第28話「罪と罰とレーザーと」
「……………………よぉ。クソライトさんの御帰還だぞぉ?」
ニィィィイイ……!
「な、なななななな……」
驚きすぎて語彙力の失せたアグニール。
くっくっくっ、
ふひひひひひ、
──うひゃはははは! いーい顔してやがるぜッ!
なぁ、会いたかっただろぉ──アグニール!
「お、おま──ど、どうやって」
ふっ。
「──……墓場から帰ってきたぜ」
アグニーーーーーーーーーーーーール!!
凄惨な笑みを浮かべるライト。
「ば、バカな! 馬鹿な!! 馬鹿なぁぁぁああ!」
あ、あああ、ありえん!
「ありえんだろぉぉおお!!」
な、ななな、なんでお前がぁぁぉぁあ!!──と声なき声で絶叫するアグニール。
そして、勝手に追い詰められてドンッ! とカウンターに背中をつくと、
そのまま、ぱっかー……! と口を開けてアホ面をさらしたアグニール。
なんたって、まさかまさかの帰って来て早々の再会!
しかも、予想以上のタイミングだ。
最悪の場合、すれ違うかと思っていたら────これだ。
ヒューーーーー!!
……た~まんねぇぜ!!
さーて、どうしてくれようか────……ドンッ!!
「ぐぇ!!」
舌舐めずりをせんばかりのライトの腰に凄まじい衝撃!
い、息が……。
「ラ、ライトさん!! ぶ、無事だったんですね?!」
ひしっ……!
メリメリメリ────あががががががが!!
「ぐ、ぐふぅ……」
でるでる!
出ちゃう!!
「……ッて?!」
びっくりしたー。
「メ、メリザさんか……?」
や、やめてねよ!
確か、アナタ戦士系統でしょ?! 魔法使いとは根本的にパワーが違うんだからぁぁ!
……うわー。血ぃ出てるし。
下手すりゃ内臓出るとこだったわー。
「ああ、よかったー。帰還予定を過ぎても帰らないので、さっきからこの人らが、クソライトのせいで服が燃えたとか、モンスターに襲われたとか、失敗した責任をとれとか、無茶苦茶言うんでもしやと思ってたのですが──」
「はぁ?」
ほほう。
そんなこと言ってたのか──。
「ほんっとに無事でよかったですー……って、あれ?」
ちょっと待てよ? と首を傾げるメリザさん。
何やら思案しているが、それはアグニール達にとって致命傷だろう。
「え、すると……アグニールさん達は、もしかして虚偽──」
びくっ!!
「う………………。って、ごらぁぁぁあ!! 急に出てきて、なんだお前は!!」
あ、ようやく再起動したらしいアグニールが、慌ててメリザとライトの間に割ってはいり、むぎゅ!! とメリザさんをカウンターのほうに押し込んだ。
「ちょ、ちょとっぉおお! なにすんのよぉ」
「すっこんでろ!……っていうか、よぉぉお……! 誰だテメェ!!」
あ゛?!
言うに事欠いて、ライトを不躾に指差すアグニール。
ほんっと、コイツは……。
「おう、なに言ってんだ? ゴラっ! さっき、お前が紹介してくれてただろうが──……そうさ、お前のとこに雇われてた、クソライトさんだが? 忘れたのか? 大魔術師さんよー」
小馬鹿にした表情でアグニールを見るライト。
なんだろう……。
【全属性】を、持つというアグニールがちっとも怖くない。
周囲でパクパク口を開いているサーヤやクッソ神父についても同様だ。
──そうか。
もしかすると【光線属性】はこいつ等よりも強いのかもしれない。
「ば、ばかな?! バカな! あ、あ、ありえない! お、お前がどうしてぇ?! い、いや! 待て! おかしいだろ!──あり得ないだろう?! なんで、ライトがここに──?! い、いや、。馬鹿も休み休み言え!! あ、あ、あり得ねぇから!! お、お前誰だよ!! っていうか、お前……本物かぁぁああ?!」
おーおー。動揺してるしてるぅ!
言わんでもええこと、勝手に囀ってくれるぜぇ!
「う、嘘ぉ?! ライトあんた、あの時に置き去──!」
「チョッ?! ちょちょちょ! サ、サーヤさん何言うつもりですか?! アグニールさんも!!」
勝手にボロを出していくスタイルのアグニールとサーヤ。
「え? え? オマエとか? 本物とか? お、置き去り?? え? え? え??」
その様子にメリザさんの顔が段々険しくなるも、まだ誰もも気づいていない。
「ふっ」
どうして?
