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第17話「Aランクの帰還(ライバル視点)」

 ざわざわ 

  ざわざわ


「うぅ、め、滅茶苦茶見られてませんか?」

「み、見られてるわねー」


 ほぼ全裸に近いような恰好のクッソ神父が御者となって馬車を駆っているが、まるでザ•ド変態だ。


 そして、その馬車の中には、アグニールとサーヤもいるが大概似たような恰好。


「くっそー!! なんでこんな目に……!」


 馬車の中には食料程度の物は残していたが、それ以外の物は、ほとんどギルドに預けてきた。

 そして、残る物資はライトとともに、ダンジョンの底だ。


「うぅ……お嫁にいけない──」


 しくしく。


 アグニールに縋りつこうとするサーヤだが、全身、ひどい匂いを放っているので、ススス──とさりげなく距離を取るアグニール。


 もっとも、狭い馬車の中なので悪臭は充満しているわけだが……、


 おぇ……。


「く、くそーッ! おい、どこかで服を調達するぞ!」


 さすがにこのままギルドに行くわけにもいかない。

 田舎町だが、古着屋の一軒や二軒──。


「いやいや、無理ですよ! お金も全部失っているんですから!」


「く……!」


 そうだった。

 あの正体不明のトラップ(?)に引っかかったせいで、装備の大半と荷物を全部焼失してしまった。


 かろうじて残ったのはボロ服(?)と、この死霊王の杖だけ。


 さすがに、こいつはアーティファクトなだけあって、壊れずに済んだらしい。

 ……というより、一度焦げてしまったのだが、なんと時間とともに修復していき、今は元通りだ。


 自動修復機能付き?

 もしや、呪い??


 ……とにかく、こいつは無事だ。

 見た感じ、禍々しさはあるものの、とくに呪いのようなものもない。

 そして、呪いさえなければ、相当に優秀な装備だろう。


 さっそく一度使ってみたいところだが、まだまだ未知数なところがあるため、一度魔塔に持ち帰ってから研究したほうがいいだろう。


 アンデッドの王が持っていたものだ。

 見た感じでわかるような呪いがないだけで、なにかあるかもしれない。

 さすがに、無害とも思えないしな……。


 って、それよりも服、服!

 あと身体洗いてぇよ!


「そ、そうだ! なら、どこか適当な民家で!」

「はぃぃ?! ま、まさか泥棒を?! それこそ無茶言わんでくださいよ!!」


 いくら治安の悪い地域とはいえ、衛兵だって巡回しているし、住民に見つかったらどうするつもりだ? バレなければいいというものではない。


「パ、パーティの名が地に落ちますよ!」


 今の惨状をみるに、もはや地に落ちていそうだが……。


「くそ! じゃーどうすんだよ!!」


 まったく、使えない野郎だ!

 今まで、散々犯罪まがいのことをしていやがるくせに……。


「わ、私とて、この格好で辱めを受けているのですよ! さ、さすがに二人を表に出すわけにはいかないので、こうして我慢してますけどねぇ! っていうか、あんたリーダーでしょ?!」


「ぐむむ……!」


 クッソ神父の言い分ももっともだ。

 もっともなのだが……。

「わ、わかったわかった! わかったから、黙って馬車をやれ!」


 あーくそぉ!!


「しゃーねぇ、ギルドだ! ギルドにいけば金も下ろせるし、それでなんとかするぞ!」


 ドロップ品もないため、売るものもない。

 だが、預金はそこそこにあったはずなので、それでなんとかしよう。 

 共用金庫には、予備の装備なんかもあったはず。


(はー。やれやれ……)


 小間使いにクッソ神父を雇っておいてよかったぜ、とアグニールは胸をなでおろす。


 さすがにサーヤに行かせるわけにもいかないからな……。

 それにしても、ついていない……。


 魔力だってとっくに尽きているし、それさえなければ、適当に魔物を狩って、その辺で売るなりして資金を得たというのに、忌々しい……。


 …………………………魔力、か。


「……ヤミーの奴、くたばったかなー」


 あの白い少女を思い出すアグニール。

 ……あれ(・・)は、思えばもったいないことをしたかもしれない。


 あれほど従順で、

 あれほど小さくて、軽くて、

 あれほどの魔力の素養の高い検体は、なかなか見つからない。


 調教するのも楽じゃなかったというのに──。


 ま、

こいつ(・・・)が使えなかったら、また作り直し(・・・・・・)だな」

 死霊王の杖を手の中で、もてあそぶ。


 ……これに比べて、携帯魔力タンクには制約も条件も多すぎるのだ。

 なにせ、人ひとりをタンクに突っ込んで生命を維持しつつ、生かさず殺さず……。

 さらに、それを使用者本人が背負わねばならないのだから──。


 そのうえで、誰でもいい(・・・・・)というわけではない。


 腐っても魔力タンクだ。

 なので当然、魔力が高くて──。

 欲を言えば、軽くて、小さいやつが望ましい。


 ……女児などが特に適しているだろう。


 研究段階では、軽量化のため、四肢を切断などを試みたこともあるが、長くはもたなかった──。


「ちッ。……念のため、一応『()属性のガキ(・・・・・)を仕入れておくか……──おい、クッソ!」


「なんですかぁ?」


 面倒そうな声。

 クッソ神父は縮こまりながらも御者台で振り返る。あっちのほうは縮こまってないけど──!


