最低な身バレ
戦いを再開する前に私は先程の違和感について一つの考えを思いついていた。これをまずははっきりさせるため、人形使いの魔法少女にこのことを聞いてみる。
「ねえ、決着をつける前に一ついいかな?」
「はい、どうぞ」
森の木を物質変換すれば私を追い詰めやすかったはずなのに、人形使いの魔法少女はなぜ森の中まで追って来なかったのかだ。
それはあえてしなかったのか?
それとも出来なかったのか?
「さっき私が森に入った時、人形だけに追わせてなぜ木を物質変換して使おうとしなかったのか疑問だったんだ。そこで私なりに考えてみたんだけれど……動物や植物のような生き物は物質変換することが出来ないんじゃないかな」
「なぜ、そう思うのです?」
「最初は石を物質変換して使っていたよね。あとは私が地面に穴を開けた時に利用した岩だったかな。広場で物質変換するならたくさん生えている草も使えばいいのに、わざわざ穴の開いたところの岩だけを使うのに違和感があった。森でも木を使わなかったからね」
「物理的な戦い方からただの脳筋かと思いましたが……案外鋭いのですね」
……なんだか今すごく失礼なことを言われた気がする。『男女』扱いや喧嘩ばかりしていたことから不良のように思われがちだったが、これでも一応は学校での成績は良い方だった。それに高校デビュー計画のためにも頑張って勉強もしてきたのだ。
しかしそれを相手に言っても仕方がないので黙ってそのまま話を聞き続ける。
「今更隠しても仕方がないので正直に答えましょう。そうです。あなたの推測通り、私の魔法は非生物しか物質変換出来ません」
話しながら人形使いの魔法少女は幼い少女の人形を再び自分の近くへと呼び戻すと、私が大鎌で両断した長い髪の少女の人形に片手を向ける。すると両断された人形は石を物質変換させた時のように宙へと浮かぶ。
「私の魔法はですね。物質の変換をするだけならそこまで魔力を使わないんですよ。でも変換したものを操作することには結構な魔力を消費します。同時に操作するものが多ければもちろんその分消費はしますし分散もしてしまいます。なので私の全ての魔力を一つに込めてあなたを倒します!」
人形使いの魔法少女は幼い少女と長い髪の少女の二体の人形に両手を向けるとそれを物質変換する。二体の人形は分解されその姿を消す。その後、光の粒のようなものが集まりだし、新たな一つの形となる。
その形は少しずつ人型となり、二体の人形だったものはやがて一体の人形へと変化する。そしてその人形が姿を現す。
「この人形は私のことをいつも助けてくれる大好きな友人と同じ姿をしています。大切な存在だからこそ、私の全てを預けられる……さあ、全力で戦いましょう」
私はその人形の姿を見て驚きを隠せなかった。それは魔法少女に変身する前の私、山田明の姿をしていた。
しかも肩にかかるくらいの長さの髪は赤いリボンでツーサイドアップにされ、服装は可愛らしいフリルのついた白いブラウスと黒のコルセットスカートとなっていた。
そんな服も着てみたい気持ちはあるが、普段の私がまだ着ることができないような服装だ。
「その人形……なんで私の姿をしているの? え? もしかして……光ちゃんなの?」
「……え? ま……まさか、明ちゃん?」
『え? えぇぇぇぇぇっ!?』
私たちは突然に知ることとなったお互いの正体に驚くと同時に声をあげる。まさかの人形使いの魔法少女の正体に理解が追いつかず、少しの沈黙のあと気まずそうに光ちゃんが声を出す。
「あ……あのね、明ちゃんこれは違うの!」
私の姿をした人形を慌てて背後に隠しながら光ちゃんは弁解しようとする。
「こ、この服とかは明ちゃんに似合いそうなのをシミュレートしてみるために着せているのであって決して変な気持ちで着せているわけじゃないからっ!」
「え? あ、うん……ありがとう、私のために考えてくれてたんだ」
「う、うん。えっと……さっきまで戦っていた魔法少女が明ちゃんだなんて気付かなかったな! いつもと髪の色も長さも全然違うし……それにその服もすごく可愛くて似合ってるよ!」
「ほ、本当? 私も光ちゃんだったなんてわからなかったよ。顔は前髪ではっきりと見えなかったし……それから昨日、白いワンピースを着ているのを見た時よりその……胸が大きかったから」
そう。私と光ちゃんは決して平たいわけではない同じくらいの大きさのはず。しかし魔法少女の姿をした今の光ちゃんは明らかに普段より少し大きいのだ。
「こ、これは変身のイメージで盛っているわけじゃなくて変身したらこうなっちゃうだけなの!」
「そ、そうなんだ……」
光ちゃんの焦る様子から恐らくは変身のイメージでそうしているのだろう。ということは私も変身する時はそうイメージすればいいのではないだろうか。
そして再び気まずい沈黙がしばらく続くと光ちゃんの様子が変化する。
「どうしよう……引かれるよね……明ちゃんには嫌われたくない……どうしようどうしようどうしたらいいのどうしたらいい……」
光ちゃんは俯きながら微かに聞き取れるくらいの小さな声で呟き出す。
「……どうしたの? 光……ちゃん?」
「知られたくなかった……明ちゃんには知られたくなかった……嫌……イヤ……イヤアアァァッ!」
突然、光ちゃんが叫んだ直後に彼女の魔力が凄い勢いで溢れ出す!
その魔力の勢いは衝撃波のようになり光ちゃんの周囲へと拡がる。私は咄嗟に大鎌と身体強化魔法で防御態勢をとるも衝撃で後方へと押し出されてしまう。
それから間もなくして衝撃が収まるも、光ちゃんの様子はおかしいままだった。さすがにこの状態が普通ではないと感じた私は契約の魔石を通じて少し離れた場所にいるであろうドクターに通信魔法を試みる。
「ドクター! 聞こえるなら返事して!」
(……あら、山田ちゃんじゃない。今のアタシはお楽しみ中よん。出来れば邪魔しないで欲しいのだけれど)
「こっちはドクターのお楽しみどころじゃなくなったんだよ! ちょっと私の話を聞いて!」
(……仕方ないわねん。手短に話しなさいな)
私はドクターにこれまでの経緯を簡単に説明した。
(うふ。相手の魔法少女が山田ちゃんのお友達だっただなんてね。まあ今はそのことはいいわねん。そのお友達はきっと、山田ちゃんに知られたくなかったことを知られてしまったことによるショックで感情が昂って魔力が制御出来なくなって暴走しちゃってるんだわ。あまりその状態が続くといろいろと危ないかも知れないから早く止めた方がいいわよん)
「……暴走? それはどうすれば止められるの!?」
(うふふ。それは相手を気絶させてしまうのが一番手っ取り早いんじゃないかしらん。そうね。身体強化魔法だけでそこまで戦えたなら上々だわ。いいわよん。ここからは雷魔法を使いなさい)
「……わかりました。やってみます!」
(うふ。頑張りなさいな)
ドクターとの通信魔法を終えると光ちゃんの暴走を止めるため、私は自分の本来の魔法を解放する!




