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ハズレ属性「光魔法」を鍛えまくったら、レーザーが出ました  作者: LA軍@呪具師(250万部)アニメ化決定ッ
第1章『光の少年』

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第20話「出発と、」

 ギュシ、ギュシ!!

  ギュリリリリ……!!


「ぃぃよぉッッし!」

 これでよし!


 ──バッチン!


 背嚢の荷物を詰めなおし、固定バンドできつく縛るライト。

 外観を確認し、軽くたたいたり、揺すったりして問題がないか見直す。


 ──ギシギシ


 うん、

「……大丈夫そうだな」


 それはもう~、詰めに詰め込んだ背嚢──みるからに重そうだ。

 そして、この状態で荷物に隙間があると背嚢の中で暴れて疲労感が増すのだ。


 ──だから、きっちりと縛って固定する。


 最後に一度背負ってみてから、その具合を確かめる。

 体を何度かひねって、最後に軽くジャンプ。


 うん……よし、よし。


「……って、なにしてんだ。ヤミー?」

「ん?」


 ライトを真似てピョンピョン跳ねたり、

 体をひねったり──……あの、ライトさんは、別に遊んでるわけじゃないのよ?


 ……ま、ええけど。


「それより、忘れ物はないか? ヤミー」

「こくこく」


 ……んん。

 ま、まぁ、ヤミーの持ち物なんて、もともと着てるもんくらいしかないしな。

 服脱いでなければ、それでいいか。


「よし、行くか」

「う、ん」


 キョロキョロ


「……ん? どうした?」


 挙動不審のヤミー。

 どこか元気がなさそうなその様子に首を傾げつつ、つられて野営地を振り返るライト。


 ……なんもないよな?

 全て荷物を準備してから、もう一度確認するのは基本だ。


(うん。忘れもの……なし。未練もなし。……痕跡も除去(•••••)したな)


 ゴブリンあたりに追跡されても面倒だから、きっちり痕跡も消しておく。


 また、モンスター以外にも、

 街道からは放れているので、こんなところにいるとは思えないが──山賊だって出ないとは限らない。


 だから、なるべく元の状態に戻しておく。

 ……これ、野営の基本ね。


 で──。

「どうした? なんか、気になるのか?」

「ふるふる」


 ん??

 んんー……?


 ライトの真似をしているのか、野営地をもう一度振り返るヤミー。


 ──その姿がどこか、寂しげにも見える。



「…………あ」



 もしかして──、

「ここが、気に入ったのか?」

「……こくん」


 あぁ、なるほどな。


「…………なら、また来ようか?」

「こくこくこく!」


 すごく嬉しそうに顔をほころばせるヤミー。

 ちょっと直視できないくらい、混じりけのないいい笑顔。


 ピカァ──♪



 最上位光魔法クラスの輝く笑顔を受けてライトが仰け反る。

 ちょっと、汚れてしまったライトには眩しすぎる……。


 ポン。

「お、おう、任せとけ」


 軽く頭に手をおいてやり、大きく頷くライト。

 ──ま、年相応に可愛らしいところもあるようだ。


 な~に、これくらい大した距離じゃない。

 遠出のついでにキャンプをしても(バチ)は当たるまい。


 そうさな……。なにかのクエストのついでに来るくらい、別にいいだろう──。


「わかった、またいこう! そんで魚釣って食おうぜ」

「う、うん!」


 パァ!


「おっふ……」

 ……だ、だから、照れるからやめてくれ。あと心が浄化されていく──。


 そんなね。

 魔力消費ゼロで、光魔法並のめっちゃいい笑顔を見せられちゃあ、闇に落ちそうになっているライトさん、溶けちゃいますよ?


 眩しすぎるんですよ……!?


(野営地一つで……。ヤミー、だいぶ苦労したんだな)


 きっと、世間の波に揉まれて汚れちまったライトにはわからないが、こんな何の変哲もないところでも……ヤミーにとっては大事な場所になったんだろうな。


 見てもわかるとおり、

 彼女にとっては初めての連続だったのだろう。


 温かい食事に、暖かい寝床……──。

 アグニールがどう扱っていたか知らないが、昨日の様子を見るにろくでもない扱いだったのだろう。


 その境遇を思えば、ヤミーがここをどう思ったか、何となくわかる気もする──。


 ……ライトだって、かつて孤児院にいたころ、初めて野外作業に出た時に見た景色は忘れられない。いつかそこに住もうと思ったくらいだ。


「だけど、いつまでも名残を惜しんでられないし、行くぞ」

「……う、ん」


 そうさ。

 大事だと思った場所も、あの孤児院を出てしまえば、ただの思い出の場所でしかなかった──なにせ世界は広い……。




「ぎゅ」

「ん? うわ?! な、なになに?──て、手か?」




 手がどうした──あ。


「手ぇ、つなぎたいのか?」

「こくり」


 昨日に比べて大分歩けるようになってきたヤミーが手を差し伸べる。

 んー……街道で女の子と手ぇつないで歩くって普通に恥ずかしくないか??


 キョロキョロ──。




 …………ま、いいか。




「なんか、モンスターが出てきたらすぐに離れろよ?」

「う、ん」

 よし……。

「いい子だ」


 ポンポン


 ……マジでお父さんの気分だな。

 ヤミーが実際どう思っているのか知らないが、まるで生まれたての赤ん坊だ。


 何にでも感動し、

 なんにでも懐く──。

 たまたま、それがライトだっただけかもしれないが……まぁ悪い気はしない。


「よ~ッし、そんじゃ、|アグニールをぶっ飛ばしにいこう《街に帰ろうか》か──おやつは道々食いながら行こうぜ」


 ──おやつ?!


「うん!」


 おやつに反応するヤミー。

 ……食うことになると、ほんと元気だよなー。


 元気いっぱい、つないだ手をぶんぶんと振りながら先へ先へと歩くヤミーを苦笑しながら眺めるライト。


 ……多分、すぐに疲れるんだろうけど、最初くらいはヤミーの歩きたいように歩かせてやろうと、手を繋ぎ、お手てふりふりと二人は森を出て街へ向かうのだった。


 途中、行儀悪くも、4種の骨せんべいと、果実を()みながら──。


「うまいな!」

「こくこくこくこく!」



 そうして、一路、あの町──『教会都市』へと。

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