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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

たずねてきた幸せ①

訪ねてきた幸せ ➂

作者: どんC

カルメンおばさんSidのお話です。訪ねてきた幸せ①②を読まなくても分かる様に書いています。

 ああ。なんだい?

 ベルツ達の事が聞きたいって?

 いいよ。話してやるよ。10年前ぐらいだったかねー。

 手紙を頼まれたのさ。私らも王都に護衛の仕事があったからねー。

 こう見えてもあたしは【ワイルド・ウオーキング】って言うパーティのリーダーさ。

 手紙の内容? 何でも王都にいる婚約者を迎えに行くから場所と日にちと時間の指定さ。

 あんときゃ~ビックリしたね。

 てっきりエレクトラと駆け落ちしてきたんだって思っていたからさ。

 婚約者の妹だったんだね。

 尋ねてみると彼女の家、没落していてね。両親も亡くなっていて。

 家も爵位も売っててさぁ。

 彼女は出ていった後でねー。

 探したんだけど、なんせ王都は広いし、もう王都にいないと思ったんだ。

 スキャンダルが凄かったらしいよ。ゴシップ新聞なんかに面白可笑しく書かれて。

 貴族にとって致命的さ。

 地方の都市にでも働きに出たんだと思ったのさ。

 そんな訳で手紙は渡せなかった。

 それをベルツに言ったら。

 彼、荒れてね。しかもベルツと妹が駆け落ちしたことになってて。

 ベルツも驚いていたよ。

 ベルツは事情を書いた手紙を渡したはずが、手違いで渡ってなかったんだね。

 エレクトラが渡しそびれたみたいでね。

 妹を嫌な結婚から逃がして、後で婚約者を迎えに行くつもりだったんだ。

 酔っぱらった時聞いたのさ。


 ん? エレクトラとメリッサの両親の事かい。

 エレクトラの婚約者のオッセル侯爵に違約金を取られて。

 屋敷や土地や商会や爵位まで売って没落したのさ。

 母親は病死して。元々体が弱くって。

 娘の結婚式を楽しみにしていたようだよ。

 ダナウェン男爵は奥さんの墓の前で自殺したって。

 愛していたんだね。

 男爵夫人は遠い国のお姫様で。30年前に国が滅ぼされ。

 こんな遠い国まで逃げて来たんだって。

 男爵の商会で知り合って結ばれたそうだよ。

 エレクトラがオッセル侯爵に嫁ぐのをそりゃ楽しみにしていたそうだ。

 生きてるうちに娘の花嫁姿を見たかったんだろうね。

 でもエレクトラはオッセル侯爵が気に入らなかった。

 女神だ!! 妖精だ!! って言われるぐらい美人だったけど。

 結局人を外見だけで判断する女さ。


 オッセル侯爵の悪い噂?

