呪いの目隠し
「新入りも来たことだし、一杯やろうじゃないか!」
酒屋鬼が豪快に笑いながら懐から、酒瓶を取り出した瞬間、拳骨が彼の頭へ炸裂していた。
「あらあら、酒屋鬼さん。それはお客様へお渡しする為のお酒ですよ?」
「良いじゃん!この酒高すぎて売れないんだよ!」
「だったらアンタ、何で仕入れてるんだい?」
不審な目を向ける銀狐に、酒屋鬼はサッと目線を
反らす。
だが、それを見逃す付笛ではなく、
「取り敢えず酒屋鬼さん、後で少し私とお話しましょう。例えば、仕入れるお酒について。」
微笑みながら付笛は、酒屋鬼の方をみるみる。
だが、その言葉には強い威圧が掛けられていた。
「ハイ」
「もしかして、そのお酒好きなんですか?」
チラチラ酒瓶を見ている酒屋鬼に黒布が
素朴な疑問を抱く。
「そうなんだよ!酒にしては甘~い上品な味わいさ。俺はこれが好きで好きで…
それと黒布、敬語は使わなくて結構!
俺達は居酒屋ファミリーだからな。」
「…分かったよ。」
黒布は釈然としない様子で応答する。
満足したのか酒屋鬼はウンウンと頷いている。
「ところで黒布お前さんは、目がみえていないのかい?」
いつの間にか近くに来ていた白布が尋ねる。
「なんで分かったの?」
「此処では、その布を着けている妖怪は目が見えていないとされている。呪いの目隠しと呼ばれていてね。失明していても景色が見えるようになる。」
「凄いね。でも、呪いの要素が無いよ。」
黒布は自信に巻かれている目隠しを触ってみる。
そこで黒布は違和感に気がついた。
「気がついた?呪いと呼ばれているのは、
一度着けると二度と外れないからだ。」
「本当に外れない…お風呂の時とか、どうするのさ。」
「防水だから大丈夫。まっ目元が見えてないくらい大丈夫だって。」
「う、うん。」
(永遠に目隠し着けたままなのは嫌だなぁ。)
これが人と妖怪の違いか、そう黒布は
心の中で呟いた。
5人で会話させるのって難しいですね…