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魔法少女と進める世界征服  作者: 北斗拳士郎
二章 秘密結社 鋼鉄の心臓(アイアンハート)
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眠れる獅子の世界征服活動 前編

 私たちは今、眠れる獅子の世界征服活動として繁華街にあるイベントスペースに来ている。

 こんな場所でどんな世界征服活動を行うのかというと……魔法少女ショーである。

 世界征服を企む秘密結社がなぜ、魔法少女ショーをするのか……ことの経緯は打倒、鋼鉄の心臓(アイアンハート)作戦の完了で行った打ち上げの翌日から始まった。


 打ち上げのあった翌朝。私は自分の部屋で寝ていた。


 ピンポーン。


 突然に鳴ったドアホンの音がするも、日頃の疲れが溜まっていた私はそれだけでは起きることがなかった。


 ピンポーン。ピンポン。ピンポーン。


 私が部屋から出てくる気配がないからなのか、ドアホンは連打され音が連続で鳴り続ける。


「お姉さん、寝ているのでしょう。早く起きるのです」


 外から聞こえてくる声はエリーちゃんのものだった。ドアホンだけでは起きない私を起こそうとスマホにも彼女から着信が入る。

 枕元で響き渡る着信音で目を覚した私は、寝ぼけ気味に画面を確認すると電話に出る。


「……エリーちゃん、どうかしたの?」


「やっと起きたのです。お話したいことがありますので、とりあえず中に入ってもいいですか?」


「……うん、ちょっと待ってね」


 私は起き上がり、ベッドから出るとエリーちゃんを部屋に入れるため扉を開ける。


「……おはよう、エリーちゃん。中へどうぞ」


「お姉さん、おはようございます。それではお邪魔しますね」


 エリーちゃんはそう言いながら、玄関で靴を脱ぐと部屋の中へと入る。


「とりあえず話って何かな?」


「ふふふ。まずはこれを見て欲しいのです」


 エリーちゃんは手にしていた鞄から何かを取り出す。出てきた物はどこかで見覚えがある杖のような物で、それは私が持っている魔法少女の杖とよく似ていた。


「以前にお姉さんが本契約をする時、ドクターに作るように頼んでくれた新しい魔法少女の杖なのですよ」


 そういえばそんなこともあったっけ。私が今使っているこの杖は確か、元々はエリーちゃんが自分が魔法少女になりたくて開発を頼んでいたらしい。それをドクターが勝手に設計を変えて魔法少女ではなく魔法男の娘専用にしてしまい、更には何故か男ではない私が契約できてしまった。

 憧れの魔法少女になれたのは嬉しいが、杖にまで男女扱いされた上に、事故扱いまでされたのは今でもやっぱり納得いかない。

 うん……これに関しては明らかにドクターの設計ミスだったのだろう。つまりドクターが全部悪い。


「ドクターが新しい杖作ってくれたんだ?」


「はい。お姉さんの杖と同じように本契約がなければ、杖との仮契約で付与された魔法しか使えないのですけどね。しかし、これで私も変身と身体強化魔法が使えるようになるのですよ!」


 話をするエリーちゃんの表情は、今までに見たことがないようなとても嬉しそうなものだった。

 大学を飛び級で卒業し、最年少でありながら眠れる獅子の参謀として、大人ばかりの組織で活動している姿からは想像をしにくいが、参謀としてではなく鳴海エリーとしての姿はきっと今が自然なエリーちゃんなのだろう。

 初めて会った時は総統が恥ずかしがり屋だと言っていたが、今まで私と接してくれている分に関しては特にそう感じることはなかった気がする。恐らく眠れる獅子のメンバーに、エリーちゃん以外は大人しかいなかったのでそのように見えていたのではないだろうか。

 それに何というか……妹のようでかわいい。


「というわけでこの杖の効果を早速ですが、試したいと思うのでお付き合いいただきたく来たのですよ」


「それはいいけど、魔法に関してなら私よりドクターに頼んだほうがいいんじゃない?」


 私がそう言うと、エリーちゃんは明らかに嫌そうな表情になる。


「……ドクターにはあまり借りを作るようなことはしたくないのです。それに魔法少女のことなら実際に魔法少女であるお姉さんや、人形使いのお姉さんに聞くほうがいいのです」


「変身と身体強化だけなら私にも教えられそうかな」


「それでは早速ですが、変身魔法を試してみるのです!」


 エリーちゃんはそう言うと、杖を手に持ちながら立ち上がり、変身魔法を発動させようとする。


 ……え? 私の部屋の中で発動させるの?


 私も何度かは部屋で変身魔法の練習はしてきたが、物をある程度片付けてからでないと杖の形状変化などでひどいことになりかねない。


「ちょっと待ってエリーちゃん!」


 私はエリーちゃんの変身魔法を止めようとした。しかしエリーちゃんの杖からは魔法が発動する気配がなかった。


 ……あれ? 何も起こらない?


