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ごちそう

作者: バンズ

「ただいま」


重い扉を開けて室内に入ると外より冷たい空気が肌を差した。


部屋に入り扉から手を離すと、扉の重さで閉まる勢いが増し、大きな音が外の廊下に響く。


「きょおはごっちそう」


彼は乱暴に靴を脱ぎ捨て、シンクと繋がっているIHコンロの上に手に持っていたビニール袋をどさっと置いた。


脱ぎ捨てた服や繋がったままのコントローラー。乱れた布団の上には昨日飲んだビール缶が二本転がっている。


彼は京都の○○に住む大学生で、一人暮らしをしている。週に1回のアルバイトと親の仕送りを使ってギリギリ。


まあ単純にバイトを増やせば楽に暮らしていけるが、週一のアルバイトに慣れてしまった勝也は、全くバイトを増やそうとは考えない。


「ふーんふふんふん」


今お気に入りのJポップを頭の中で再生しながら部屋の中央に学校用のカバンを放り投げ、再び台所の方へと戻った。


「本日はこちらの商品を使って食卓を華やかにしまぁす」


誰も聞いていない料理実況をぼそぼそと呟く。


一人暮らしをしている人間なら誰だってやるだろう。意識していないだけ。


足元の棚からフライパンを取り出し、コンロに置いたらすぐに火をつける。


全く温まっていないフライパンの上に食材をそのまま滑らせる。


次第に熱が入り、食材はジュージューと音を立てて焼け始めた。


タイミングを見て焦げないようひっくり返す。


味付けは塩コショウと買ってきた秘伝のタレ。これは安物。使い切り。


火を止めて素早く皿へと滑らせる。あとから食材から染み出た汁が追って皿へと滑り込む。


リビング中央のテーブルの上に今日のご飯が真ん中に置かれる。


秘伝のタレをかけてタレの残りは袋をすすりタレの味を堪能する。


合唱。


「いただきまっす」


箸で簡単に切ることができ、彼の口の中で崩れてなくなっていく。いい焦げ目とタレがよく合い箸はどんどん進み、あっという間になくなってしまった。


「ふはぁ……」


食べ終わってしまえばあっけない。


味の余韻に浸りながら、手元にあったリモコンでテレビの電源を付けた。


「本日は松坂牛を使ったA5ステーキを紹介したいと思います」


テレビのリポーターがレストランのステーキを紹介していた。


「……あぁ」


画面いっぱいに映し出されたステーキを見て溜息が漏れる。


「豆腐じゃなくてちゃんとした肉のステーキ食べてぇ……」



松坂牛って(まつさかうし)って読むんですね。最近知りました。

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