【誤字と自由と度胸がありすぎて天元突破】
キクガ:迷った
キクガ:誰かね、冥府転移門の座標をいじった奴
オルトレイ:オレ
キクガ:帰ったらタコ殴りにスリランカ
オルトレイ:誰よその女!!
キクガ:指が滑った
キクガ:あと女ではない
オルトレイ:うん知ってる
オルトレイ:お前が女の名前を出すのはオレも知ってる人間に限られるからな
オルトレイ:スリランカなんて名前の女が居て堪るか
キクガ:本当にいたらどうするのかね
オルトレイ:「お前の名前、冥王第一補佐官がいじっていたぞ!!」と言いふらす
キクガ:どうでもいいが脱線しないでもらいたい訳だが
キクガ:行き先をどこに設定したのかね
キクガ:信じてたのに
オルトレイ:メンヘラみたいになるの止めろや
オルトレイ:怖いんだよ
オルトレイ:ちょっと待て、座標を確認するから
キクガ:そもそも何でこんなことになったのかね
オルトレイ:何故だと思います?
キクガ:面白がったからかね?
オルトレイ:実はですね、先日開発しました魔法兵器なんですけどね
オルトレイ:お前がオレを脅してきたアレですけども
キクガ:覚えている
キクガ:罪人の自動追尾機能など便利なものをよく作ってくれた訳だが
オルトレイ:あれの提出期限、1週間後だったんだよ
オルトレイ:まだ猶予があったし、きちんと計画を立てて進めていたんだよ
オルトレイ:なのにお前が急に「あの計画はどうなったのかね、まさかサボっている訳ではあるまいな」とか仰るから予定を前倒しした訳だよ
オルトレイ:おかげで3徹だわ畜生め
キクガ:なるほど意趣返し
キクガ:これは甘んじて受け入れるしかあるまい……
キクガ:申し訳ナイジェリア
キクガ:また指が滑った
オルトレイ:お前の誤字は何なん?
キクガ:君に張ってもらった保護シートが思った以上にサラサラと滑る
オルトレイ:お前がツルツルしたのは嫌だと言ったからだろうが
オルトレイ:オレのせいにすな
オルトレイ:あと行き先判明したぞ
キクガ:どこかね
オルトレイ:ヴァラール魔法学院の魔法動物飼育領域とあるな
キクガ:む
キクガ:ではユフィーリア君に言えば迎えに来てもらえるかね
オルトレイ:だろうな
オルトレイ:娘なら知っとるだろ
オルトレイ:はい解決
キクガ:何かあったな
【森の中にポツンと立つ鉄柵】
【鉄柵に括り付けられた大量の鈴と紙縒】
キクガ:オルト、何か分かるかね
オルトレイ:呪詛系の何かだってのは分かる
オルトレイ:にしても夥しい量の紙縒と鈴だな、何かを封印しているのか?
オルトレイ:気になる
キクガ:ちょっと登ってみる
アッシュ:おいこら
アッシュ:休憩時間にいきなりホラーな写真を送りつけてくるんじゃねえ
アッシュ:魔フォーンを投げただろうが
オルトレイ:休憩中だったか
オルトレイ:今オレは冥王様の椅子を改造しているところだ
アッシュ:仕事しろよ
オルトレイ:戯けが、有休消化に決まっているだろう
オルトレイ:有休消化で娘に会いに行こうかなといそいそ準備をしていたら冥王様から泣きつかれてな
オルトレイ:冥王様「椅子が壊れた!! 直してほしい!!」
オルトレイ:オレの渾身の舌打ちを聞くか?
アッシュ:悪かったよ
キクガ:帰ったら言い聞かせておく
キクガ:目玉も抉っておこう
オルトレイ:いやそれはもうやったから別の奴で頼む
オルトレイ:今は椅子に棘をつけてる
オルトレイ:電気も流せるようにしちゃお
キクガ:もうやったのかね
アッシュ:頭のいい戦闘狂って呼ばれてるエイクトベル家の当主に喧嘩を売るのが悪い
アッシュ:この前ウチの若いのがオルトに喧嘩を売って、真っ向から殴られて平伏してた
アッシュ:細いのにどこから出るんだ、そんな力
オルトレイ:気合いと根性
キクガ:鉄柵の中に入ってみた
キクガ:思った以上に暗い
【薄暗い森の写真】
オルトレイ:なかなか広いな
オルトレイ:それと鉄柵の外と内側では明度が違いすぎる
オルトレイ:おそらく別次元だろうな
キクガ:凄いな、写真しか送っていないのに
アッシュ:何でそこまで予想できるんだよ
オルトレイ:簡単だろうが、魔法を勉強していれば
オルトレイ:それよりもキクガ、他には何かないか?
キクガ:6本の木に注連縄が巻き付けられていてな
キクガ:凄いな、注連縄が6本も用意されている
キクガ:おそらく上から見ると六角形になっているのでは?
アッシュ:何でそんなもんがあるんだよ
キクガ:こちらが聞きたい
キクガ:何なのだろうか
オルトレイ:さあな
オルトレイ:注連縄ということは、何か怪物を鎮めている可能性が高い
オルトレイ:呪いを振り撒く類のものだろうな
キクガ:さすが魔法使い
アッシュ:こいつがこんなに冷静なの笑うな
オルトレイ:何だとこの野郎
キクガ:ところで、この注連縄の中心に箱が置かれている訳だが
オルトレイ:どんなの?
