友達
私は光ちゃんに手を引かれるままにベッドへと上がる。半ば強引にではあったが確かに彼女の言うとおりなので、ここは素直に従うことにする。
ベッドボードにあるリモコンを使い部屋の明かりを消し、シングルのベッドに二人で寝転ぶと寝られないことはないがギリギリの幅だった。
「……やっぱり二人だと狭いね」
「うん。狭いけど……明ちゃんと一緒なら嫌じゃないよ」
部屋の明かりが消え、暗くてはっきりとは見えないが、お互いの息がかかるほど近くに光ちゃんの存在を感じる。
「……あのね、明ちゃん。もう眠たいかもしれないけど、少しだけお話いいかな?」
「うん」
「さっきはちゃんとお礼を言えなかったけど……お母さんのこと、ドクターに頼んでくれてありがとう」
「私は頼んだだけだよ。私にはそれくらいしかできないから」
「ううん。明ちゃんがいてくれたから私は救われたの。今はこうやってドクターと協力関係を築けたけど、どちらにしても私たちは勝てなかったと思う。もし明ちゃんがいなかったら私はただ鋼鉄の心臓として負けて、そのまま何もかも終わっていたんじゃないかな」
「……確かに。私がいなくてもドクターやマスターが無茶苦茶強いだろうからなぁ」
あの二人の強さは実際に鍛えられた私には嫌でもわかる。
「とりあえず、鋼鉄の心臓……ううん、私たち家族はこれから新しく前に進むことができると思うの。本当にありがとう」
「でもまだ必要なこととかあるみたいだし、私にできることがあればもちろん手伝うからね」
「ありがとう。それともう一つ……私が暴走した時に明ちゃんの人形を出したことなんだけど、怒ったり引いたりしてない? 自分から聞くのも変だとは思うんだけど、このまま触れられないままなのも気になっちゃって落ち着かなくて……」
どうやら光ちゃんは私の姿をした人形のことを気にしているようだ。確かに驚きはしたけど、私の計画のためにやってくれているのなら大して気にするつもりはなかった。しかし呪いの藁人形のような目的で作られたのであれば、さすがに引いていたかもしれないが。
「怒ってもいないし、引いてもいないよ。私のためによりイメージしやすいようにシミュレートしてくれたんでしょ? だったら気にしなくていいよ」
「うん。私と兄は幼い頃からお母さんの看病で友達と遊ぶことが出来なくて、今まで明ちゃんみたいに仲良くなれた友達っていなかったの。だから暴走した時、明ちゃんに嫌われることがすごく怖くなっちゃって……」
暴走したあの時、光ちゃんは私に嫌われることを特に恐れていたんだろう。そして今もそのことを気にしているみたいだ。
私も光ちゃんと出会うまでは周りから怖がられることが多く、仲のいい友達はいなかった。
私と光ちゃんはある意味、似ているのかもしれない。
この前に二人で遊んだ時、ナンパ男に私がキレたことも光ちゃんに怖がられたのではないか……引かれたのではないかと不安な気持ちだった。きっと光ちゃんもこの時の私と同じような気持ちなのだろう。
「さっきも言ったとおり、私は光ちゃんのことを大事な友達だと思ってる。それでもまだ不安だと思うなら私から一つお願いがあるんだけどいいかな?」
「……うん」
「それじゃあ……これからはお互いにちゃん付けはなし! 私は光と親友になりたい! 今よりもっと仲良くなりたいからそうしたい!」
私はお互いを呼び捨てで呼び合うことを提案する。
「うん! 私も……もっと明ちゃん……ううん、明と友達以上に仲良くなりたい!」
私たちは今以上にお互いが仲良くなれるように呼び捨てで呼び合うことにした。これから先はただの友達ではなく、親友として一緒にいられるように。
「これからはいろいろと大変だと思うけど、一緒に頑張ろうね。光」
「うん。明と一緒なら私、頑張れるよ」
この後、私は光と今後のことを話していた。また一緒に遊びに行きたいことや、新しく始まる高校生活のこと。話す内容はとても楽しいことだったが、私は疲れから再び急な眠気に襲われた。
「……光、ごめん。ちょっと眠くなってきちゃった。先に寝させてもらうね」
「うん。私もちょうど眠たくなってきたから一緒に寝るね」
「うん。おやすみ、光……」
「おやすみ、明……本当に……とうね……」
光のおやすみを聞いた時、ちょうど意識が薄れていく私の頬に何か柔らかい感触があったような気がしたが、それを確認することもなく私はそのまま眠りに落ちた。




