始まる新生活
男女と呼ばれ続けてきた私ではありますが、本当はずっと女の子らしさに憧れていました。でも周りに対する恥ずかしさからそれを表に出すことはできませんでした。中学を卒業するのをきっかけに実家から遠く離れた町の高校を受験し晴れて合格。過去の私を知る者のいないここなら髪も少し伸ばし、服装や仕草も女の子らしい私でいても恥ずかしくなさそうだし、高校生で独り暮らしという憧れのシチュエーションに私のこれからの生活はすごくワクワクに満ちたものになっていくことでしょう。
私が住むことになったアパート名はリヴェール・ライオンで私の部屋は201号室。ちなみにこのアパートの管理人さんは私の下の部屋である101号室に住んでいるらしい。中学校を卒業してから高校の入学式までの期間に引っ越しを済ませ、部屋に届けられた荷物の確認を終えた私は管理人さんに挨拶をする為に101号室に行く。そしてドアホンを鳴らすと部屋の中から誰かが扉に近づいてくる音が聞こえた。
「はい、どちら様で?」
扉が開き、そこからやや痩せ気味な体格で髪はライオンの鬣のような白髪で髭を伸ばしたお爺さんが出てきた。
「今日からこちらの201号室に住ませていただく山田明です! 今回は引っ越しの挨拶に来ました! よろしくお願いしますね!」
「あー、君が山田さんかね。儂は鳴海源蔵。よろしく。初めての独り暮らしと聞いているが何かわからないことや困ったことがあれば聞きに来るといい」
「はい、ありがとうございます!」
私は管理人さんが優しそうな人で良かったと安心した。
「あぁそれと……おーい、こっちに来なさい」
管理人さんが部屋の奥にいる誰かを呼ぶと一人の少女が歩いてきた。その少女は碧眼で長い金髪をツインテールにしていた。
「この子は儂の孫で少し理由あってここで預かっておる。息子の嫁がイギリス人なのでハーフじゃから髪と目はこの通りじゃ。ほれ、お前も挨拶しなさい」
「よろしくです」
私も少女によろしくと挨拶を返すとその少女は軽く頭を下げるとまた部屋の奥へと戻っていった。
「名前はエリーじゃ。少し恥ずかしがりなところもあるがこれから仲良くしてやってくれると助かる」
「はい是非」
私は管理人さんとの挨拶を終え、別の部屋に挨拶をしに向かう。
このアパートの構造は二階建ての四部屋となっていて、次に私は管理人さんのお隣である102号室へ移動した。扉の前に立ち、ドアホンを鳴らしてみたが……反応がなく、再びドアホンを鳴らすも誰も出てくることはなかった。
「留守なのかな?」
どうやらこの部屋の住人は現在外出しているようなので、私はまた時間を改めて挨拶をすることにした。
次は私の隣である202号室へと向かいドアホンを鳴らしてみると、中から足音と共に声が聞こえてきた。
「はーい、何か御用でしょうか?」
扉が開くと中から一人の男の子が姿を現した。見た目は私と同じくらいの身長、顔は女の子にも見える中性的な感じだった。
「あ、私は今日引っ越してきた山田明です! よろしくお願いしますね!」
「川瀬悠里です。こちらの町の高校に入学する為に僕も山田さんと同じで最近こちらに来ました!よろしくです」
「私と同じですね! ちなみにどちらの高校ですか?」
「私立桜海学園ですよ」
「私も桜海学園です! こちらには誰も知っている人がいなかったので不安でしたけれど、同じ学校のお知り合いが出来て嬉しいです!」
「実は僕も不安でしたので良かったです。学校でも会った時はよろしくです」
「はい、よろしくです!」
川瀬くんとの挨拶を終えると私は一度自分の部屋へと戻ることにした。