第26話「寄り道と……」
ガラン、ガラ~ン♪
「……か……よ」
「……う、ん?」
店を出たライト。
背中の荷物の重さはほとんど変わっていないが、左手にヤミー。
右手にお財布──……金貨11枚。
「……ジ、かよ」
「ジか、よ?」
きょとんとしたヤミーに。
すぅぅ、
「──マジかよぉぉぉぉっぉおおおおおおおお!!」
き、き、き、金貨11枚ぃぃぃぃいいいいいいい!!
うぉぉぉお!! マジかよマジかよマジかよぉぉぉおお!!
「なななななななーーーー!! お、おいおいおいおいおいおいおい、どっどど、どーすんだよ、こんな大金────なぁ、ヤミー!」
「かねー」
にっ。
うん。
いい笑顔するじゃねぇか、ヤミー。
よっしゃ! その笑顔に免じて──。
「なんでも、好きなもん食っていいぞぉぉぉおおおおお!!」
そして俺も食う!!
「お、おー」
さすがに、ライトの豹変っぷりに、ちょっと怯えているヤミーではあるが、
大金のハイテンションのまま、ライトはヤミーを抱え上げ、そのまま、怪しい錬金術のある路地から屋台街に行く道へと突っ込んでいく!
うぉぉぉおおおお!!
ドダダダダダダダダッダ──!!
そして、なんだなんだと見守る人々をかき分けるようにして、再びの喧騒に。
そうして、元の屋台に戻るべく、道を少し戻ったライト達は、そのまま、屋台街に飛び出していく!
「そぉい!!」
「そ、いっ」
ヤミーにはハイテンションの意味が分からないといった感じだが──まぁ、ライトが嬉しそうなのでつられて笑う。
「ははは」
「あ、は」
よっしゃ!
その笑顔のまま──なんでも、くぇい!!
まずは、さっきのからだな!
「おい、おっさん!」
「へい、毎度!」
一件目、クレープ屋──。
「ふ……。この店で一番高いやつをくれッ」
にやっ。
きらーん♪
「…………………へい。銅貨5枚を二つでいいでやんすね」
おう。
ちゃりーん♪ と、金貨で支払うと、目ん玉向かれたが、おつりに銀貨9枚と銅貨90枚をもらう。
「よーし、おごりだ食え食え!」
「くう!」
ヤミーと手を繋ぎながら、さっきヤミーがご所望の品──一件目のクレープを手に入れ二人で頬張る。
肉と小麦の優しい香り──。
あーん……!
──がぶっ……………!!
もっしゃ、もっしゃ……。
「うま!」
「んまッ」
ニコッ。
ヤミーの笑顔。
いいねいいね! その笑顔100点!!
だけど、
「……おいおい、口の周りがすごいぞ」
「……ん???」
よくわかっていないヤミーをみて、
口に回りをどろどろにしているクレープのソースを、指ですくって舐めてやる。
ぺろ。
あ、ソースうま!
「よし、ほかにも食いたいもんあったら言えよ?」
「はーい」
2件目はなんだっけ──串焼き?
いいぞいいぞ。
なにせ、ライトさん、金貨もちだからねぇ!!
「あーっはっはっは!」
よっしゃぁぁ、どっからでもかかってこい!!
「おばちゃん!! 串焼き、持てるだけ!! 一番高いやつを中心にな」
きらーん♪
「…………………………銅貨15枚ね」
ふっ、よゆーよゆー!!
そう言いながらも、さっそく買った串焼きをもぐもぐ。
……うむ、脂がのっててうまい!!
「んまい!」
そして、3件目!!
麦のかりんとうだー。
「一番高いので頼むよ──」
「…………一袋、銅貨3枚ですが、それでよろしゅうおます?」
おうよ!!
ちゃり~ん♪
銅貨6枚でお買い上げ────うむ!
ポリポリのサックサクで、うまーい!
「うまーい」
ヤミーも大満足。
それでも、まだまだ食べたりないのか、あっという間にペロリと平らげると、次なる屋台を目指すヤミー。
いつの間にか攻守交替。
ライトの手をひいてグイグイと。
「まぁ、まてまて、おちつけ──屋台は逃げないぞ」
通りすがりに、銅貨2枚払って、シードルを2つ購入して、ヤミーにやると、口の周りをベトベトにして、一気に飲んでしまう。
ライトも一口。
「んんま!!」
「んま、い」
微炭酸なのか、淡く発砲しているシードルの優しい香りが鼻を突き抜けて旨い!