ありえない??
「お、お、お、お、お、──おまッ! お、お前がどうしてぇ?!」
あ゛あ゛あ゛ん!!
「はは! どうしてだぁぁぁああああ?!」
かッ!!
笑わせる。
「そんなもん、テメェが一番よくわかってんだろうがぁぁぁああ!」
アワアワと動揺しまくり、まるで幽霊でも見たかのような顔の3人。
くくく、この顔、この顔ぉ!
「はっはっはっ! 見ての通り『足』はついてるぜぇ」
ふはははッ、アンデッドの巣窟に置いてきたんだもんなぁ! ワンチャン幽霊になっててもおかしくはないよなぁぁああ!
「くっ!」
──だが、おあいにく様ぁぁぁあ!
「俺は生きてるぞぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」
……ジャキンッ!!
指鉄砲を作り、アグニールに突き付けるライト。
「だからよぉ、」
……キュィィィィイイン!!──指先に集約していく光の波動!
すぅ……。
「──落とし前をつけにきたぜぇぇぇええええええええ!!」
おらぁぁっぁあああああああ!!
それこそレーザー!
これぞ、レーザー!!
「な、ななな、なんのマネだ?! て、テメェの魔法なんざ!」
はっ!
…………………………そう思うなら──試してみろやぁぁぁ!!
俺の魔法は、すで光にあらず!
……そう!! もはや、光線!!
最強の光線魔法である!!!
だから、その味をぉぉぉおおおお!
──キュウィィィイン、
イン、イン、イン、イン、インンンン……────!
光が指先に収束し、次第に熱を帯びる。
もちろん、ただの脅しではないと知らしめるためにも最大出力!! 最大熱量! 最大威力!! 最大魔力!!!
「な、なんだ?! この魔力は?!」
フワァ……と、床の小石や埃が帯電し、浮かび上がるほどの魔力の奔流。
さすがにその様子に、驚愕するアグニール。
だが、知らぬ!! 知らんから、容赦なくその顔面に指先を突き付けてやる!!!
「あははははははは!」
このまま、パキューーーン!! と発射すれば、どれほど気持ちいいか!!
きっと、一発でボンッ!! だ!!
「ちょっとちょっと、ライトさん!? なにするつもりですか?!」
ああん!?
見りゃわかんだろうが!!!
レーザーぶっ放すんだよぉぉ!!!
──今更ながら、メリザさんが焦りを帯びた声をあげるも、今は邪魔だ!!
今、ここで、今、この瞬間こそが、今が、最高なんだよぉぉ!
「はははは、あははははは、わははははははは!!」
おあつらえ向きに、サーヤとクッソ神父までいる!
なんか知らんが全員ボロボロでひどい悪臭を放っているが、構うものか!!
──全員、まとめてぶっとべやぁぁああああ!!
ヴン…ヴン………!
ヴヴヴヴウゥゥゥ────!!
指先に収束する光の奔流が輝いて止まる!!
それは一瞬煌々と輝くも、ついには小さな光の球となって指先数ミリ先に浮かんで震えて、止まる────あとは!!
……あとは撃つのみ!!
撃•つ•の•み!
「死ねよ、アグニール」
「ああん!? 舐めてんのか! 雑魚野郎が!」
はっ、雑魚かどうか!!
思い知らせてやらぁぁぁああ!!
──カッ!!
ライトの脳裏は一瞬にして殺意に塗りつぶされていた!
ちょっと前までは殺せないとか、
ぶっ飛ばすだけとか色々考えていたが──……。
ギルドで奴を見た瞬間、まさに一瞬のことだ!!
ギルド?
殺人の禁忌?
アグニールぅぅぅうう?!
──知るか!!
「……知・る・かぁぁぁぁああああああああああああああ!!」
魔力充填、最大!!
最強出力──向上ッッッ!!
「そのムカつく面の中心にぃぃいい!」
熱量最大、光量最大、範囲最大、射程最大、威力最大、射撃持続最大、収束率最大、射速最大、最大、最大、最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大最大ッッッ!!
最大中の、最大ッッ!!
──レーザー叩き込んでやらァァ!!!




