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黎明の月 20日 迷惑探偵ロキ 009

「初めは何が起こったのか全くわかりませんでした」


 水車小屋で働く女性は思い出すようにゆっくりとした口調で語りだした。

 もう何度も同じことを話しているのだろう。その言葉に迷いやよどみはまったくない。

 彼女の言葉を聞き逃すまいと望は羽ペンを羊皮紙の上に走らせた。

 サラも彼女の話に聞き入りながら周囲の状況を確認していく。


 そこは、事件現場だった。

 事件は15件起こっている。

 今は事故現場の3か所目での聞き取り調査を行っているところだった。


「気が付いたら屋根のワラが燃えていて、周りに助けを求めましたが、衛兵やギルドの人たちが駆けつけてくれた時にはもう・・・」


 女性の表情は暗く沈む。

 話の内容は、大まか同じような内容だった。

 気がつけば出火している。しかも時間帯は決まって昼間だ。

 出火場所は主に屋根。

 火の気が周りにないことから、衛兵やギルドの者達は魔法使いの関与を疑っている。


 焼け落ちた水車小屋。壁のレンガは焼け焦げ屋根は燃え落ちてしまっている。

 既に衛兵やギルドの者達が調査をしているのだろう。手がかりになりそうな物はありそうもなかった。


「一度みんなと落ち合おう。情報を集めて分析する必要がある」


「えっ、みんなの情報を集めるのですか? それでは勝負に勝てないのです」


 意外そうなサラの言葉に、望は笑って応える。


「事件解決に勝負なんて必要ないよサラ」


 ロキに勝負を挑まれたが、望ははじめから勝負しようとは思っていなかった。

 負ける気ではないが、勝つ気もない。

 事件が早く解決してくれればと思ってはいる。


「早く事件を解決しないと、どんどん被害が広がっていくからね」


 そう語る望をサラは呆けたように見つめている。


「ん? どうしかした?」


 望が不思議そうにサラの顔を覗き込んだ。

 サラは慌てて顔をそらす。心なしか顔が熱い。


「な、なんでもないのです」


「・・・そうか、とりあえず。ロキの宿に向かおう」


 望の後にサラは黙ってついていった。


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