お泊まり
今まで自分以外の人を入れることがなかったのであまり意識はしていなかったが、私の部屋は引っ越してきて最初に少し整理をしてからは全くの手付かずで、多くの荷物はまだダンボールに入った状態で部屋の隅に置かれたままだった。
「ここが明ちゃんの部屋……確かに生活に最低限の物しかないね」
「この町に来てからはいろいろとあって忙しくてあまり荷物の整理も出来なかったんだよね。着替えは私のを貸すから用意している間にシャワー浴びちゃってくれたらいいよ」
私はそう言うと光ちゃんをお風呂へと案内する。そして光ちゃんがお風呂場に入っている間に私は彼女に貸すための着替えを用意する。部屋の隅に置かれたダンボールの中からまだ整理の出来ていない服を探すと、私が普段部屋着として使っているジャージが何着か見つかった。
「ジャージじゃなくて、これがかわいいパジャマだったなら……憧れのパジャマパーティーだったのになぁ……」
その前に部屋ももっとかわいい感じにしないといけないなぁっと思いながら着替えとタオルの用意が出来たのでお風呂場の前にそれを置いておく。
それからしばらく部屋のテレビを見ながら光ちゃんを待っていると、お風呂からあがった彼女が部屋に入ってきた。
「着替えありがとう。明ちゃんはパジャマじゃなくてジャージ派なんだね」
「ジャージ派ってわけじゃないけど、ずっとジャージだったから。本当はパジャマも近いうちに買うつもりではいたんだけど……かわいさも何もなくてごめんね」
「ううん。私はどれでも明ちゃんが貸してくれるなら嬉しいよ」
「それならよかった。それじゃあ次は私が入ってくるね。もし眠かったら、私のことは気にせずベッドで寝てくれたらいいからね」
私は光ちゃんにそう言い、自分もシャワーを浴びるためにお風呂場へと向かう。
それにしても……改めて考えると、この町に引っ越してからは本当にいろいろあった。期間にしてみればまだ二週間ほどでしかないが、今までこんなにも濃い時間を過ごしたことは当然ながらなかった。
あれこれと今までのことを思い出しながらシャワーを済ませ、お風呂場から出てタオルで体を拭いて着替えると、濡れた髪をドライヤーで乾かす。
そして光ちゃんのいる部屋へと戻ると光ちゃんはテレビを見ていた。
「さすがに光ちゃんもいろいろとあって、疲れてるだろうからもう寝ちゃってるかと思ったけど、まだ起きていたんだね」
「うん。明ちゃんも疲れてるだろうし、先に寝ちゃうのが申し訳なくて」
「気にしなくていいのに。それじゃあお互い疲れてるだろうし寝ちゃおうか。光ちゃんはベッド使って」
「それはありがたいけど、明ちゃんはどこで寝るの?」
「私はクッションと毛布で適当に寝るから大丈夫だよ」
私はそう言いながら部屋にあるクッションとダンボールの中から毛布を取り出して寝るための準備をしようとする。
「待って。それなら私が床で寝るから明ちゃんは自分のベッド使って」
「いや、私はいいよ。床で寝る……と言うより、よく座りながらでもそのまま寝落ちることがあるからベッド以外でも寝られるし」
「ダメだよ。私は泊めてもらっているのに明ちゃんを床で寝かせることになると気になっちゃうよ」
「それなら私も気になっちゃうんだよなぁ」
私たちはお互いにベッドを使うのはどちらなのかを譲り合い続けた。
「……このままだと決まらなさそうだから間を取ってもいい?」
確かにこのままだと話が進みそうにないので、私は頷き光ちゃんの話を聞いてみることにする。
「えっとね、二人で一緒にベッドを使えばいいと思うの! それなら二人ともベッドで寝られるし!」
「……え? このベッド、シングルだから二人だと狭いよ?」
「いいの!」
「私、あまり寝相いい方じゃないと思うよ?」
「いいの! ほら、このままだと結局また決まらないだけだから一緒に寝よう!」
光ちゃんはそう言うと、ベッドまで私の手を引いた。