キクガ:家紋だろうか
キクガ:箱にびっしりと描かれているな
キクガ:箱が動かない、地面に縫い留められているようだ
オルトレイ:そんなにガッチリ留める必要はあるのか
アッシュ:知らねえよ
アッシュ:その箱、蹴飛ばしてもダメなのか?
キクガ:持ち上げても無駄なのだから蹴ったところで結果は同じな訳だが
キクガ:ふむ、中身はマッチと瓶のようだ
オルトレイ:どんな感じだ?
キクガ:箱の四隅に置かれている
キクガ:マッチは先端の部分が赤く塗られていて、その赤い部分が接している感じだ
キクガ:何だろう、この置き方は
キクガ:『く』の文字と『W』の文字を組み合わせたような
オルトレイ:特殊な形だな
アッシュ:何でそんな冷静でいられるんだよ
アッシュ:テメェが怖いわ
キクガ:普段から死人を相手に裁判をしているからな訳だが
キクガ:暗いしマッチを拝借しよう
アッシュ:あかんやつ
オルトレイ:面白い
オルトレイ:いいぞもっとやれ
アッシュ:やるなやるな
キクガ:とりあえずマッチを擦って火をつけてみた
キクガ:鈴の音がうるさい
キクガ:マッチを拝借した時からちりんちりんちりんちりん
キクガ:頭がおかしくなる
オルトレイ:苛立ってるな
アッシュ:いつになくな
オルトレイ:苛立つ時こそ甘いものだろう
オルトレイ:この前寝れなくてマドレーヌを焼いたからお前の部屋に置いておくからな、キクガよ
アッシュ:俺には?
オルトレイ:おチビチビズにやったからないわ、戯け
キクガ:女の人がいた
【ボサボサ髪に左右3本ずつ腕を持った上半身裸の女性の写真】
キクガ:寒そう
オルトレイ:思った以上にやべえ写真だった
アッシュ:声出たわ
アッシュ:「きょぺッ」みたいな声が出て部下に心配されたわ
キクガ:すまないな
キクガ:とりあえず冥府天縛で縛ってみた訳だが
【先程の怪物女が簀巻きになっている写真】
キクガ:どうしたらいい?
オルトレイ:この写真を娘に送ってみたら「かんかんだらじゃね?」と返ってきた
オルトレイ:どうやらお前の息子に聞いたらしいぞ、キクガよ
キクガ:焦った様子の息子から通信魔法が飛んできた
キクガ:息子「父さん、今どこに!?」
キクガ:私「はて、ここはどこだろう……?」
キクガ:息子「何でかんかんだらのいるところに入ってしまったんだ!?」
キクガ:私「面白そうで、つい」
キクガ:魔フォーンの向こう側で何かが崩れ落ちる音を聞いたな
オルトレイ:それ息子が膝から崩れ落ちてんじゃね?
キクガ:それは大変だ
キクガ:あとで様子を見に行くとしよう
オルトレイ:その女、下半身はどうなってる?
オルトレイ:なんでも、下半身を見るとまずいらしい
オルトレイ:死ぬとか言ってるな
キクガ:腰から下は蛇だな
キクガ:あと死人に「死ぬ」とか言われても
アッシュ:本当だよ
アッシュ:呪いとか通用しねえよな
オルトレイ:お前、この前人魚の呪いにかかったとか言っていたが?
アッシュ:前言撤回
アッシュ:お祓いしてもらえ
キクガ:特に何ともない訳だが、まあユフィーリア君に頼む
キクガ:それよりもこの女はどうしようか
アッシュ:持って帰ってくんのか?
オルトレイ:持って帰ってきたらそいつを題材にして魔法兵器を作っていいか?
オルトレイ:ムカデみたいにしてやる
キクガ:では持って帰るとしよう
キクガ:オルト、すまないが冥府転移門を呼んでくれ
キクガ:この女を引きずって鉄柵は登れない
オルトレイ:そう言うと思ってすでに起動しておいた
オルトレイ:ちゃんと現れたか?
アッシュ:本気で持って帰ってくるつもりかよ……
アッシュ:テメェんとこの息子も慌てるぐらいやばいってのに
キクガ:先程からビチビチ跳ねるものだから蹴飛ばしてやったら大人しくなったな
キクガ:持って帰る
オルトレイ:気をつけろよ
アッシュ:オルト、何で平気なんだよ
オルトレイ:この状況、楽しまんでどうする?
アッシュ:クソが
オルトレイ:お、帰ってきたみたいだな
オルトレイ:さて、オレは魔法兵器の設計に入るか
アッシュ:俺のところで実装すんなよ
オルトレイ:はにゃ?
アッシュ:首が千切れるまで殴る
キクガ:ただいま
オルトレイ:おかえり
アッシュ:おかえり
《登場人物》
【キクガ】現世に仕事で来たら冥府転移門の誤爆に巻き込まれた。三徹状態のオルトレイに行き先を任せたのが悪いが、元を辿れば自分が悪い。反省はちゃんと出来る。
【オルトレイ】三徹の末、冥府転移門の座標の設定までやらされて意趣返しに適当な場所へ設定した。反省する時はするが、しない時が多い。
【アッシュ】基本的にオルトレイの自由な発想に巻き込まれる。自分が悪かったどころか部下の不始末にも頭を下げる上司の鑑。




