ドクターはイケメンと二人きりになりたい
「ドクター、こんなところにいたんですか……エリーちゃんがドクターとの連絡がとれなくて困っていましたよ。とりあえず鋼鉄の心臓のボスの身柄はマスターが確保したようなので作戦は成功したようですよ」
「あら。そうなの。連絡については申し訳ないわ。早く落ち着いてイケメンと二人きりになりたかったのだけれど……なかなか起きなくて結局楽しめなかったわ。まあそれはまた後のお楽しみにするとして……山田ちゃんと一緒にいるあなたがお友達の人形使いの魔法少女ね。男以外はあまり興味はないのだけれど、自己紹介するわねん。アタシはドクターと呼ばれているわ。あなたもそう呼んでくれて構わないわよん」
「……はい。魔法少女以外に魔法を使える人を初めて見ました。でも今はそれよりも兄は無事なのでしょうか?」
「うふ。そういえばアプリコットちゃんの映像であなたはこのイケメンを兄と呼んでいたわねん。まあ、それは心配ないわ。ただアタシの魔法を受けて気絶しているだけだから」
ドクターはそう言うと部屋の奥にあるベッドを指差した。そこには仰向けで寝かされたイケメン幹部がいた。
見たところ、特に大きな外傷もなさそうである。
その様子を確認した光ちゃんは安堵のため息をつく。
「うふふ。安心したようでよかったわ。それにしても山田ちゃん……あなたの魔力の質が戦う前より上がっているようねん。魔力の回復も思っていたよりも早いわ。やっぱり山田ちゃんは雷属性との相性がいいみたいだから実際に使って成長をしているようね。初めての実戦でここまで成長するのはさすがのアタシも予想外なのだけれど」
暴走した光ちゃんとの戦いで、変身魔法も維持できないくらいまで魔力を消耗したはずだった。しかし、今は魔法少女として私よりも経験が上である光ちゃんよりも、私の方が魔力の回復が早いようだった。
「さて、あなたたちも二人だけで話したいこともあるだろうから隣の部屋を使うといいわよん」
ドクターにしては珍しくこちらに気を遣ってくれたのか、私と光ちゃんが話をしやすいように話を振ってくれる。私はドクターに心の中で感謝をした。
「あら。そうそう。あなたは確か光ちゃんだったわよね。聞きたいのだけれど、このイケメンのお名前はなんていうのかしら?」
「空。星野空です」
「うふ。教えてくれてありがとう。空くんね。覚えたわよん。それじゃあアタシは空くんと二人きりになりたいからあなたたちはお行きなさいな」
ドクターはそう言い、私たちの背中を押しながら部屋から追い出そうとする。
……前言撤回。なんとなくその可能性のほうが高いのはわかってはいたが、やっぱりこの人はただ単に光ちゃんのお兄さんと二人きりになりたいだけのようだった。
無理矢理部屋から追い出された私たちはドクターの言った隣の部屋に入る。部屋の間取りはさっきの部屋とほぼ同じようだった。
疲れている私たちはとりあえず落ち着くためにベッドに腰をかける。
「無理矢理追い出すなんてひどいよね」
光ちゃんと話したいことや聞きたいことはたくさんあったが、お互いの正体を知ってからこうして二人きりになるのは初めてだったこともあり、すぐには話題を出しにくい気まずさがあった。
しかし、いつまでもこうしているわけにもいかないので、私は意を決して話を切り出した。
「あのね、光ちゃん。聞きたいことと話したいことがあるんだ」
「……うん。もう鋼鉄の心臓は壊滅状態みたいだし、今更隠していても仕方ないよね。いいよ、私が……ううん、私たちがなぜ鋼鉄の心臓で行動していたのか話すね」
光ちゃんも意を決したのか、鋼鉄の心臓で人形使いの魔法少女として行動をしていた理由を話しだした。




