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黎明の月 20日 迷惑探偵ロキ 012

 港町の上空を一匹の幼竜が飛ぶ。

 琥珀色の翼は大きく弧を描き、その度に幼竜の体は勢いを増して空を駆ける。

 夕暮れ時、空は茜色に染まり昼間とは違いひっそりとした静けさが漂い始める頃だ。

 幼竜の目指す先には大きな風車小屋があった。

 古びれたその小屋は、風車のが破けもはや風車小屋として機能していない。管理する者のいなくなった小屋は、黄昏た佇まいを残したまま丘の上にひっそりとあった。


 幼竜は速度を緩め、その屋根へと降り立つ。

 幼竜とはいっても恐らくは何十年と生きているはずだった、竜の寿命は長い。

 成竜になるまでには何百年もの時間が必要だろう。

 ドルーンは町の中に暮らす竜だった。

 人と共に暮らし、その町の歴史と共に生きる。

 ドルーンは繁栄の象徴だった。大きなドルーンが暮らす町は大きい町が多い。

 ドルーンは町と共に暮らす。

 町で暮らすドルーンが大きければ大きいほど、その町は安泰だと言われている。


 ゆっくりと滑空するドルーンの前、正確には風車小屋の陰から一人の男が現れた。


「今です、ニッキ!」


 男の声と共にドルーンの周囲に氷の檻が現れる。

 檻はあっという間にドルーンを包み込んだ。


「捕まえました!」


 セリウスが声を上げ、風車小屋に登る。氷で足場を作り、ドルーンが目指していた巣に辿り着く。


「やっぱり、望の予想通りでしたね」


 セリウスが巣を覗きこむとそこには、ロキが盗まれたといっていたこぶし大の水晶が入っていた。

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