とある日の休日
私たちが桜海学園に入学してから少し経ち、この生活にも慣れ始めてきた。以前に五十嵐さんに学園を案内してもらってから彼女と接する機会も増え、あれから五十嵐さんとエリーちゃんは一緒にお茶会をしたりと仲良くしているようだ。
それはそんな日常の中にある休日の出来事だった。
その日、私は自分の部屋のベッドで寝ていた。鋼鉄の心臓との戦いが終わるまではあんなにも濃い生活を送っていたのだが、最近は秘密結社としての活動もあまりなく、落ち着いた日々を過ごしていた。今日は特に予定もなかったのでアラームは設定せず、気ままに起きたくなったら起き、のんびりと過ごすつもりでいた。
私が寝ていると突然、枕元で充電しているスマホから着信音が響き渡った。その音で眠りから目が覚めた私は寝ぼけ眼で画面を確認すると、そこにはエリーちゃんの名前が表示されていた。私はスマホを手に取り、彼女からの電話に出る。
「……おはよう、エリーちゃん。どうかしたの?」
「お姉さん、おはようございます。せっかくお休みのところ申し訳ないのですが、すぐに地下アジトにあるドクターの研究室まで来てください。詳細はそこで説明しますので」
エリーちゃんは電話でそう言うと、そのまま通話を切った。私はまだ若干の眠気が残る中、彼女からの突然の呼び出しに応じるために準備を始める。
とりあえず急を要するようなので最低限の身嗜みに整えると、私は指定された地下のアジトへと向かう。まず、地下のアジトに入るためにはこのアパートにある管理人さんの部屋かドクターの部屋からエレベーターに乗らなくてはならない。
私はドクターの部屋のエレベーターを使用する許可を得ているので、彼の部屋の合鍵を借りている。その合鍵を使ってドクターの部屋に入ると、地下のアジトへ降りることができるエレベーターの操作をする。すると、この部屋全体が揺れながら動き出し、地下のアジトへ向かって下降し始める。
もう何度もこのエレベーターには乗ってきたが、よく考えてみると部屋ごと地下に降りていくような大掛かりな仕掛けや、私が使っている魔法少女の杖といった物まで開発してしまうこの結社……と言うよりドクターはやはりすごい人物なのではないだろうか。
うん、普段のドクターの姿や行動からは正直なところ、そんなにすごいようには見えないのだが。
私がそのようなことを考えながらエレベーターに乗っていると、やがて部屋全体の揺れが収まり地下のアジトへと到着する。
部屋の扉を開けて外に出ると、そこは地下に広がる空間となっている。私はこの空間から繋がっている通路を歩いて、エリーちゃんから呼び出されたドクターの研究室へと向かう。
そう言えば、今はこの地下アジトにある部屋に光たちも住んでいたんだっけ。光はここからいつもエレベーターを使い、地上にあるドクターの部屋から学園に通っている。
ドクターの部屋から頻繁に光たちが出入りしていたり、私が合鍵を持っていることに周りから不審に思われるかもしれないので、現在はドクターの部屋ではなく光の部屋ということになっている。それならば、光のお兄さんやお父さんである銀河博士が出入りしていてもおかしくはないし、光とは親友の私が合鍵を持っていても問題はないだろうとのことだ。
……ん? 今まで私は光のような親しいどころか、普通に話したり遊んだりするような友人はいなかったのでよくわからないのだが、この世の中、親友同士なら合鍵を持っていても普通なのだろうか。まぁ今は深く考えていても仕方がないので、とりあえずはそれで良しとする。
考えながら通路を進んでいると、やがて見慣れた部屋の扉が見え始める。そう、大きなピンク色をしたハートを中央に施した鉄の扉だ。
うん……いつも思うことだが、何度見てもすごい趣味だ。
私はこのドクターの部屋にあるドアホンのボタンを押した。
「……お姉さんですね。急な呼び出しですみませんが待っていたのです。えっと……私だけではいろいろな意味で手に負えそうにないのでお呼びしたのです。それでは扉を開けますね」
ドアホンからはエリーちゃんの声が聞こえてくると、大きなハートが施された鉄の扉が開いた。そこから見えた部屋の中の様子は、一見すると以前から変わらず、様々な機械が散乱し、棚には薬品や本が並んでいた。そしてエリーちゃん、ドクター、アプリコット、銀河博士がそこにいた。




