黎明の月 20日 迷惑探偵ロキ 008
「よし、まずは、現場を見に行こう」
「はいなのです」
望を先頭にサラがついていく。
セリウスやロキたちとは別行動だった。
港町は活気にあふれていた。
海賊団を撃退した帆船の活躍。その多くはまだ語られず、噂が噂を呼び、憶測が憶測を呼び込みさらに大きくなっている。
「以前にもこんなことがあったのです」
湖の都での事件の事だ。
あの事件からそれほど時間は経っていないのにひどく懐かしい気がする。
まるで自分の事ではないかのような、非現実的な話。
すべてが幻で、実はこれは夢なのではないか。
そんな気持ちがふと脳裏をよぎった。
---全ては、幻の世界なのです。
望に脳裏に、老人の声が響いた。
「・・・ん?」
「どうしたのです?」
突然にして立ち止まった望の顔を、サラが不思議そうに覗きこんだ。
「・・・いや、何でもない」
望は再び歩き出す。
一瞬、何かを思い出そうとした。
この世界、否、前の世界・・・そうではない。この世界と前の世界の間・・・?
記憶があいまいだった。はっきりと思い出せない。
何か大切な言葉を、誰かから聞いた気がする。
「大丈夫、ちょっと疲れが出たみたいだ」
「そうなのですか。あまり無理はしないのです」
サラにうんと頷いて見せて、望は目的の場所へと向かった。
目的の場所は、ロキの宿からそれほど遠くない。
二人はすぐにその「現場」へと到着することができた。




