馬型ロボットに乗った王子様のような魔法少女
森の中を走り抜けるアプリコットの背中に乗りながら目的地の山小屋までどれくらいの距離なのかと彼に尋ねると、私たちがいた広場からはそれほど遠くにあるわけではないようだ。
森の中は足場が安定しないのか、アプリコットが走ると結構揺れる。
「……うぅん。私は一体どうしたんだっけ。え? あ、明ちゃん!?」
その揺れが影響したのか、私に抱きかかえられている光ちゃんが目を覚ました。やはり人型のままのアプリコットの背中に乗らなくてよかったと安心をする。
「さっきはごめんね。私が強く抱き締め過ぎたみたいで光ちゃんを気絶させちゃったんだけど……気絶する前のこと、どこまで覚えてる?」
「確か……私と戦っていた魔法少女の正体が明ちゃんだったところ……まではちゃんと覚えてるかな? その後のことはあまり思い出せないかも」
どうやら光ちゃんは暴走中の記憶はないようだった。
「そういえば山田様。エリー様からお聞きしましたが、人形使いの魔法少女様はお友達だったのですね」
「え!? 馬が喋って……もしかしてこれが明ちゃんの契約した魔獣? でもよく見ると機械のような……それにどこかで聞いたことがある声」
「あ、一度お会いしたのはこの姿ではありませんでしたね。以前にあなたに縛られて破壊されたロボットを覚えていらっしゃれば、それが自分でございます。それはそうと目的地にそろそろ到着致しますよ」
アプリコットが話し終えるのと同時に彼は足を止めると、そこには森の中にひっそりと建つ山小屋があった。
私はアプリコットの背中から降りると、光ちゃんの手を取って降りるのを手伝う。まだ暴走時の消耗と気絶から目が覚めて間もないためか着地の瞬間、光ちゃんはバランスを崩しそうになる。私は握った光ちゃんの手を引き、自分の方へと抱き寄せて彼女を支える。
「あ……明ちゃんありがとう。ごめんね、まだ少し本調子じゃないみたい」
「それじゃあ私に任せて。少しだけど体力も魔力もさっきより回復したから」
私は光ちゃんをお姫様抱っこをした。突然抱き上げられた光ちゃんはその状況に驚き慌てる。
「え!? 明ちゃん!?」
「ごめん、驚かせちゃったかな。それともこの抱き方は嫌だった?」
「そんなことないよ。その……すごく嬉しい。あのね……私のことを助けてくれて、さっきもロボットだから本物の馬じゃないけど……なんて言うか……王子様みたいでかっこいいなって思ったの」
「王子様じゃなくて、一応お姫様とかに憧れてるんだけどなぁ」
私は光ちゃんをお姫様抱っこしたまま山小屋の入口前まで歩こうとすると、いつの間にか馬のような姿から人型へと戻っていたアプリコットが入口の扉を開けてくれた。
「お入りくださいませ、お嬢様方」
私たちは中に入ると、入口の側にある照明のスイッチを操作して明かりをつける。玄関から上がると狭い通路があり、その通路を挟むようにいくつかの部屋がある。
まずは光ちゃんが落ち着けそうな部屋を探すため、近くにあった部屋の扉を開けてみた。
その部屋は薄暗く奥側が間接照明で照らされていた。入口側からは部屋の奥の様子がわからないので確認するために中へと入ると、そこには既に誰かがいるようだった。
「あら? 山田ちゃんじゃない。その様子だと……暴走したお友達は止められたようねん」
その誰かは私より先に戦闘を終わらせてどこかに行っていたドクターだった。




