第１０話「熟練度カンスト」
【光】属性Lv１０（熟練度MAX）
はははははははははは！！
勝てる！
勝てる！
勝てる勝てる勝てる！！
俺は、勝てる！！！
──俺は、ついに光属性の最高点に俺は到達したぞぉぉぉぉおおおおおお！！
すぅ、
「──ステータスオープン！！」
ブゥゥン……！
※ ※ ※
L v：１５
名 前：ライト
職 業：冒険者（下級）
系 統：魔法使い
属 性：光（Lv１０）（ＵＰ！）
所得魔法：Lv１０流星群（ＮＥＷ！）
※ ※ ※
──……ッッ！！
「よぉぉぉおっッッッしゃぁぁぁああ！！！」
来た！
来た、来た、来た来た来た来た来たぁぁぁあ！！
ついに来たぁぁぁあ！！
「これだぁぁあ！！……光属性Lv１０魔法──メテオシャワー発動ッ！！」
ブォン……！！
Ｌｖ１０──！
【光】属性、最後の魔法。メテオシャワー！！
「ぐ！ す、すげぇ、魔力消費量だ……」
発動と同時に魔力が消費され、堪らずガクリと膝をつくライト。
光属性とは思えぬ魔力の消費量だ。
携帯魔力タンクを手放した今、全力で撃てるのはライトの魔力量をしてもせいぜい一発か二発！
だが、それで十分！！
……十分だ！！
すぅぅ、
「死ねぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええ！！」
──腐れアンデッドどもがぁぁぁあああ！
バチバチ、
バチバチ……！
魔力の迸りがライトから溢れ、フワァァ……と、小石を浮かせる。
さらに、その奔流がバリバリと音を立てて、ライトの髪を逆さに浮かせていく！！
バチバチ、
バチバチパチパチッッッ……！
「はぁぁぁぁぁぁ……！！」
練り上げられていく魔力……！
ライトを中心に魔力が渦巻いていく！！
……これがLv１０──属性カンストの最上位魔法かッ！
（は、ははは……！──これまでずっとハズレ属性と呼ばれても、）
今日まで、今まで、この刹那の時まで──最後の最後まで耐えて、耐えて、耐えて耐えて耐えて、鍛えたんだ！！
そして、ここに至った！！
これが……これが効かないなんてあるはずがないだろうが！！
だから、
「──全力でぇぇぇぇえええ！」
──ぁぁぁぁぁあああああ！！！！！！
パリパリ！！ と、紫電を奔らせるライトの手。
連戦と激戦で、爪が砕け、皮膚がボロボロになって、なお動くそれ！！
──それを向けるッ！
目標確認！！
照準、リッチ！
魔力充填──…………よしッ！
うぉぉぉ。
「──ブチかましてやるぁぁぁああああああ！！」
ライトの文字通り死力を絞った、最後の一手。
身体に残った、ほぼ全ての魔力を注ぎ込み、Ｌｖ１０の魔法を放つ！！
『ルロォォォオオォオオオオオオオ！！』
だが、その気配に危機感を覚えたリッチが乾いた腕を振り上げ恐ろし気に咆哮する。
さすがに、属性魔法Ｌｖ１０の気配には危機感を覚えたらしい。
それに対抗するためか、なにか強力な魔法を放とうとして、魔力を練り上げていくが……。
──もう遅いッ……！！
すぅ──。
「──流星群ぁぁぁぁあああああああああああああああ！」
……カッ！！
クワッ！ と目を見開いたライトが、魔法を発動！！
刹那。
このBOSS部屋が真昼のように照らし出され─────｜ってぇぇぇぇぇええええええええええ《ファイヤァァァァアア》！
ドカァァァァァッァァアアアアアアン！！
『ロァァァァァァァォアアアア！！！！！』
「ぐぅ……！」
一瞬にして光が爆発する！！
その発動の瞬間、ごっそりと奪われる魔力。そして、ライトに残る、ほとんどの魔力を吸い上げながら発動したメテオシャワーがリッチを含めて周辺に直撃する！！
「いけぇぇっぇええええええ！」
──ズドドォォォォオオオオオオオオオオ！！
ドドォォォォオオオオオオオオオオ！！
ドドォォォォオオオオオオオオオオ！！
ドドォォォォオオオオオオオオオオ！！
ひかり！！
光、光、光、光──！！
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド！
