黎明の月 8日 大海原と大海賊 その3
ロワイユ船長の指示で、メッセージが海賊団に伝えられる。
それがどう伝わったのか帆船に乗っている望たちには分からなかった。
どちらにしても衝突は避けられない。
海賊は奪うもの。こちらはそれを拒むもの。
相反するものがぶつかり合えば、当然そこには衝突が生まれる。
「衝突」つまりは「戦い」だ。
「野郎共、配置に着け!」
ロワイユ船長の号令に船員たちが一斉に動く。
船体の横、のぞき穴から黒光りする大砲が突き出した。
帆船といえど、自衛の手段がないわけではない。
海軍程とまではいかないまでも、それなりに設備は整えている。
「がはは、この船をただの船だと思うなよ!」
ロワイユ船長の目がギラリと光る。
「大砲発射!先制攻撃だ!」
「うおおお、先に撃った!一応相手の攻撃を待ってから迎え撃った方が・・・」
「生ぬるいは!海の上では弱肉強食!強いものでなければ生き残れないのだ!」
控えめな望の声は、船長の一喝で消し飛んだ。
先に手を出すのは正当防衛というのだろうか。
ふとそんなことを思ったが、海賊が海賊旗を掲げて海に出ているのだ、それを言うのは無粋というものだろう。
大海原に水柱が立つ。
海賊船まではまだ遠い。
「サラ、海賊船まで魔法が届くか?」
「火系は無理なのです」
サラは悔しそうに首を振った。海の上では炎系の魔法は効果が薄い。火の精霊の数が少ないのだ。
「水系は?」
望の言葉にサラはまたも悔しそうに首を振った。
魔法使いにはそれぞれに得手不得手がある。
サラは火系の魔法を得意としていた。
その反面、水系の魔法は不得手としている。
火系の魔法を放つことはできる。しかし、海賊船までは距離があり、とても効果は期待できなかった。
魔力を制御している「罪人の腕輪」も問題だった。
外せば火系であろうとなんであろうと圧倒的な魔力で放つことはできるが、この腕輪は一度外してしまうと壊れてしまい、二度とつけることができない。
できれば、腕輪を付けたまま戦いたいところだった。
万が一の際には、そうするだろうが今はその時ではなかった。
また、腕輪の有無にかかわらず、望にも制約があった。
ルカリオとの約束で、望は魔法を使うことを禁じられているのだった。
望が魔法を使えるということは、できれば内緒にしておいた方がいい。というのだ。
ルカリオ曰く。望の「力」は、かつて大陸の一国を滅ぼした「紅の魔女」と同様の力だというのだった。