「おかしいのです……変身魔法が発動しないのです。確か変身魔法の発動は杖に触れた状態で魔法少女に変身した自分をイメージすることでしたよね?」


「うん。まずは杖の形が変わって、それから変身魔法が発動するよ。確かその杖と仮契約出来ているなら初めて触れた時、仮契約の完了として魔法が勝手に発動するから一度は変身できていると思うんだけど……」


「……出来てないのです」


「え?」


「……そういえば杖に触れてからまだ一度も魔法が発動していないのです。……はっ!? まさか、またドクターが変な設計でもしたのでは!」


 私の杖がそうだったように、今回もあのドクターなら何らかの設計を加えていてもおかしくはなさそうだ。


「ドクターに文句を言いに行くのですよ! アジトにあるドクターの部屋にいるはずなのでお姉さんも一緒に来てください!」


 私はエリーちゃんに半ば強引に手を引かれ、管理人さんと彼女の部屋へと入るとそこから地下のアジトへ向かうべく、エレベーターを起動させる。部屋全体が揺れ出し、地下へと下降をし始める。そういえば管理人さんの部屋もエレベーターになっていたんだっけ。

 今まではドクターの部屋のエレベーターでアジトへ行っていたので、いつもと違って何だか新鮮だ。

 そのようなことを考えていると、やがて地下へと下降していた部屋の揺れは収まり、眠れる獅子のアジトへと到着した。


 部屋から外へ出ると、そこは見慣れた地下に広がる空間だった。

 私とエリーちゃんはアジトの通路を歩き、ドクターの部屋を目指す。そのまま少し歩き続けると、やがて彼の部屋の目印となる大きなピンクのハートを中央に施した鉄の扉が見え始める。


 うん……相変わらず、すごい趣味だ。


 ドクターの部屋の扉前に到着すると、エリーちゃんはドアホンのボタンを押した。


「ドクター! いるのでしょう! 早くここを開けるのです!」


「……あら。エリーちゃんじゃないの。何の用かしらん。まぁいいわ。開けてあげるから少し待ってなさいな」


 彼の言葉通り少し待つと、大きなハートが施された扉が開く。

 部屋の中の様子は以前に見た時と変わらず、様々な機械が散乱し、棚には怪しい薬品や本が並んでいた。


「あらあら。わざわざここに来るなんてどうしたのかしらん?」


「この杖なのですが魔法が発動しないのです。またドクターは魔法少女の杖に変な設計でもしませんでしたか?」


 エリーちゃんは手にしていた杖をドクターに手渡す。


「……あら。ごめんなさいねん。この杖はエリーちゃんに渡す予定だったものじゃなくて、新しい魔法男の娘用の杖だったわ。本当はこっちがエリーちゃん専用の杖よん」


 ドクターはそう言うと、部屋の奥からもう一本の杖を取り出した。


「新しい魔法男の娘用って……ドクター、やっぱりまだその計画を諦めてなかったんだ」


「うふふ。アタシが魔法男の娘計画を諦めるわけないじゃないの。まぁ今はそれよりも……はい、エリーちゃん。こっちがあなたの杖よん」


「……なんで間違えるのですか。そもそも仮契約ができなかった時点でなぜ気付かなかったのです? とりあえずその杖を受け取るのですよ」


 エリーちゃんはドクターから本来受け取るはずであった杖に手を伸ばす。そしてその杖に彼女の手が触れた瞬間、杖は輝きだし周囲を眩い光で包み込んだ。やがてその光が収まると、杖がハルバードの様な形状に変化した槍と、白いフリルやリボンで装飾された黒い軍服ワンピース状の魔法少女服を着たエリーちゃんがそこに立っていた。


「……おぉ、変身できたのですよ!」


「うふふ。ちゃんと変身できたから仮契約は成功したみたいねん。これで一応はエリーちゃんも身体強化魔法を使うことができるわ。ただ、身体強化魔法の効果は元々の身体能力に依存するのよね。だからさすがにか弱いエリーちゃんは山田ちゃんのような脳筋……いえ、無茶な使い方は出来ないから気をつけるのよん」


「……ドクター、何か言いたいなら聞こうか?」


 私は出来る限りの笑顔でドクターに言う。


「うふ。あらやだ。山田ちゃんったら。特に何もないわよん。さて、これで用は済んだでしょう? それじゃあ、アタシは新しい研究の続きがしたいから失礼するわねん」


 ドクターはそう言うと、彼の研究を続けるべく部屋の奥へと戻っていった。


「とりあえず、仮契約できてよかったね。これでエリーちゃんも魔法少女になれたんだね」


「はい、いろいろとお騒がせしたのです。今は仮契約なのでちゃんとした魔法は使えませんが、いつか本契約をして正式な魔法少女になってみせるのですよ。あと……もし……なのですが……お姉さんさえよければこの後ですが、魔法少女アニメ一緒にみませんか?」


「うん、いいよ。私も久々にみたくなってきたよ」


 この後、私たちはエリーちゃんの部屋で夜まで一緒に魔法少女アニメの鑑賞会を行ったのであった。そして、これが恐らく今回の征服活動へと繋がったのだろう。


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