天月美咲(あまつき みさき)
受付に行くと美咲さんは私に気付いた様でこちらに笑顔で手を振ってくれた。
「お、明ちゃんやほー。お久だねー。元気だったー?」
「美咲さん、お久しぶりです。一応は元気でやってますよ。せっかく連絡先も交換していたので、美咲さんとお話とかしたかったんですが……あれからいろいろとあってなかなか連絡できなかったんですよね」
「ありゃ、それなら仕方ないねー。私も明ちゃんと話とかしてみたかったから気軽に連絡くれたらいいよー。私からもそのうち連絡するからね」
「はい、よろしくお願いします。そういえば、今日の受付は先生じゃなくて上級生がやっているんですね」
「うんうん。先生は別の準備とかしてて、受付は生徒会や各クラスの委員長とかがやってるよー。私も一応は生徒会の一員だからこうしてお手伝いをしているわけなのだよ。というわけでこのまま受付を済ませちゃおうか。一緒にいるのは明ちゃんのお友達かな?」
「はい。この機会に私の友達を紹介しますね」
私は光たちのことを美咲さんに紹介する。
「こちらは私の親友の星野光です。美咲さんと知りあった後に仲良くなりました。そしてもう一人が川瀬悠里くんです。二人とも私と同じ高校からの入学です」
「へえ、お二人さんも明ちゃんと似たような感じなんだねー。私はこの学校の生徒会で会計をやっている天月美咲っていうんだ。私のことは美咲さんって呼んでくれたら嬉しいなー。これからよろしくねー。明ちゃん、私と連絡先を交換した時はまだ誰とも仲良くなれてなかったみたいだから少し心配だったけど、もうお友達ができていたみたいでよかったよ。まぁみんなこの町で生活してて困ったこととかあったら私を頼ってくれたらいいからね」
「天月先輩ですね。僕は川瀬悠里です。これからよろしくお願いします」
川瀬くんが美咲さんに自己紹介をする。しかし美咲さんは何か不服そうに少し頬を膨らませた。
「むぅ、呼び方が違うよー。天月先輩じゃなくて美咲さん。はい、やり直し」
「ご、ごめんなさい。み、美咲さん……」
呼び方を訂正された川瀬くんは少し困ったような表情をしながら美咲さんの名前を呼ぶ。
「うんうん。はい、よくできましたー」
名前で呼ばれた美咲さんは笑顔で川瀬くんに右手でサムズアップをする。
「それでは私も美咲さんと呼ばせていただきますね。私は明の『親友』の星野光です。よろしくお願いしますね。明が美咲さんとの出会いの後、私と運命的な出会いをしたんですよ」
ここでも光は私との関係を強調しているようだった。
「へー、運命的な出会いかー。私もある意味、明ちゃんとは特別な運命感じちゃうなー。明ちゃんが働く予定のバイト先と学校も同じだしねー」
美咲さんが光に対抗するようにそう言うが、光はそれには反応することなくこちらを見る。
「……働く予定のバイト先? 聞いてないんだけど、明バイトするの? お金に困っていたの?」
どうやら光は私がバイトをする予定だということの方が重要だったらしく、これに反応したらしい。
「え……あ、うん。バイトするって言ってもマスターの店でだよ。今のところはお金に困っているわけじゃないけど料理とか覚えられそうだし、それにマスターの店の制服ってメイド服みたいでかわいいんだ」
「……え? 明のメイド服姿! 制服貰ったら私にすぐ見せてね!」
「う、うん。その時は着てみるよ」
「それなら私も見てみたいのですよ」
光の勢いに押され気味だった私の背後からエリーちゃんの声が聞こえるのとともに、彼女がぎゅっと抱きついてくる。
鋼鉄の心臓との戦いからここ数日で一緒に魔法少女アニメを観たりして、エリーちゃんとの距離感も近くなって仲良くなれているような気がする。もしも自分に妹がいたのならこんな感じだったのだろうかと思う。
「エリーちゃん、中等部の受付終わったの?」
「はい。ただ私の場合は他の中等部の新入生とは違って今年で14歳なので中等部の二年生になりますから少し違いますが。まあそれはさておき、そこの人はお姉さんのお知り合いなのですか?」
エリーちゃんは私の後ろに隠れながら美咲さんのことを尋ねる。
「うん。この学園の高等部二年で生徒会の会計をしている天月美咲さんだよ」
「どうもどうも、天月美咲だよー。そのきれいな金髪と目……もしかして君が鳴海エリーちゃんかな?」
美咲さんはエリーちゃんに手を振り、微笑みながら話しかける。
「はい、確かに私がエリーですが……なぜ私の名前を知っているのですか」
「うーんっとね、これでも一応は生徒会の一員だからいろいろなことを知っているのだよ。今回は海外で大学を飛び級で卒業した金髪碧眼のかわいい子がうちの学園に来るって話を聞いていたからねー。とりあえず、中等部とか高等部とか関係なく学園生活に困ったことがあったらお姉さんに言ってねー。あと私のことは名前で美咲さんって呼んでくれると嬉しいなー」
美咲さんは私の後ろに隠れているエリーちゃんに近づこうとこちらに寄ってくる。
「……はい。わかりました。美咲お姉さんですね。これからの学園生活よろしくお願いするのです」
エリーちゃんはそう言うと私の背中から離れ、美咲さんにペコリと頭を下げた。
「……美咲……お姉さん? ねぇ明ちゃん聞こえた!? 何この娘! 可愛すぎるんだけど!」
美咲さんはエリーちゃんに抱きつこうとして飛びついた。しかしエリーちゃんはその動きから美咲さんの行動を予測したのか、再び私の背後へと隠れてしまった。そしてエリーちゃんに回避された美咲さんはそのまま地面に激突した。
「……このお姉さん、少し怖いのです」
その様子を見て私は苦笑いをした。