 ああ。カーター侯爵の父親が酷い男で、その恨みやら妬みやらで根も葉もない噂を流されたんだね。

 カーター侯爵自身はそんなに酷い人じゃない。

 領民にも慕われてる。良い領主だ。

 まあ容姿にコンプレックスを持っていて癇癪持ちではあったけど。

 イボガエル閣下とか言われていたし。

 エレクトラが駆け落ちしたのがベルツみたいないい男だったから。

 ますます癪にさわったんだろう。

 女神だ!! 妖精だ!! って言われていたけど心が美しかった訳じゃない。

 面の皮一枚の話で、中身は姉の婚約者を寝取った淫売さ。


 可愛そうなのはメリッサの方。

 婚約者に祭壇の前で置き去りにされ、両親は死んで何もかも無くした。

 モリス神官が親身になって教会で保護してくれてね。

 結婚式を挙げてくれる神官様だったんだけど。

 モリス神官に責任はないけど、周りが酷くて同情したんだろうね。

 教会で暫くぼ~としていたらしいけど。

 徐々に働く様になって、教会の会計やら孤児に刺繡を教えたりしていたんだけど。

 ある日ウエディングドレスを売って、そのお金でお店を借りて。

 男爵が手元に置こうとしただけはある。

 商才があったんだ。

 王太子様がご結婚されて、結婚ブームと出産ラッシュが起きて。

 彼女が作ったベビー服が、飛ぶように売れた。

 今ではかなり大きな店を構えているよ。


 そうそう。

 ダナウェン男爵の爵位を買った男がメリッサを探していてねー。

 何でも死んだ男爵にメリッサの事を頼まれていたんだと。

 爵位を譲る条件に。庭の隅にある小屋に住まわせて面倒見るってのがあったんだけど。

 彼が屋敷に来た時には、彼女は出ていった後だった。

 散々探したけれど見つからなくって。

 あたしと同じ王都の外を探していたみたいだ。


 そう言えば、カーター侯爵もエレクトラを探していたみたいだよ。

 使いの者がダンジョン都市にも来た。

 エレクトラもベルツも死んだって言っておいたよ。

 侯爵家とは関わり合いにならない方が良いよね。

 散々スキャンダルのネタにされたんだ。

 もういいだろう。

 子供はいないかと聞かれたけれど。

 ダンジョン都市の孤児院にいるんじゃないかと答えておいたよ。

 綺麗な子供だから直ぐに養子にもらわれて名前も変わっているんじゃないかって言っておいた。


 なんで王都にいるかって?

 シオンの事が気になってね。

 商人の警護でダンジョン都市を離れている内にエレクトラが死んでて。

 帰って来た時にはシオンはボレアス神官と王都に行ってしまって。

 ちゃんとお別れが言えなかった。


 エレクトラ?

