アプリコット散る
「うふ。壊れたアプリコットちゃんを回収した時はこの辺りまでしか映像が確認できなかったのだけれど、修理が完了したことで新たなことがわかったのよん。ここから先に映る人物は特に山田ちゃんに関わってくるだろうからよーく見ておいてねん」
ドクターにそう言われた私はより注意して映像を観続けた。
先程、飛び出してきたその人物はアプリコットに対して背を向けていた。後ろ姿しか映っていなかったが、黒の長い髪をツーサイドアップにしていて、紺の様な色をベースにところどころにフリルがあしらわれた可愛らしい服を着ている少女だった。
「攻撃対象以外による割込みを感知! 攻撃行動の一時停止及び回避行動不可! 警告、直ちにその場から離脱してください!」
アプリコットは割り込んできた相手を避けようとするが、電撃を利用した突進の勢いは途中で止めることが出来ず、その少女へと突っ込もうとしていた。
「いえ、お気になさらず。私がこの場を動く必要はありませんので」
アプリコットが警告をするも少女はその場を動かずにそう言った。そしてアプリコットが少女へ激突しそうになった瞬間、急にアプリコットはバランスを崩し少女の脇を転がるようにして通り過ぎていった。
アプリコットはバランスを崩し勢い良く地面に倒れた。その状態から一度、体勢を立て直すために立ち上がろうとするが上手く立ち上がることが出来なかった。自分自身を確認してみるとワイヤーのような糸に束縛されて身動きが出来ずにいた。
「これは……一体、何が? これはあなたの仕業……ですか」
何が起きたのか理解することが出来なかったアプリコットは地面に倒れながら目の前に立つ少女を見上げた。
「はい。すみませんがあなたの足に糸を絡ませてバランスを崩したのと同時に束縛して無理矢理転倒させました。それともう一つ、その糸は電気を通さないので電撃は無駄ですよ」
少女は再びアプリコットに対して背を向け、イケメン幹部のいる方へと歩き出した。
「電撃を通さない糸で束縛しているとはいえ、相手に背を向けるとは……隙だらけですよ!」
その様子を見ていたアプリコットは糸による束縛から逃れようと少女へ向けて腕の銃を撃った。しかし、少女の背後から放たれた銃弾が届くことはなかった。
アプリコットが射撃を行ったその瞬間、少女を守る様に二体の人影が銃弾を弾いた。その人影のうちの一人は黒い髪の少女と同じ歳くらいで少しウェーブのかかった長い銀髪でメイド服を着た少女の様に見える。もう一人はエリーちゃんと歳が近そうな幼い少女で、髪はセミロングくらいの長さでもう一人と同じ様に銀髪でメイド服を着ていた。
「あ、紹介しますね。この二人は見た目では人間と区別がつかないかと思いますが私の人形です。この二人がいる限り私に隙はありませんので」
アプリコットの電撃を受け地面に膝をついたままのイケメン幹部の傍まで歩いた黒い髪の少女は、振り返り糸で束縛されたアプリコットを見ながら二人の人形を操って見せた。
「兄さんは遊びすぎです。今までの性能テストの機械兵達が大したことが無かっただけで慢心し過ぎだったんですよ。さすがにこれ以上は時間をかけ過ぎですのでこの場は私が終わらせます。いいですね?」
「……ああ」
「それではロボットさん。あなたには申し訳ないのですが、私達にも目的がある以上ここであなたを倒させて頂きます」
黒い髪の少女がそう言い、二人の人形と糸を操りアプリコットへ攻撃を行おうとした瞬間で映されていた映像は終わった。どうやらこのタイミングでアプリコットは破壊された様だった。




