002 魔法少女、森の中で女の子に出会う
私、サクラと、変な猫のルルは日本から異世界転移してきたようです。
「ルルの中身は凄腕の美人プログラマーなんだ!」
「そうだにゃ!」
「おじさんでなくてよかったよ!」
「おじさんでもその胸じゃ喜ばないにゃ!」
「まじかる☆ぱ〜んち」
「ふごにゃ!」
私はゴーレムを倒したあたりに光る石が落ちているのを見つける。
「これ、何だろう......」
「魔石だと思うにゃ......」
「魔石......?」
「街のギルドで売ったりできると思うにゃ!」
「まずはお金を稼がないとね!」
「そうだにゃ!」
私とルルは、近くの街を探して歩く。
この魔石、邪魔だな......
手に握っていた魔石が消える。
「きゃっ」
「どうしたにゃ!」
「魔石が消えたの!」
「にゃにゃーー!」
しまいたいときに消えるなら、出したいときには出てくる......?
「ゴーレムの魔石、出てきて......!」
私の手の中には、ゴーレムの魔石が現れた。
「おお......!マジシャンみたい......!」
『だ、誰か、助けてーー!!』
「ルル、あっち!」
「いくにゃ!」
私とルルは反応があった場所に向かって走り始めた。
反応があったところに到着する。
そこには、同じ年くらいの女の子がいた。
「あの女の子、何に襲われてるのかな......」
「助けてーー!!」
その時、ドーンと目の前の木々が倒れて、大きなドラゴンが現れた。
「な......大きい......」
女の子は今にも、追いつかれ、餌食になりそうになっている。
助けるにしても、特大威力の魔法をぶちかますわけにはいかない。
そんなことをしたら、女の子まで......
チュートリアルの時は確か、魔法のステッキを装備して命中力をあげてたはず......
レッドドラゴンの属性は火だから、水属性の魔法だ!
私は、魔法のステッキを握って、ステッキの先から、水の魔法が出るイメージをする。
「水の魔法、出てーー!!」
私がそう叫ぶと、水の魔法が螺旋を描き、一直線にドラゴンに飛んでいく。
ドラゴンは私の攻撃に気づいたのか、ファイアブレスで対抗してきた。
「水の魔法、もう少し強くお願い!!」
そう叫んだ瞬間、ドーーンという爆音と共に、威力が上がる。
ドラゴンの体を私の水魔法は貫通した。
飛ぶことができなくなったのか、ドラゴンは墜落した。
「すごい......魔法、初めて見ました......」
「そうなんだ」
あまり魔法は浸透してないのかな?
そもそも、魔法少女は正体バレたらまずくない......?
「無事でよかったです」
「助けてくれてありがとうございました」
「気にしないでください、森の中で迷っていたら、偶然だったので」
「ふふふ、可愛い言い訳ね、ありがとう」
実際、迷ってたけどね......
女の子はクルシャというらしい。
私たちを近くの街まで連れて行ってくれるそうだ。
「クルシャ、お願いなんだけど、私が魔法を使えること黙っててもらえないかな」
「うん、それはいいけど、せっかく、そんなすごいことができるのに?」
『ギャオオオオ!』
「この世界では魔法は珍しいんでしょ?」
「珍しいどころか、本の中でしか見たことないわ」
『ギャオオオオオオ!』
「そんなに!お願い!」
「うん、もちろん、いいよ!」
『ギャオオオオオオーー!!』
「ありがとう〜」
「お礼を言うのは私の方よ〜」
『ギャオオオオオオーーーー!!』
「って、ルル、うるさ〜い!」
私は後ろをついてきていた、ルルが叫んでいるのかと思い、振り返って即パンチした。
「まじかる☆ぱ〜んち」
「サクラ、それはドラゴン......」
私の全属性魔法の、へなちょこ屁っ放り腰パンチは瞬く間にドラゴンを消滅させた。
カランと魔石と素材をドロップした。
「そういえば、さっき、止めを刺していなかったね......」
「サ、サクラ、凄腕のドラゴンキラーなのね......」
「たまたま、急所に当たったのかな......」
適当にごまかして、素材を回収する。
「サクラ!魔石と素材はどこに?」
「私も分かんないんだよね!こういうことできる人っているの?」
「見たことも聞いたこともないよ!」
他の人には見られないようにしないといけないね......