……す、
……すげぇ。
「すげぇぇぇええええええ！！！！」
まさに光の爆発ッ。
スゲーぞ！
光魔法Ｌｖ１０、メテオシャワー！！
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ────！
……それは、まるで光の洪水、濁流！ 瀑布であった！！
それが、光の塊となってＢＯＳＳ部屋の天井を突き破るようにして、次々と降り注ぎ、文字通り真昼のようにダンジョン最奥を赤々と照らし出したのだ！
ドォン！！
ドォン！！
──次々に着弾する光の塊！！
『ロォォォォオオオオオ？！』
『『『グッルァァァァアアア？！』』』
この光の暴威には、さすがのアンデッドもたまらないのか、棺や墓石に影に隠れてやり過ごそうとする。
「はは、ははは、ははははははははは！」
逃げろ逃げろ！ アンデッド！！
ざまーーーーーーーーーみやがれぇぇぇ！！
あーはははははははははははははははは！
「あはははははは──くたばれッ！！ 薄汚いアンデッドどもがぁぁぁああああ！」
『ロォォオオオオオオオオオオオオオオオ？！』
この光の暴威の前には、あのリッチでさえ飲み込まれて顔を覆って身をよじる。
そして、そして────。
──ふっ……！
……唐突に光の奔流が消えた。
どうやら、メテオシャワーの終焉らしい。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
ライトは手をかざしたまま硬直し、もう一歩も動けない。
それでも、よほど強力な光魔法であったらしく、魔法が消えても闇が訪れることはなく。
残照のように散らばった光球がチカチカと残っていた──。
動くものは…………ない。
す、すげぇ……。
すげぇ魔法だ……。もはや目につく限りアンデッドの姿は見えず、生き物の気配はひとつもない。
や、
「やった…………のか？」
シンと静まり返った空間の中、ライトからしたたり落ちる血の音がやけにハッキリと響き、
残照のつくる陰影があちこちで揺れ動いているのみ。
やった……。
やったんだ！
「やっ────」
……パキンッ！！
「ッ？」
耳朶を打つ異音にビクリと背中が跳ねる。
（な、何の音だ？）
パラッ……。
カラカラ……。
「ま、まさか──」
石くれの落ちる音に顔を上げるライト。
その視線の先には──。
『『『ゴルルルルルルルル……』』』
ズルリ、
ズルリ、
「う……そ、だろ──」
ライトの視線の先。
……何事もなかったかのように、棺や墓石の影からノロノロと顔を出すアンデッドども。
そして、呆然としたライトの正面には──。
『ロォォォオオオ……』
あのリッチまでもが無傷で佇んでいた。
──ば、かな……。
馬鹿な！！
「馬鹿なぁぁぁあ！！──れ、レベル１０の、最上位の属性魔法だぞ？」
【光】属性ＭＡＸなんだぞ────！！
そ、それがぁぁ……。
──くそ！
「ス、ステータス……オープン」
落ち着け。
落ちつけ……！
Ｌｖ１０の魔法が効かないなんて何かの間違いだ────……。
ブゥゥン……。
※ ※ ※
Ｌｖ１０『流星群』
備考：光の雨を指定範囲に降り注ぎ、真昼よりも明るく照らしだし、視界を焼く。
攻撃力０
※ ※ ※
…………。
……。
「………………………………………………は？」
攻撃力……………──「０」？？
無意識のうちに起動し、使用した魔法を確認したライト。
そこにはあまりにも無情な数字が並んでいる。
そう────……あまりにも無情な数字……。
ゼ、
「──ゼロ？？」
攻撃力が…………０
は、はは。
「あはは、あははははは」
はははは、
「あははははははははは」
あははははははははははははははは！
「あーははははははははははははははははは」
ゼ、
「ゼロ、かよ」
あははははははははははははははははははははは！！
ゼロかよ！！
「あははははははは！！ ゼロだってよぉぉぉお！！ そ、そ、そりゃぁぁ、そ－だよなー！」
