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第一話


 五分だけ待ってくれ。

 五分だけでいいんだ。



 鼓膜がおかしくなりそうな銅鑼の音が響いて、

「次!」としわがれた声が言う。

 僕の腕をがっちりと掴んだ手は、尖った真っ黒い爪が生えていて、青――比喩ではなく本当に青い。その手の先には、人間に似た、しかし人間ではない身体がくっついている。童話や昔話で見た、それは、『鬼』だ。

 額には、左右に二本ずつ、四つの角。逆さ向きに生えている牙が嘘のように白い。

 真っ黒い布がばさりとほんの一瞬翻る。青鬼に背中を押され、つんのめるようにその部屋へ入った。

 真っ赤な床に、執務室、と金の字で書かれている。空気がぶわりと濃く、甘い。息を吸うと途端にむせた。

 視線を上げると、その先には金とも銀ともつかない髪を床に届くほど長く伸ばした女性が、立派な椅子に座って傍らの机に置かれた分厚い帳面を見ている。

 魂を奪われるような美人だった。

 顔立ちは、東洋的でも西洋的でもない。その間の良いところだけを取ったような感じがする。胸はぐっと張り出して、胴は細い。

 黒地に鈍い金の刺繍がされた服に、長い髪が流水紋のような模様を作っていた。

「両神 椿か?」

 不意に、視界にさっと二つの影が飛び込んだ。

 子供ほどの大きさの、

「ひ……っ」

 片や牛頭。片や馬頭。吸い込んだ息が思わず悲鳴になった。

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