あなたはわたしのドアをノックした
何度も何度も手を洗った。
食べるだけ食べて吐けるだけ吐いた。
サウナと水風呂を往復した。
ブレインジャックとかいう怪しいタイトルのCDを夜昼聴いた。
わたしはなにも変わらずに惨めだった。
こんな状況のままあなたに会いたくなかった。
それでも時間は過ぎて行って、あなたはわたしのドアをノックした。
少しでも痕跡を消したかったの。
わたしが愛されたかったこと、愛してもらえなかったこと、あなた以外の人に出会ったこと、なにもかも失ったこと。
少しでも笑顔で迎えたかったの。
あなたになにも知られたくなくて、気づかれるのが怖くて、わたし以外のドアへ向かうこと、気が狂いそうになる。
あなたがわたしを見つけてくれるまでに、わたしいろいろなことがあったのよ。
なにもかもがくだらなくて、わたしは平気でいられなかった。
これまでのことを消さなくちゃ。
なにも知らないわたしに戻って。
消せなかった瑕疵は覆って後ろ手に隠そう。
あなたの目に触れてしまわないように。
こんなわたしのままあなたに会いたくなかった。
少しでも笑顔で迎えたかったの。
それでも時間は過ぎて行って、あなたはわたしのドアをノックした。