──ぎゃははははは！
残光の中、ライトは乾いた笑い声を立てた。
都合よくレベルアップ？
都合よく最後の最後に【光】属性の攻撃魔法がでる─────？？
このハズレ属性がぁぁ？
「……ぷはッ！」
ぷははははははは！
そりゃーーーーーーーーーーーーーーそーーーーーーーだよなぁぁぁあ！！
そーーーーーーーーーーーーーーーんな上手くいくわけねーーーーーーよなぁぁぁぁぁああ！！！
「ぎゃーははははははははははははははははははははははははははははは！！」
狂ったように笑うライト。
これを笑わずに何を笑う？！
笑うわなぁ？ 笑うだろうぅ？！
「だってよーーーー、ゼロだぜぇぇぇ！」
ぎゃははははははははあ！
さ～すがハズレ属性だ！！
さ～～すが光属性だ！
さぁぁぁあ～すが、さすが、さーーーーすがぁぁ！！
「あーははははははははははははははははははははははは！」
攻撃力０！！
「──ゼロ！！ ゼロ、ゼロ、ゼロぉぉおおおお！！ あーはははははは」
Lv１０の、属性最強の魔法が攻撃力ゼロだってよぉぉぉおおおおお！！
「はははははははははははははははははは！ あーーーーーはははははははははははは」
あひゃひゃひゃひゃははああああ──！！
「ひーっひひひ、あははは！ ひ、光の雨で──真昼よりも明るく照らしだしぃぃ、ひゃははは！……し、視界を焼くぅぅぅう？」
ぎゃはははははは！
ぎゃーはははははははははは！ し、視界を焼くって、ぎゃはははははは！
「あー……はっはっはー……」
はぁぁぁーーー…………………………。
──ド畜生がぁぁぁああッッ！！
「ッッ！！──くそ！ くそ！！ くそぉがぁぁああああ！！」
くッッそぉぉぉぉおおおおああああ！
「最ッ後の、最後まで攻撃力０ってかぁぁぁあああああああああああああ！！」
ああああああああああああ、
【光】属性さんよぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお！！
「テメェは、とことんまで使えねぇ、ハズレ属性だよなぁぁぁあああああああああ！！」
ああああああああああああああははははははははははははははははははははははは！！
ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははははははは！！
『『『ケタケタケタケタケタケタケタケタ！』』』『『『キャハハハハハハハハハハハハハ』』』
ライトの笑いにアンデッドの嘲笑までもが加わり、一種のカオスな空間。
『『『 「ギャーーーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ」 』』』
笑う笑う、ライトとアンデッド。
僅かばかり残ったライトの魔力が付き、ライトのホーリーライトが切れるその瞬間まで、ライトは狂ったように笑う。
そして、呪う！ 祝う！
世界を！ 属性を！！────光をぉぉおお！！
「ぎゃははははは────……うがぁぁぁぁああああああああああああああああああああ！！」
ああああああああああああああああああああああああああ！！
くそ、くそ、くそ！！
くそくそくそくそくそ！！
「くそがぁっぁああ！！ どこまでたっても雑魚属性がよぉぉおおおおお！！」
まだ魔力もある。
まだ戦意もある！！
まだまだ殺したい相手だっているってのによぉぉぉおおおおおおおおお！
────…………うがぁぁぁぁぁあああああああああああああ！
畜生畜生畜生ぉぉぉおおお！
「だけど、そんなもんだよなぁぁぁぁあああああ！」
Lv１の頃からずっと攻撃力０の魔法しかなかったんだ。
それが、Lv１０で攻撃魔法を得られる？？
は──！
ありえるわけねぇぇよなぁぁぁああああ！！
そして……。
「………………かはっ」
怒り狂おうとも、恨みつらみが積み重なろうとも、限界は来る。
再びの吐血。
今度の血の色は真っ黒。…………つまり、内臓が潰れた証拠。
「クソが……！」
その終わりはアッサリと迎えた。
