表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/70

黎明の月 8日 大海原と大海賊 その7

「猛き風の流れよ・・・」


 大海原の帆船の上で、サラの詠唱の声が響く。


「あれは・・風魔法・・・」


 セリウスの目が細まる。


「一体何をしようとしているのです。風を吹かせて周囲一帯を冷やそうというのですか?」


 周囲の冒険者の間から失笑が漏れた。

 先ほどの火系の魔法は冒険者たちも目の当たりにしている。サラが見習い魔女の中でもそれなりの実力を持っていることは理解することができた。

 しかし、火系の魔法使いが水系の魔法を得手とすることはない。

 それを分かっているからのセリウスの案。

 しかし、目の前の見習い魔女は、その案に真っ向から立ち向かおうとしているのだ。


「・・み、耳が・・・痛い」


 何人かの冒険者が耳を押さえた。


「何が起きているんだ。おい、彼女は何をしようとしているんだ?」

「耳が痛いのは、周囲の気圧が上がっているからだ。大丈夫、これはただの余波・・・本当にすごいのは海面すれすれの部分だ。今、海面の少し上の部分に高圧に圧縮された二酸化炭素が集まっている」


 望の言葉を周囲の誰も理解することができなかった。


「圧縮された二酸化炭素を噴射するとどうなるか、加圧された二酸化炭素は液化し、これを急激に大気中に放出するとどうなるか・・・」


 望の言葉が終わってすぐ、サラの呪文が完成した。


 空気が圧縮され、勢いよく噴き出す音が響く。

 モウモウとした煙が発生し、周囲は白い靄に包まれる。


「水系の魔法が使えないからどうした!」


 望の声が煙の中から響く。


「ノゾーミ、完成したのです」

「ああ、サラよくやった。実験は大成功だ!」


「何が起こっていというのですか!」


 靄が晴れていく。

 風が煙を吹き飛ばし、視野が回復する。

 視野が回復すると、船員も冒険者も、そしてセリウスですら我が目を疑った。


「これが・・俺たちの魔法だ!」


 帆船に乗った者たちの目の前で、今まで白波を立てていた大海原。

 すべてが音を失っていた。

 すべてが動きを失っていた。


 全員の目の前。


 周囲一面氷の大地が広がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