私たちは歩き続ける。
「ルルちゃん、もうすぐ街だけど、モンスターは入れないよ?」
「そうなのかにゃ!!」
「じゃあね、ルル......!!」
「サクラ〜〜!!心配いらないにゃ!変身できるにゃ!」
ルルはその場で止まり、いきなり光った。
気づくとそこには、猫耳のついた幼女がいた。
「クルシャ、これなら大丈夫......?」
驚いて目を丸くするクルシャに聞いてみる。
「そうですね!獣人の方はいらっしゃいますから、目立ちはしないと思います」
「よかったにゃ!」
「ルルはちなみに......他にも変身できるの......?」
「魔力を使うから、やりたくないにゃ!でも、大きな猫になってサクラを乗せて走ったりもできるにゃ!」
「ルル、仲良くしようね......!」
私は目を輝かせて、ルルの手を握る。
「サクラはルルを便利な乗り物としか思ってないみたいにゃ......」
だって、運動音痴な上に体力が皆無だからね......
日本の交通機関の便利さが身に染みるよ......
私たちは無事に街に入る。
「ねえ、クルシャ、服が欲しいんだけど、服屋さんはどこにあるかな......?」
「服ですか?」
『ママ見て〜、変なおねーちゃんがいる』
『馬鹿、目を合わせちゃいけません!』
『なんだ、あの格好は?』
「みんなにすごーく見られてるから」
「サクラは小さいから可愛いと思いますけどね」
そう言って、服屋さんに連れて行ってもらった。
ファンタジーな衣装を普段の生活で着られるなんて......
私は鼻歌まじりに服を選ぶ。
「あ、私、馬鹿だ......一文無しだ......」
「クルシャ、この世界はお金で物を買うんだよね......?」
「うん、そうだよ?」
「物々交換はできないかな?」
「できなくはないと思うけど......」
「仕方がない......服屋さんなら、布や糸っぽい素材なら......」
ドラゴンの髭ならいけるかな......?
私は店員であろう、貫禄のあるおじいさんのところに行く。
「あの......」
「どうした」
「お金がなくて、物々交換で、服を買いたいんですが.....?」
猫耳フードの中の私の顔を覗き込む。
「一応、聞くが、お前は何を出すんだ?」
「こ、これを」
私は、出ろーー!と先に出して、手に握る、ドラゴンの髭を見せる。
「お嬢ちゃんは、どの服が欲しいのじゃ?」
店主のおじいさんは、目を丸くしながら、聞いてくる。
「このブラウスと......できればスカートも......欲を言えば、このリュックサックも......」
店主のおじいさんは言葉を失ってしまった。
「ごめんなさい、帰ります......」
「待つのじゃ、お嬢ちゃん!」
「いえ、無理をして、交換していただくわけには......」
「違う、お嬢ちゃん!それはドラゴンの髭じゃろ!ワシの店の商品、全てを交換しても価値は釣り合わん!」
「ええ......!」
「お嬢ちゃん、ドラゴンの髭の価値を知らんのか?」
「は、はい......」
店主のおじいさんはため息を1つつく。
「お嬢ちゃん、その服は一旦、貸してやろう。どうしても着替えたいのじゃろ?商業ギルドで一度換金してから、服の代金を払いに来なさい」
「良いんですか......?」
「ああ、お嬢ちゃんから、騙し取っても良い気はしないからな」
「ありがとうございます」
私は早速、試着室で着替える。
「この魔法少女の衣装も戻れーって感じで戻るのかな......?戻れ......!」
予想通り、下着姿になり、メガネも帰ってきた。
「メガネ、落ち着く〜......」
私はファンタジーな私服に着替えて、試着室を出た。
「クルシャ......お待たせ......」
「サクラ、感じが変わりましたね!なんか、大人しい雰囲気に!」
「クルシャ......絶対内緒よ......内緒だからね......」
私は照れながら、クルシャにお願いする。
「ふふふ、サクラは性格が変わるんですね!」
「あの格好だと......何にでもなれると錯覚しちゃって......」
「可愛いわね、妹に欲しいわ」
「妹って......クルシャ、同じくらいの年でしょ......?」
「私は、16よ」
「私、17......」
私の方が年上でした......
微妙な空気になったが、クルシャとは、服屋さんの前で別れた。
「ルル、行くよ......」
「行くにゃ!」
私とルルは、まず、商業ギルドに行くことにした。