変化6.黒ギャルの反省
彼女視点です。今日は2話更新予定です。
「あーもー……最悪っ!! 結局、何もできなかったー!! ウチのバカ!! 不甲斐なさすぎー!! もー!!」
私は渋木君……。いや、タケシと別れて自宅の部屋に一人で居た。
持ってきた荷物は、部屋にぶん投げたままだ。自分の今日の失態に、荷物を整理する気も起きずにいる。
ホント、自己嫌悪が重くのしかかる。
そして、ベッドの上で抱えた枕を苛立つように上空に投げ捨てて、そのままボフリと顔でキャッチする。ちょっと痛い。
結局、ウチとタケシはあの後に一緒にご飯を食べて、軽くキスだけをして家まで送ってもらって……それで今日はお終い。
確かに荷物もあったし、移動で疲れたしで家には帰るつもりだったけど……。
なんて言うか、あれからタケシに迫る勇気がウチから改めて出なかったんだよね。なんか、ヘタレちゃった。
ああー!! もっと色んなことをするつもりだったのにー!! ウチのバカー!!
ホントに計画倒れも良い所だ。
「あーあー……せっかく……せっかく皆に色々と教えてもらったのになぁー……」
自身のふがいなさが嫌になる。どうしてあそこでお腹が鳴るのか。どうして軽くでも良いから機内で何かを食べてこなかったのか。
いや、久しぶりに渋木君……じゃなかった、タケシに会えると思うと緊張して何にも喉を通らなかったんだけどさ。
「あーもう、ムカツクー……。後で連絡だけはしとこ、自撮り付きで……。どんなのが良いかな? タケシも喜んでくれるようなのが良いなぁ」
せめて、ちょっとエッチな自撮りをタケシに送って明日からの期待感を高めるしかないかと考え、ウチはスマホを取りだす。
スマホの待ち受けは、ウチ……いや、私と渋木君の高校の時の写真だ。
ほんと、タケシも変わったなぁ……。
この頃はボサボサと伸ばしっぱなしの髪に分厚い眼鏡をかけていてて、ちょっと猫背で丸くなってて……ほんと可愛い。
でも今日、久しぶりに会ったタケシはちょーカッコ良くなってた。
こういうの惚れ直すって言うのかな? この頃は可愛いけど、今はカッコいい。でもちょっとしたことですぐ赤くなったり、凄く優しかったり……。
中身はあの頃のままで、とっても安心した。ほんと、食べちゃいたくなる。というか今日、食べる気だったんだけどさ。
そしてタケシの隣には……以前の私がそこに映っている。髪も黒くて、地味で、化粧っ気もない平凡な自分だ。今とは全然違ってて、自分でもびっくりする。
懐かしいなぁこの姿。今でもいけるかな? 別に今のカッコの方が気に入ってるから、戻る気は無いんだけどね。
こっちの方が都合が良いし。
でもなぁ……ここまで変わってもダメだったのはちょっと凹む。まぁ、今日はウチの失態だけどさ。
ウチの変化は両親には前もって教えていたので、割とスンナリと受け入れてもらえたけど、タケシにはギリギリまで隠してサプライズするつもりだったので、きっととっても驚いてくれただろう。
そして驚いたと同時に、喜んでもくれたはずだ。
ウチはのっそりと芋虫のようにベッドから上半身だけを出すと、ベッドについている引き戸を開けてその中をゴソゴソと漁る。
そして、その中から一冊の本を取り出した。
それはとある日に、タケシの部屋から思わず持ってきてしまった本。その……えっと……ぶっちゃけるとタケシが持っていたエッチな本だ。
それを見つけてしまった時は、ウチと言う彼女がありながら……!! と嫉妬心とか怒りとか、そういう負の感情が芽生えたんだけど……。
その本を見た私は、衝撃を受けてしまったのだ。
その本は、肌を黒く焼いて露出が凄いお姉さん達がいっぱいな……いわゆるギャルと呼ばれる女性がオタクの男の子に優しくしてあげるというストーリになっていた。
ギャルでビッチな可愛い女の子が、オタク男子に迫って色々と仲良くなる漫画。それをタケシは持っていたのだ。
そしてその時、ウチは思ってしまったのだ。
ウチに足りないのはもしかしてコレじゃないのかと。いや、きっとそうなのだと半ば確信に近い自身を持っていた。
そう……実はタケシはこういうギャル系の女子がタケシの好みなんじゃないのだろうかと!!
タケシは私の事を好きだと言ってくれている。告白だってタケシからしてくれたけど……実はあれはウチが言わせたようなものなのだ。
実はこういうギャルにリードされるのが、タケシは本当は良かったんじゃないのかな? そんな不安が私の心をよぎっていた。
そう思ったのには、一つの心当たりがあったからだ。
そのことを思い出すと……あー今思い出しても頬が熱くなるー。今日はそれ以上の事をしようと覚悟してたわけだけど、冷静になるとホント良くあんなことできたよー。
勢いは大事。だけど、もっと勢い付けなきゃダメだったかなぁ? いや、失敗の原因はお腹の音だから、今度はそう、万全にしていけば行けるんじゃ……。
話が逸れた。心当たり……そう、心当たりだ。
実はウチ達はその……少し恥ずかしい話なんだけどさ……。
初体験、失敗しちゃってるんだよねぇ。
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