さて、
「ん? つぎはそれか?」
「ん! ん! ん! ん!!」
まだまだ食べるとばかりに、
──シュババババ! と4連続で指をさす。
OKOK、どっからでもかかってこい──。
「おっさんとおばさんとおにいさんとお姉さん──」
ニヤリ、
「この店で一番高いやつを」
「「「「………………銅貨30枚になりやすー」」」」
つーか、一番高くても、所詮は屋台のもんだっつーーーーーーーーの!! という店主たちの心の声はする~っとスルーし、大満足のライトとヤミー。
うむうむ!!
サクッと割ったバゲットにプリップリのソーセージを乗せたやつに、さっと胡椒を一振りしたホットドッグ×2、
カリッカリに焼いたパン生地に、ジュグジュグと溶けたチーズが躍動的な赤茄子ソースの鮮やかな一口ピザ×2、
葉っぱを皿にした、キノコとニンニクとハーブで香りをつけた、オリーブオイルで絡めたミニスパゲティ×2、
バターたっぷり、干果実をふんだんに散らした、フワフワのパンケーキ×2、
合計銅貨30枚なりー。
「うま! うま!!」
「うまー♪」
もっもっも。
二人して口をパンパンにして食べる。
途中で、ライトはエールを、ヤミーには果実水を。
飽きることなく、モリモリ食べて、腹ポンポン!
「ふー」ポンポン
「ふぅ」ぷっくり
シュバ!
「む、まだ食えるのか? 腹めっちゃポッコリしてるぞ」
「うー」
ヤミーが最後に求めたのが、
「シチューか」
その場で食べるシチューで、屋台売りではなく、店先で立ち食いするタイプの奴。
「よし、あれで最後にしとこうぜー」
「こくこく」
素直に頷くヤミー。
店のおばちゃんは、ライトの山盛りの背嚢を訝しく思いながらも、小さなヤミーには愛想よく笑いかける。
どうやら、最後の一杯らしい。
「あー……この子の分だけでいいです」
「あいよ。悪いから──水おまけしとくよ」
あ、どーも。
普通に買えば、水だってタダじゃないからね。
ライトは水を受け取り、ヤミーはシチューの入った器を受け取る。
それを嬉しそうに、ゆっくり食べるヤミー。
中身は何だろう?
川エビと、煮崩れた野菜と──……。
「キノコと燕麦が入ってるよ。ウチはこれしか出さないからね」
あ、さいですか。
いわゆる家庭の味なのだろう。
ライトでも再現できそうな簡易さがいい。
「ん」
それを半分だけ食べると、ライトに差し出すヤミー。
「あらあら。お兄ちゃんと分けっこですって」
「あ、いや」
お兄ちゃんじゃないけど──ま、いいか。
「いいから、全部食いな」
「ふるふる」
分けるって?
「センキュ」
それ以上ライトも固辞することなく、シチューを食べる。
正直腹いっぱいだが、これくらいならまぁ……あ、うまいわ。
「ごっそさん」
「あぃ、よろしゅうおあがり──」
どこの挨拶だよ……。
たっぷりと買い食いしたライト達は満足して、露店をあとにするのだった。
「いやー。文明最高だわ」
「さいこー」
うんうん。
野営飯も悪くないけど、やっぱ街で食う飯が一番うまいな。
バリエーションも豊富だし──。
「こくこく」
ふふ。
「また行こうな──」
「こくこくこく!」
そうしてヤミーと手をつないでギルドに向かうライト。
腹が膨れれば、気持ちにも余裕ができる。
大荷物のまま、ぱんぱんに膨れた腹を抱えてライトは、上機嫌のままギルドのドアをくぐって中へ。
なにやら、人だかりができていたが、気づかずそのまま……。
ふっつ~の感覚でギルドに入るライト。
「ただいま戻りました~」
「ましたー」
カランカラ~ン♪
いつもは言わない挨拶も今日は特別だぜ。
なにせ、生還記念の大金記念の初攻撃魔法記念の記念中の記念だ。
ついでに、なんだっけ────? 重要なことを忘れてるような──…………。
ま、いいや。
「さてと──ありゃ、メリザさん────……は受付中か」
ま、誰でもいいや。
報告報告~っと、お、空いてる窓口発見。
「すんみません。クエストの経過報告に──」
「だーかーらー!! お前ンとこのクソ冒険者の失敗で、こうなったんだぞ!! Aランクパーティがウソつくっていうのか、おい!!」
ん?
この、声──。
「テメェんとこのクソライトの失敗のせいで、こっちは全財産をだなぁぁぁあああ!…………あ?」
あ、そうだ。
忘れてた……。
「………………よぉ」
ぽんっ。
「なんだよ! 今忙しい────……ぶほっ!!」
クソ冒険者のライトでっす
ニィィ……!
そういって、アグニールの肩に手を乗せ、凶悪に顔を歪めるのだった。