 エレクトラは余り良い母親じゃなかったよ。

 ベルツが死んで酒浸りになって。

 元々男爵家のお嬢様で蝶よ花よと育てられて。

 男爵家は金持ちで使用人も一杯いたんだって。

 貴族のお姫様は一人じゃドレスも着れないし。子供もいたしね。

 そんな女が行き着く所は娼婦さ。

 美人だから客はついたさ。

 アル中でもね。

『酒はやめろ』って言ったって聞きゃしない。

 シオンは可哀想だったよ。

 あたしがあげたパンを母親の所に持って行ってたけど。

 碌に面倒見てもらえなかったようだ。

 逆に母親の面倒を見ていたよ。

 一緒に森でワイルド・ストロベリーを摘んだりしたね。

 酒が祟ってエレクトラが死んで。

 三年前にベルツが死んだ時、ボレアス神官に話した事があった。

 ベルツは元貴族のボンボンで、シオンの伯父さんが王都に住んでるって。

 ベルツとエレクトラは結婚してないよ。

 ダンジョン都市に来たときは一緒に住んでいたけど半年ぐらいかな。

 わたしが手紙を頼まれてメリッサが、行方不明になってて。

 ベルツは酒に溺れて……抱いちまったんだろうね。

 男ってしょうがないね~。

 それ一回でできちまったのさ。

 子供が産まれなきゃエレクトラを置き去りにして婚約者メリッサを探しに行くつもりだったんだろう。

 子供の顔を見るベルツはまるで焼印押されたみたいな顔だったよ。

 そんなことがあったせいで酒飲まなくなったね。

 養育費は払っていたさ。

 子は鎹って言うけど。鎹にならない夫婦もいるんだ。

 夫婦ですら無かったけどね。

『おシオンが悪い訳じゃない』ってよく言ってた。

 でも……足枷ではあったんだろう。

 家には寄り付かず。ダンジョンに潜りっぱなしだ。

 シオンが成人したら婚約者メリッサを探しに行くつもりだったのかねー。

 今となっては分からないが……


 あたしもね。気になっててさ。

 もしあの子が不幸だったらうちで引き取ろうって旦那と話し合ったんだよ。

 子供三人成人しちまって上の子は結婚してるんだ。

 部屋は幾つも空いているからね。

 王都の近くの村にゴブリン退治のついでにこっちに来たんだよ。

 それでシオンの伯父さん家を尋ねた。

 そしたらシオンはいないみたいで。

 使用人に聞いたら追い出されたらしい。

 何でもベルツのせいで次男と四男が亡くなったんだって。

 カーター侯爵の頼みで魔物の間引きをやらされていたらしいよ。

 普通は断るさ。侯爵の領地までお抱え騎士団を連れて行って、魔物を狩っても大赤字さ。

 しかも運が悪いことに魔物暴走スタンピードが起こってね。

 何とかギルドと協力して納めたけど。

 フォーレン家の被害が酷くてお抱え騎士がかなり死んだんだって。

 そう言えばベルツの知り合いに手紙を預かったのはその頃だったね。

 あれは……兄弟が死んだ事を知らせる手紙だったのかね。

 その後でベルツが死んで。

 ……。


 ああ。そうそう。シオンはてっきり孤児院で暮らしていると思ったら。

 メリッサが引き取っていたんだねえ。

 ビックリさ。てっきりメリッサは王都に居ないと思っていたから。

 この前メリッサがやっている店に行ったんだ。『ワイルド・ストロベリー』ってたかね-。

 赤ちゃんや子供の服なんか売ってる店さ。

 そうしたら、シオンが綺麗な女の人と出てきて。

 あの子幸せそうに笑ってたよ。

 ダンジョン都市ではあんな笑顔見たことはなかった。

 良かったよ。幸せそうで。

 すっかり都ボーイになってて。垢ぬけて。痩せこけていたのに普通になってて。

 少しふっくらしたかね。でも子供は太ったかなって思ったら、背に伸びるからねー。


 あっ!! いけない。都クッキー買い忘れる所だったよ。

 旦那のお土産さ。クッキーに目が無くてねー。

 所であんた絵描きさんかい?

 シオンをモデルにしたいって?

 頼みにきたのかい。彼女も美人だからモデルになって貰いたいって?

 でもメリッサちゃんに手を出したら潰すよ~。

 二人には幸せになってもらいたいからねー。

 あんたも子供を作れない体になりたくないだろ。

 あたしは冒険者だからねー。ゴブリンの頭ぐらい簡単に握り潰せれるんだよ。

 あんたの息子ぐらい簡単さ。

 あたしを敵に回さない方がいいよー。

 はっはっはっ冗談だよ。そんなに怯えなさんな。

 真面目にプロポーズするならいいさ。

 シオンが承諾するなら反対しない。

 あの子は人を見る目があるからねー。

 まあ。頑張りな。

 くれぐれも言うけど二人を不幸にしたら本当に潰すからね。

 しつこいって?

 おばさんはしつこいもんなんだよ。

 じゃね。また会おう。




           ~ Fin ~



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


        登場人物紹介


 ★ カルメン (歳は乙女の秘密)

   【ワイルド・ウオーキング】のリーダー。

    お節介おばさん。お前は何処のFBIだ!! 

    というぐらい情報を持っている。

    シオンやメリッサやベルツに対して好意的。

    エレクトラには冷たい。

    職業婦人だから独立した女性には好意的。

    三人の子持。長男は結婚している。

    次男と長女は成人して独立している。

    靴屋のトミーさんが旦那。今でもお熱い。

   【ワイルド・ウオーキング】卒業生と呼ばれる子供達が居るぐらい新人を大切に育ててる。

     

 ★ シオン  (9歳)

   両親を亡くした孤児。今はメリッサと暮らしている。

   ベルツとエレクトラの子供。


 ★  絵描きさん  (??歳)

    吾輩は絵描きである。名前はまだない。

    カルメンに釘を刺される。

    彼の息子は風前の灯火!!

 

 ★ ダナウェン男爵の爵位を買った男 (??歳)

   爵位を譲る条件としてメリッサを庭の小屋に住まわせる約束だったが。

   メリッサと行き違いになる。探していたが、カーターの使用人と間違われ。

   モリス神官に教えてもらえなかった。     

   後の話で出て来る。





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 2018/6/4 「小説家になろう』 どんC

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最後までお読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ベルツ氏…いい人だったんだろうけど、浅はかだったのね。かわいそうに。
[一言] べ、ベルツが不憫…。 よく考えたら、結婚式当日に手紙一つでいなくなるってアホかぁ!とか 息子連れて探しに行けばいいだろボケがぁ!とか いろいろ思うけど不憫。 まぁ子連れじゃあ合わせる顔がない…
[一言] シリーズ、楽しく読ませてもらいました。 つまり、ベルツは騙されたということですかね。エレクトラに懇願されて、彼女の新生活が落ち着くまで面倒を見るつもりが、気づいたら駆け落ちしたことになってい…
感想一覧
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