エドワード:6個目ね
エドワード:夜な夜な泣いているリリアちゃん先生です
ショウ:何でまた泣いているんですか
ショウ:やはりご家族の方が……?
エドワード:いや単純に胸の成長が乏しくて泣いているみたい
エドワード:どれだけ努力しても大きくならないって
エドワード:言わないであげてね、傷ついてその場で泣き出すよ
ハルア:言わないよ、絶対に
ショウ:これは言えませんね
エドワード:最後の7個目ね
エドワード:完全にユーリだね
エドワード:第七席の仕事中だよ、これ
ショウ:ユフィーリアは女性じゃないですか
ショウ:何で男と間違われるんですか
エドワード:面隠しの外套が姿を曖昧にさせているからね
エドワード:あれのおかげでユーリの身長が男性の平均的な身長ぐらいになって、男の人に見えるんでしょ
ハルア:何だ、七不思議って意外に呆気ないね
ハルア:これ聞いた時は絶対に確かめてやろうって思ったのに
ショウ:本当です
ショウ:エドさん空気読んでください
エドワード:え? 俺ちゃんのせい?
エドワード:こんな阿呆な話を信じるお前さんたちが悪いんでしょ
エドワード:特に7個目なんてすぐに分かるじゃんね
ハルア:男って聞いたからユーリとは違うかなって思ったんだよ
ハルア:本当にそうだとは思ってなかった
ショウ:ユフィーリア以外に鋏を使う人物がいるものだと
エドワード:いないよ
エドワード:鋏で戦う奇特な人物なんてユーリ以外にいないよ
ハルア:ちぇー
ハルア:七不思議の探検に行きたかったな
ショウ:夜の学校ってワクワクするじゃないですか
ショウ:エドさんもよかったらと思ったのに
エドワード:良い子は早く寝るんだよ
エドワード:大きくなれないよ
ハルア:それはやだ!!
ショウ:やです!!
エドワード:うん、いい反応
エドワード:ところで
エドワード:ショウちゃんとハルちゃんは今ね、俺ちゃんのお膝の上でこのチャット画面を一緒に見てるんだよね
エドワード:本人たち、魔フォーンには一切触ってないしね
エドワード:そんなメッセージも送ってないんだよね
エドワード:お前さんたち、誰?
ハルア?:あーあ
ショウ?:連れて行けると思ったのに
――???が退出しました。
――???が退出しました。
エドワード:マジモンじゃんね
エドワード:怖
《登場人物》
【エドワード】目の前で後輩の2人が遊んでいるのにメッセージを受信したから、3人で観戦して遊んでいた。七不思議なんてけったいなものはないでしよ。
【ハルア】何か知らない自分がエドワードと会話しているので戦慄。怖いね。
【ショウ】魔フォーンを使っていないのに自分がエドワードとメッセージ上で会話していたので戦慄。もちろん、魔フォーンを操作した記録すらない。




