表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
炎姫と剣奴  作者: 暮伊豆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/27

捥がれた翼

「いたぞ! 炎姫だー!」

「そっちに行ったー! 逃すなー!」

「俺だ! 俺が見つけたんだからな!」

「あそこが怪しいって言ったんは俺だぞ!」

「うるせぇ早いもん勝ちぶっ」


素手でも戦い続けるアイリーン。その拳は血に塗れている。また、蹴りも多用したためブーツすら血に染まり足跡を残す結果となったのは皮肉だろうか。


ろくに寝ることも食べることもなく戦い続けた結果ついに、一歩も動けなくなってしまった。とうとう腕を動かすことすらできなくなってしまったようだ。


「ひゃはぁ! 炎姫がいたぜぇ!」

「俺だ! 俺からだからよ!」

「しゃあねーな! 早くやれや!」

「お、おい待てがあっ!」


斬り捨てられた雑兵。彼らの背後に現れたのは帝国騎士団長ボルペインだった。


「おまえらぁ! 炎姫に手を出そうとしたなぁ! 死んで償え!」


たちまち斬り殺される雑兵達。命令を聞いてなかったのか、従う気などなかったのか。それともアイリーンを目の前にして抑えが効かなかったのか。兵を人間扱いしていない軍の規律などそのようなものだろう。


「さあてお前が炎姫か。なかなか美しい顔をしているではないか。どうだ? 素直に私のものになれば帝国でそれなりの暮らしをさせてやるぞ?」


「そうだな。もう一歩も動けん。抵抗はしない。好きにするがいい。」


そんなアイリーンの顔を平手で張り飛ばすボルペイン。


「いい心がけだ。そのきれいな顔が苦痛に歪む様をじっくり見せてもらうとしよう。おい!」


「はっ!」


「お前達は席を外せ! ここからは私一人のお楽しみだからな。」


「ははっ!」


ボルペインの周囲にいた副官などが全員退出する。いつものことなのだろう。


「ふふ。」


剣を振るうボルペイン。一振りする度にアイリーンの服が斬られていく。肌が傷つこうがお構い無しだ。


しかし悲鳴をあげることもなく動かないアイリーン。


「ふん、生意気な女だ。どうせすぐに泣きわめくことになる。そぅら、残り二枚か。」


下着姿になっていても表情を変えないアイリーン。体の至る所から血を流し、もう手を動かすこともできない。


「せめて可愛がって欲しいなら自分で脱いでみせろ。媚を売る娼婦のようにな。」


「一歩も動けんと言ったはずだ。もはや手も上がらぬ。抵抗はせん。好きにしろ。」


「けっ!」


無防備な腹を蹴りつけるボルペイン。力なく飛ばされて仰向けに倒れるアイリーン。


「ふん、起きあがることもできんか。詰まらん女め。いくら炎姫などと呼ばれても所詮は女よ。飽きるまでは可愛がってやるからな。せいぜい大人しくしてるがいい。」


そう言って服を脱ぐボルペイン。下着のみを纏い身動き一つしないアイリーン。


「少しは抵抗してくれんと張り合いがないわ。くっくっく。」


そう言ってアイリーンに馬乗りになるボルペイン。まずは上から下着を剥ぎ取った。


「バルド……済まぬ……」


「バルド? それがお前の男の名か。くく、いい事を思いついたぞ。そやつも生かして捕らえてくれよう。そしてそやつの前でじっくりと犯してくれるわ。くくく、滾ってきたわい。」


小ぶりだが形のよい胸が露わになる。しかしアイリーンは隠す事すらしない。


「どれ、味を見てやろう。」


そう言ってアイリーンの胸に覆い被さるボルペイン。生温かく、おぞましい感触がアイリーンを襲う。それでも身動き一つすることはなかった。


「ふん、この程度ではピクリともせぬか。言え! お前はどこが感じるかをな!」


そう言いながらもボルペインはアイリーンの頬を叩く。何度も。


「……首だ……妾は……首筋が……弱い……」


勝ち誇った顔で醜悪に笑うボルペイン。


「くくく、ならば私の舌技を味わうがいい。」


アイリーンの白く細い首へ舌を伸ばす。


その時だった。それまで身動き一つしなかったアイリーンが動いた。とは言っても本当にわずかな動きだった。夢中でアイリーンの首筋を舐めるボルペインは気付けるはずもない。小さな口をいっぱいに開いたアイリーンはボルペインの無防備な首筋を……噛み切った。


「ぐあおぉああーー!」


それは手足の動かないアイリーンの最後の抵抗だったのだろう。己の恥辱を殺してまで首が弱いと言ったのは、全てこの瞬間のため。ボルペインの無防備な首筋を噛み切るためだったのだ。


「団長!」

「団長何事ですか!」

「そ、その血は!」


明らかに致命傷、出血量から見ても助かる見込みはない。


「貴様! 炎姫! よくも団長を!」

「かくなる上は殺してから犯してくれる!」

「団長の仇! 覚悟!」


最後の力すら使い果たしたアイリーンにはもう何もできない。下半身も下着姿のまま……隠すこともできずに……


「バルド……すまぬ……先に……王国を……」


そう言って目を閉じた……




無慈悲に振り下ろされた副官達の剣。


メリケイン王国中の若者が憧れた王女アイリーンは死んだ。滅多刺しだった……


バルドが一騎打ちに勝ち、その後意識を失った夜の出来事であった……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i00000
この時代から数百年後の世界はこちらです。
― 新着の感想 ―
[良い点]  戦争という理不尽な情景が描かれていると思いました。 [気になる点]  主人公の一人が亡くなってしまいました。タイトルからみると二人が主人公に感じていたので、少し驚きました。
[良い点] うっ……(語彙喪失
[一言] 炎姫いいいいい!!!!!!(号泣) ううう!!! いせきん本編で結末は知っているとはいえ、やはり目の当たりにすると辛いっすね……。 でも炎姫は最後の最後まで気高かった!!! ご立派でした!!…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