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黎明の月 20日 迷惑探偵ロキ 004

「つまりこれはどう言うことなのかな?」

「・・・話せば長くなる」

「私は忙しいんだ・・手短に話してくれないかなぁ、セルシー」


 暇だったくせに・・というクラリッサの呟き。

 路希はそれを軽やかに無視しした。


 6人は港町の通りを人目を避けるようにして歩く。

 セリウス達はフード付きのマントを羽織り、目立たないようにしている。

 賢者セリウス、彼の蒼い髪は目立つ、どこで誰が見ているか分からない通りではフードで顔を隠す以外に方法はなかった。

 通りの人通りは少ない。港に停泊している帆船、正確には今一緒に歩いている賢者セリウスを一目見ようと町の者達がこぞって港に集まってくれているお陰だ。


「・・・ちょっと待て下さい、賢者セリウスがここにいるってことは、あの船に乗っているのは?」

「水の精霊ミルティーンだよ」

「・・・よくわかったな。完璧な擬態なのに」

「大抵の魔法使いには分からないだろうけど、あたしの目は誤魔化せないよ」

「そのようだな」


 二人だけの会話が勝手に続く。

 そこから完全に隔離されたクラリッサ達は互いに自己紹介をすることにした。


「あの私クラリッサといいます」

「私は魔法使いのサラ」

「オレは望」

「・・・ニッキ」


 それぞれに自己紹介を済ませ、通りを進む。

 人通りの少ないい道を進もうと考えていたが、その心配は無用だったようだ。


「それにしても、なんで勇者様が偽者を立ててこそこそと上陸してるんだ?」

「いや、これには色々と事情が・・」

「・・・まさか!」


 ハッとしたようにロキが立ち止まる。

 サラと望、ニッキをジロジロと眺め。ニヤリと笑った。


「・・・情事?」

「事情だ!」


「面白い方ですね」

「教授は、頭はいいんですけどね」


 望の言葉に、クラリッサはうなだれながら呟く。


「それにしても、何でこんなことをしているんですか?」


 クラリッサの素直な質問にサラ達は言葉に詰まった。

 何やら話せばいいのやらと思案する。


「話せば長くなるのです」

「安心しろ、あたし達は今暇だ」

「さっき、忙しいと・・・」

「しゃらっぷ!」


 サラの言葉をロキはあっさりと切り捨てる。


 その時だった。

 人通りの少ない通りの向こう側が騒がしくなる。


「泥棒だ! 捕まえてくれ!」


 男の声がサラ達に届いた。

 見れば一人の男がバッグを小脇に抱えこちらへと走ってくる。てにはナイフを握っていた。


 セリウスは動かない。

 サラと望はみがまえたが、何も行動できないようだった。


「死にたくなかったら、そこをどけ!」


 男がサラ達の姿に気づきナイフで威嚇しながら接近してくる。


「まったく、腑抜けた奴らだねぇ」


 ロキが見かねたように前に出た。

 腕を構え、魔法の詠唱に入る。

 ・・・と、その時。

 男に変化が訪れた。通りの真ん中で足を滑らせ無様に転倒したのだ。それだけではなく、地面に倒れたまま動かない。いや、動こうとしている。しかし、地面に縫い止められたかのように、その場から動くことができないようだった。


 ロキが見ると、通りは一面氷が張っていた。泥棒の男はこの氷によって転倒したのだ。そして、今は足と腕をこれもまた氷によって束縛されている。


「・・・今、ここで目立つのはマズい」


 ぼそりと吐き捨てるようにニッキが言う。


「その通りなのです」


 走り寄ってくる被害者の男とその後ろにいる衛兵を見ながら、サラが走り出す。


「何だか、面白いことに巻き込まれているみたいじゃないかセルシー」

「うるさい。とにかく安全なところまで案内してくれ!」


 ニヤニヤと笑うロキ。

 苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる賢者セリウス。


「私たちが宿泊している宿に行きましょう」


 クラリッサが先導し、みんなはそのあとに続いた。

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