 っと、そうじゃない。


「『死霊王の杖』が使用可能かどうか、わからん。まだまだ解析に時間がかかりそうなんだよ」

「は、はぁ……?」


 ……わかってねぇな。


「一々、一から十まで説明しなきゃわからんか!? ガキだ! いつものように、ガキを仕入れてこい! 金はいくらかかってもいいから、魔力の高いガキだ! いいな!?」

「う、うぇぇ?! む、無理いわんでください! 私はもう孤児院の先生じゃないんですよ?!」


 ……あ、そうだった。


 コイツ、孤児院で色々やらかし過ぎて追い出されたんだったな。


 それでも、過去の伝手(つて)で、騙したり、誘拐したりで、ある程度の数は揃えられたが、クッソ神父が孤児院を去ってかなりの年月になる。


 そろそろ、顔見知りのガキも成長しきっているせいで、タンクには向いていない。


「ち……。わかった。とりあえず、魔塔にいくまでに奴隷商人にあたっておいてくれ──それから、どこでもいいから大手の孤児院とあたりをつけろ」


「は、はぁ……。まぁ、闇属性はハズレですから、安値で買えると思いますが──」


「なんでもいいから、買え!! いいな? 手あたり次第だぞ!」

「わ、わかりましたよ──孤児院のほうも、いくつかは心当たりがありますし……」


「ふん。それでいい──。最悪、『闇』属性のガキがいなければ『光』属性のガキでもいい。……もともとの魔力素養が高ければ、そこそこは使えるはずだ」


 所詮は、死霊王の杖の解析が終わるまでのつなぎ。


「この杖で、魔力が無限に使えるようになれば鬱陶しいタンクを背負う必要もないからな」


 光属性以上にレアな属性『闇』の入手はほんとうに面倒くさい。

 だが、幸いなことに値段だけはアホみたいに安い。


 なにせ、魔力素養は『光』を遥かに凌ぐが、

 ぶっちぎり使えない属性ということで、まったく人気のない属性なのだ。


 そんな奴、奴隷になっても売れ残るのが目に見えている。


 見目が麗しければ、まぁ、そっち系(・・・・)の需要として、そこそこの値段で取引されるのだろうが、所詮は人間一人の値段。


 魔塔一権力を誇るアグニールに、買えないものではない


 ……外れオブ外れ。

 それが『闇』属性なのだから。


 しかし、10000人に一人の確率で授かるという『闇』属性は、絶対数が少ないというのがネックだ。


 そのうえ、早期に確保しないと、

 使えなさ過ぎて、処分(・・)されてしまうことも多い。


 クッソ神父がいたような『光』属性のライトを追い出さないような孤児院は珍しいほうなのだ。

 普通の孤児院──卒業生からのペイに期待しするのが当然の所では、早々に『闇』や『光』属性は人知れずに、捨てられているのだ。


 それを思えば──。


「くくく。そんな使えない属性を買って(・・・)使って(・・・)やってるんだ。感謝してほしいくらいだぜ──」


 ……だろうぅ? ヤミーよ。


 くっくっく!

 あーーはっはっはっはっ!!


 最初は信頼さえしていた顔が歪んでいく過程。

 そして、あのガキを散々調教した後、タンクに突っ込んでやった時の顔と言ったら──くっくっく!


「くかかかかかかかかかかかかか!」


 人間の尊厳を踏みにじる瞬間は、ほんっとたまらねぇよなぁ!


 ……だけど、アグニールにはその権利がある!


 『無』属性なんていう、クソみたいな属性を授けやがった世界に対して、復讐をしてやってもいいのだ!


 だから、その屈辱を乗り越え、さらに一歩先へ進んだアグニールには、世界に対して何をしてもいいのだ!!

 

 そうだろう?!理不尽な世界よぉぉお!

 はははは!

 ははははは!!


 ──はーーーっはっはっはっはっは!!


 邪悪な笑みを浮かべるアグニール。

 八つ当たりにも近い思考のまま、半裸に近い恰好のまま街を行くのだった────。

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